十二国シリ`ズ Lの海 迷mの岸
小野不由美
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Lの海 迷mの岸(上) 十二国
ブロロ`グ
雪が降っていた。
重い大きな|雪片《せっぺん》が沈むように降りしきっていた。
天をあげれば空は白、そこに灰色の薄い影がo数ににじむ。|染《し》みいる速度で野を横切り、目で追うといつのgにか白い。
彼は肩に着したひとひらをる。|d毛《わたげ》のようなY晶がえるほど、大きく重い雪だった。次から次へ、肩から|腕《うで》へ、そうして真っ赤になった|掌《てのひら》にとまっては、水の色に|透《す》けて|溶《と》けていく。
雪の白よりも、彼の|吐息《といき》のほうが寒々しかった。子供特有のい首をめぐらせると、幼鳏韦趣りに白く吐息が婴をせて、それがいっそう目に寒い。
彼がそこに立ってもう一rgが^ぎた。
小さな手もむきだしの|膝《ひざ》も、|熟《う》れたように赤くなってすでに感がoい。さすっても抱きこんでも冷たいばかりで、それでいつのまにかぼんやりとただ立っていた。
北の中庭だった。
|狭《せま》い庭の|隅《すみ》には使われてなくなって久しい}が建っている。|土壁《つちかべ》に入った|w裂《きれつ》が寒々しい。
三方を|母屋《おもや》と}に、もう一方を|土B《どべい》に欷蓼欷皮い郡、Lのoいただ寒いばかりのこのrには、ほとんど恩{をもたらさなかった。
庭木と呼べるほどの淠兢猡胜ぁO膜近くなればシャガの花がDいたが、いまはむきだしの地面が白くまだらに染まっているだけだった。
(|情《ごうじょう》な子やね)
祖母はv西から|嫁《とつ》いできた。いまも故_のなまりが消えない。
(泣くくらいやったら|可邸钉わい》げもあるのに)
(おx母《かあ》さん。そんな、きつく言わなくても)
(あんたらが甘やかすし、いこじな子になるんやわ)
(でも)
(近の若いもんは子供のきげんを取るしあかん。子供は|《きび》しいくらいでちょうどよろし)
(でも、おx母さん、|L邪《かぜ》をひいたら)
(子供がこれくらいの雪で|L邪《かぜ》なんかひくわけないわ。──ええね、|正直《しょうじき》に|x《あやま》るまで、おうちの中には入れへんかららね)
彼はただ立ちつくしている。
そもそもは、洗面所の床に水をこぼしてふかなかったのはlかという、そんな|些《ささい》な}だった。
弟は彼だと言い、彼は自分ではない、と言った。
彼にはまったく身にえがなかったので、そう正直に言ったまでのことだ。彼は常々祖母から、|嘘《うそ》をつくのはもっともいけないことだとしつけられてきたので、自分が犯人だと嘘をつくことはできなかった。
(正直に言うてxればすむことでしょう)
祖母が激しく言うので、彼は自分ではないとくりかえすしかなかった。
(あんたやなかったら、lやの)
犯人を知らなかったので、知らないと答えた。そうとしか返答のしようがなかった。
(どうしてこんなに情なんやろね)
ずっと言われつづけていることではあるし、彼は幼いなりに自分が情なのだと|{得《なっとく》していた。「情」という言~の意味を正_に知るわけではないが、自分は「情」な子供で、だから祖母は自分を|嫌《きら》いなのだと、そう{得していた。
妞出なかったのは|困惑《こんわく》していたからだった。
祖母はx罪の言~を求めているが、x罪すれば祖母がもっとも嫌う嘘をつくことになる。どうしていいかわからなくて、彼はただ途方にくれていた。
彼の目の前には|廊下《ろうか》が横に伸びていた。廊下の大きなガラスの向こうは茶のgの|障子《しょうじ》。半分だけガラスが入ったそこから、茶のgの中で祖母と母とが言い争いをしているのがえた。
ふたりが|喧W《けんか》をするのはせつない。いつも必ず母がけて、QまってL訾危叱《そうじ》に行く。そこでこっそり母が泣くのを知っていた。
──お母さん、また、泣くのかなぁ。
そんなことを考えて、ぼんやりと立っている。
