1
神樹様に選ばれた、と聞いた時は、
凄いコトなんだろうけど、具体的にどう凄いのか、
実感が湧かなかった。
ただ、やってくる敵が、世界を壊すものと聞いた以上は、戦わなくちゃ、と思った。
はじめは、とにかく無我夢中だった。
この時は、体を供物にして戦っていくなんて、夢にも思わなかった。
勇者御記 298.4.25
2
はじめて三ノ輪銀を見た時、
私は少し苦手意識を持ってしまった。
声が大きくて、気が強くて、
気圧されてしまうから。
だけど触れ合ってみると彼女はとてもいい娘で。
それが災いして、落命してしまうとは……。
勇者御記 298.5.15
3
1+1+1を3でなく、10にする。
私達なら、出来ると思った。そうしなくてはいけなかった。
敵の名前はバーテックス。ウィルスの中で生まれた忌むべき存在。
これを退けるために。
でも、そんな存在に、バーテックス…頂点という意味の言葉をつけるだろうか…?
この時はまだ、バーテックスが神に造られたモノだったとは、知らない。
勇者御記 298.6.20
4
数百年前である、西暦の時代の資料によると、
ずっと友達でいたい時は、
ズッ友だよと言うらしい。
なんだか面白い言葉で、気に入った。
私達3人は、ずっと友達。
今だって。
近くに感じている。
勇者御記 298.7.10
5
神樹様は、神様そのもの。
だから、願った。
友達と別れたくないと。
それは、ある意味かなえられていくコトになる。
私達は、友の犠牲と引き替えに
不死の体を手に入れた。
勇者御記 298.7.12
6
たくさんの贈り物が、大赦から届いた。
私の家の発言権も、大赦内で増したらしい。
この特別扱いには、当時驚いた。
しかし、後々調べて見るとなんてことはない。
いつの時代も、人身御供には優しいのだ。
勇者御記 298.8.12
7
私は、真実を後になってから知った。
過去、人類を苦しめたのはウィルスではなく
バーテックスだったことも。
そうなった原因は、そもそも人類だったことも。
バベルの塔という話に少し似ている、と思った。
勇者御記 298.9.21
8
体を神樹様に、お供えしながら戦い続けること。
それは、とても素敵なことらしく……。
私の両親は、泣いていたという。
わっしー……今は、東郷さんか。
私より軽度で良かった。
勇者御記 298.10.11