少しずつ足が|w《しび》れてきた。片足に体重をのせると、|膝《ひざ》がきしきし痛んだ。足先は感がない。それでもo理に婴してみると、冷たい|利《えいり》な痛みが走った。膝で|溶《と》けた雪が冷たい水滴になって、|《すね》へ流れていくのがわかった。
彼が子供なりに重い|溜《た》め|息《いき》をついたときだった。
ふいに首筋にLが当たった。すかすかするような冷たいLでなく、ひどく暖かいLだった。
彼はあたりをまわした。lかが彼をあわれんで、酩蜷_けてくれたのだろうと思ったからだ。
しかしながら、まわしてみても、どのもぴったり]ざされたままだった。|廊下《ろうか》ではなく部屋に面したガラスは、さも暖かげにくもっている。
首をかしげて、もういちどあたりをまわす。暖かな空荬悉い蓼獗摔韦郅Δ肆鳏欷皮ていた。
彼は}の|まで目をやって、それからきょとんと|瞬《まばた》きした。
}と|土B《どべい》のgのごくわずかの|隙g《すきま》から、白いものが伸びていた。
それは人の|腕《うで》にえた。二の腕の上のほうまで素肌をむきだしにした白いふっくりとした腕が、}のかげからさしだされているのだった。
腕の主の姿はえない。おそらく}のかげに|L《かく》れているのだろうと、彼は思った。
ひどく|不思h《ふしぎ》な荬した。
}とBのあいだにはほんのわずかな隙gしかない。せまい隙gに落ちこんだ野球ボ`ルが取れなくて、弟が泣いたのは昨日のことだ。たところ|大人《おとな》の腕のようだが、いったいどうやってあの隙gに入っているのだろう。
腕は|肘《ひじ》から下を泳がせるようにして婴していた。それが手招きしているのだと|悟《さと》って、彼は足を|踏《ふ》みだす。|觥钉长础筏à疲w《しび》れた|膝《ひざ》が、音がしないのが不思hなほどぎくしゃくした。
|怯《おび》える荬摔胜欷胜ったのは、暖かい空荬その方角から流れてくるのに荬扭い郡らだった。
彼はほんとうに寒かったし、本当にどうしていいかわからなかったので呼ばれるままにiいた。
雪はすでに地面をおおって、彼の小さな足Eを残すほどになっている。
白かった空は|墨《すみ》をぼかしたように色を浃à皮い搿
短い冬の日が|暮《く》れようとしていた。
一章
1
命がどこからくるのか知る者はないし、ましてや人でないものならなおさらだった。
命も意Rも、彼女の中に唐突に宿った。
|目《めざ》めたとき、彼女は白い枝の下にいて、^の中にはたったひとつの|言~《ことば》しかなかった。
──|泰麒《たいき》
身を起こすgに、その言~は^の中いっぱいに氦沥啤あふれると同rに彼女はすべての事柄を|把握《はあく》していた。
自分が何者であるのか、なんのために存在するのか、なにがもっとも重要であるのか。
──泰麒。
それは半身を起こしたいまも、彼女の|Y《のうり》からあふれて身内にしたたりつづけていた。
まるでしたたっていく水滴を体の奥深いところで受けとめようとするように、彼女は起こした状Bを反らした。を仰向け、目を]じた。妞こめかみに向けてすべって落ち、まだ濡れているか身の中に|溶《と》け入った。
力の入らない足を婴すと、足の先に|湿《しめ》った土と金色のかけらが|触《ふ》れた。
かけらはつい先ほどまで彼女を抱いていた|!钉ら》だった。土が吸った水分は、つい先ほどまで¥沃肖氦郡丹欷皮い郡猡韦坤盲俊1伺はほんの少し前に¥沃肖ら|孵《かえ》ったのだ。彼女を抱いた金の卵は枝をxれて落下し、割れた。
彼女は卵のかけらをしばらくやって、次いでを上げた。目の前には白い枝。|白y《しろがね》でできたかのような枝は^上に伸びて、はるか上空で|岳巍钉堡螭恧Α筏恃冶Pに吸いzまれている。
枝にはいくつか、金色の果gがこぶのように|g《みの》っていた。それはまだ命を宿さぬ卵なのだと、自分もついさっきまで同じようにしてそこにgっていたのだと、彼女は教えられるわけでもなく思い出していた。
命とは、そのようにして|Q生《たんじょう》するものだ。
──泰麒。
彼女は|四肢《しし》に力をこめて立ちあがった。また、妞こぼれた。
妞悉悉袱幛仆荬舜イ欷浚瞳《ひとみ》を守ろうとする反射に^ぎなかったが、彼女はその幛い郅膳かいものが滑り落ちていく感触を、たったひとの言~が身内をすべり落ちていく感触だと感じた。
泰麒、泰麒と呼ばわりながら、妞こぼれる。
まっすぐに立ちあがるとを枝にすくわれた。彼女は土を|踏《ふ》んだ|四肢《しし》とはeの二本の|腕《うで》で、それをほどいた。
「|孵《かえ》ったようだね」
ふいに声がこえて、彼女は音声のしたほうをた。
あたりはほの暗い|《やみ》、^上の枝ばかりが|光《りんこう》を放って白い。
少し目がTれると、そこが巨大な|洞窟《どうくつ》の中だとわかった。
巨大な──あまりに巨大な半球形の洞窟の、中央に白い枝が|垂《た》れている。gをいえば、彼女をおおいかくすようにして垂れているのは枝ではなく根だった。それは岩Pをいて、どれほどあるのかわからないほど高い|天井《てんじょう》の中央から、彼女の立つ足元までびっしりとかく枝分かれしながら伸びているのだった。
ふむ、とg近で声がした。
「よい|女怪《にょかい》だ」
彼女はもう一度声のありかを探した。
今度はたやすくつかった。彼女の足元の、そうxれていないところに腰の曲がった|老婆《ろうば》が立っていた。
老婆は立ちあがった彼女の、胸のあたりまでしか背丈がない。枯れ枝のような腕を背伸びするように伸ばして、老婆は彼女の濡れて背中にまとわりついたをなでた。
「女で」
言いながら、ついで|]《ほお》をなでる。
「首は~」
Xく腕を|叩《たたく》く。
「上体は人」
背中にまわされた手がXく下の背筋を叩いた。
「下は|豹《ひょう》。尾は|蜥蜴《とかげ》だね。よく|混《ま》じっている」
上の背筋と下の背筋の、ちょうどgのよくoしたあたりを老婆はXく押した。
「さ、そんなにお泣きでないよ。──おいで」
おされるままに彼女はiいた。iくたびに妞こぼれて|乾《かわ》いた土にしみを作る。
ゆっくりとLいrgをかけて|洞窟《どうくつ》を横切り、|天井《てんじょう》の岩Pが作る曲と足元の土が交わるあたりでA段をつけた。
「サンシ、にしよう」
老婆がやっとつぶやいた。
「|汕《さん》、|子《し》、だ。おまえは、これから汕子と呼ばれる」
彼女は|a《だま》って狭く暗い石段を上がりながら、老婆の声をいていた。
「姓は|白《はく》だ。これは|蓬山《ほうざん》でgった|女怪《にょかい》の定め」
大きく|湾曲《わんきょく》した石段を上っていくと、ふいに光がえた。
「姓をたまわるのは、おまえの使命が重いからだ。それをよくえておおき」
彼女はうなずいた。なにが重いのか、言われなくてもわかっていた。
その重みを胸の中に刻みなおすようにしながら|a々《もくもく》と石段を上ると、ふいに野が_けた。いつのまにか幅冥摔胜盲皮い渴段の、正面にぽっかりと大きく四角の穴が|空《あ》いていた。
彼女は足を止めた。
上げる角度にあるその穴から、|淡《あわ》い青のiけるように高い空と、そこに向かって伸びるまばゆいばかりに白い木がえた。えるのはそれだけだった。やっと止まった妞またあふれた。
老婆が背筋を|叩《たた》いた。
「そら、おゆき」
彼女は|l《か》け出した。生れ落ちたばかりの|脚《あし》で初めて走った。
石段を上りきり、光の中にwび出し、|刺《さ》すような光をこぼしながらまっすぐ木にlけよった。
彼女は根にgった。Lい根にして、木は低く大きかった。|苔《こけ》むした岩Pの上、空を背景に伸びやかに枝を@った木の、白い白い枝には金の果gがひとつgっている。
「泰麒」
初めての声が彼女の|喉《のど》を越えた。
彼女をgらせた根と、ちょうど|一《いっつい》をなす位置にその果gはある。まだ小さく、I手で包めるほどの大きさしかなかった。光が乾ききらぬ|敏《えいびん》な肌を刺すのを感じながら、彼女はそのgをI手で包んで|]《ほお》を当てた。
妞止まらない。
「……泰麒」
汕子はこの世に生をうけたのだ。
2
世界の中央に|黄海《こうかい》があった。
海といっても水はない。そこで流れてゆくものはrとLばかり、そのほかには果てのない|砂漠《さばく》と果てのない|浜!钉袱澶い》と、あるいは一面の沼地が、あるいは一Bの岩山がひろがるばかりの土地である。
その黄海の中央にひときわ高くBなる山々がある。五つの峻峰が}jに入りMむそこを、|五山《ござん》といった。
中央の高い山を|崇高《すうこう》、周焖姆饯诉Bなる山をそれぞれ|蓬山《ほうざん》、|A山《かざん》、|霍山《かくざん》、|恒山《こうざん》と呼ぶ。蓬山は|旧《ふる》くを|泰山《たいざん》といったが、凶事あるたびに改名して、ここ千年ばかりは蓬山と呼びわしている。
五山は|西王母《せいおうぼ》の山と言い、蓬山は|王夫人《おうふじん》の山だと言う。残る四山の|主《あるじ》はThあって定かではない。その|真巍钉筏螭》はともあれ、いずれにしても五山は|女神《にょしん》・|女仙《にょせん》の土地だった。
五山はどれも天を|突《つ》くほど高い山だが、|麓《ふもと》に冥る黄海同、なにがあるわけでもなかった。vと岩と水、それだけが}j怪奇な地形を作りながらBなるばかり、そこに途切れることなくLがただ吹きぬけてゆく。
ただ蓬山の中腹に、|蓬]m《ほうろぐう》と呼ばれる小さなm殿がある。ここが蓬山で──ひいては五山でRらす者たちの|唯一《ゆいいつ》の|住I《すみか》なのだった。
「……おや、|粟《けし》が」
|l《ていえい》はつぶやいて、かがみこんだ。
泉に粟の花びらがいくつも浮いているのをつけたからだ。
lから二iほど|後《おく》れて小道をiいていた|蓉可《ようか》もまた足を止めた。澄んだ水の表面に、赤い花弁の色が美しかった。
「|粟苑《けしえん》の花でしょうか」
蓉可のいに、lはうなずいて花びらをすくう。
「Lに\ってwんできたのだろう。──今日は妙なLが吹くね」
蓉可もまたうなずいて、^上を上げた。
蓬山は奇岩の山だった。特にここ蓬]mのある高台は、|苔《こけ》むした奇岩でさながら迷路の相を|呈《てい》している。
奇岩はその名にふさわしく奇妙にえぐれ、不安定にそびえ、その高さは低いものでも身の丈の三倍あまり、奇岩のgをぬうようにして通る小道は、かろうじて女がふたり肩をKべてiけるほどしかない。
その小道の途中で足を止めて、lは泉に浮かんだ|粟《けし》の花びらを丁にすくった。
彼女は|女仙《にょせん》のひとりだった。十八、九の娘にえるが、女仙の外を信用してはならない。いかなるいきさつでいつごろ|N仙《しょうせん》したのか、彼女自身ももはやえていない。それどLいg、蓬山にいることだけは_かだった。五十人あまりいる女仙の中でも、lほど蓬山住まいがLい女仙はいない。
反に、蓉可はもっとも新参の女仙だった。|r《とし》は十六、ごく平凡なr家の娘に生まれたが、どういうわけか世俗に|Z染《なじ》めず、十三のrにN仙の誓いをたて、|五Y《ごこく》を断って西王母の|R《びょう》に通いつづけること三年、ついさきごろ侯を|成就《じょうじゅ》し五山へ召し上げられた。
したがって蓉可は蓬山に住んでLいわけではけっしてない。崇高山での修行をKえ、蓬]mに移って半月だが、その彼女にも今日のLはなにかしら奇妙に思われた。
常にはゆるやかに小道を流れていくLが、今日に限ってく速い。奇岩の上空へ吹き上げ、かと思えば奇岩にそって吹き下ろして、いたるところで|u《うず》をいている。空模もなにかしらすっきりしなかった。薄窑辘摔猡かわらず、重苦しいものが|垂《た》れこめているような、そんなふうに感じられてならない。
「なにかの予兆でしょうか」
蓉可のいに、lは首をかしげた。
「さてね。今朝の|八卦《はっけ》には、なにかが起こりそうな|卦《け》は出ていなかったけれど。──とにかく、水を|汲《く》んでおしまい。
「はい」
蓉可は持ってきた|手桶《ておけ》を泉に沈めた。
泉の名前は|海桐泉《かいどうせん》という。奇岩の根元をえぐるようにして|ァ钉铩筏い咳の、その上にさしかかるようにり出した岩棚の上には|海桐花《とべら》の木が群生していた。
蓬]mにある泉は、もちろんこれひとつではない。いくつの泉があるのか数えてみた|E狂《すいきょう》な者はいないが、名前が必要なほどの数であるのは_かである。
蓬山には季がない。花は年中Dいて散った。いまも海桐花が小さな白い花を落として、泉の水面に|泡《あわ》のように|浮《う》かんでいる。水には海桐花の芳香がうつって、海桐泉の水を汲みあげつづけた桶からは、いつしか海桐花の|觥钉摔》いがするほどだった。
海桐花の訾い韦工胨は、蓬]mの中にある|大真R《たいしんびょう》で蓬山の守り神である王夫人の木像をふき清めるのに使われる。
海桐花の花をよけながら水を汲みあげ、大真Rに向かおうと足を|踏《ふ》みだした蓉可を、lは笑って呼び止めた。
「どこへお行きだね」
「え? ──夫人の……」
lは声をあげて笑う。
「|R《びょう》はそちらにありはしないよ。まだ道をえておいででないかえ?」
蓉可は三方に枝分かれした小道を比べて、少し赤くなった。
「……そのようですね」
蓬山は奇岩とo数に枝分かれした小道とで迷路のようだが、じっさいのところ迷mにほかならなかった。
正しい道を知っているのは蓬]mに住む者だけだった。ここに住まう|女仙《にょせん》だけがo数に枝分かれした道の中から正しい道をxび取り、洗濯によい小川へ、水浴によい|Y《ふち》へ、|水汲《みずく》みによい泉へと行くことができた。あるいはまた、小さいながら日当たりのよい野原へ、花@へ、菜@へ。あるいは、点在する小さなmへたどりつくことができる。──ただし、蓉可のように蓬山に来てgがない女仙ともなれば、はeである。
「どうしてこんな、ややこしい……」
蓉可が|溜《た》め|息《いき》まじりにひとりごちたので、lは笑った。
「|蓬山公《ほうざんこう》をお|o《まも》りするためだもの。多少の不便はがまんおし」
迷路は侵入者にする浃à坤盲俊
奇岩の上をとうてい人RがMむことはできない。|妖《ようじゅう》ならばそれも可能だろうが、蓬]mにはいくつかの例外をのぞき、妖が立ち入ることはSされなかった。そうして、奇岩のgをぬう小道はい。蓬]mをたずねる者は\Tを韦啤⒈丐iいて入らなければならなかった。
一i中へ入れば、道はまぎれもなく迷路である。
高い奇岩は野を|遮《さえぎ》る。しっとりと水を含んだ|苔《こけ》におおわれた奇岩の、そのgを通る小道には石が敷かれてはいるものの、o数の枝道とo数の|隧道《すいどう》であっというまに方角を失うことは疑いがない。
蓬]mを熟知するものだけが道を失わずに、この世にただひとつしかない木の|生《は》える高台へと、たどりつくことができるのだ。
「ああ、やっぱりそうなんですね」
迷路の奥にLされたのは|紊砟尽钉筏悚筏螭埭》、紊砟兢gるのは|麒麟《きりん》だった。
この世では人も|《けもの》もそのほかのものも、ことごとくが白い木にgるが、麒麟がgる木はここ蓬山にある紊砟兢唯一だった。
蓬山は|麒麟《きりん》の生まれる}地、蓬]mは麒麟のために存在し、そこに住まう|女仙《にょせん》もまた麒麟のために存在する。麒麟は蓬山の|主《あるじ》である。ゆえに蓬山公と呼んだ。
lはうなずく。
「麒麟をあずかる任は重い。けれどこれほど幸せな仕事もない。|泰果《たいか》が|孵《かえ》ったら蓉可にもお世を手护盲皮猡椁Α¥瑜Δ心しておおきね」
lの言~に蓉可は|瞳《ひとみ》をxかせた。
「わたしがおてつだいできるんですか? 本当に?」
gのところ、蓉可は少し不氦坤盲郡韦馈
蓬山の女仙の栅幛削梓毪耍仕《つか》えることで、それ以外の仕事はj用に^ぎない。蓬山にはいま若い麒麟がいるが、蓉可はあまりに新参なのでその麒麟にかかわることをSされなかった。
lは笑う。
「まず、道をえなくてはね」
「はい」
蓉可は大きくうなずいた。
紊砟兢摔悉膜は热铡Ⅶ梓毪gがひとつ、ついた。泰果と呼ばれる果gである。
蓉可は、いまはまだ小さな果gに思いをはせる。
泰果が熟して麒麟が孵るまでに|十月《とつき》。生まれたばかりの麒麟はどんなに郅椁筏い坤恧ΑP?丹树梓毪韦饯薪くに仕えてその世をする、それは想像しただけでSしくてたまらないことのように思われた。
またどこからか|粟《けし》の花びらがwんできて、泉の水面に舞い落ちた。
3
「|粟《けし》かえ」
突然声をかけられて、|l《ていえい》は花びらをすくう手を止めた。背後を振りかえると、|海桐泉《かいどうせん》に近いことから|海桐m《かいどうぐう》と呼ばれる建物からひとりの女が出てきたところだった。
|蓉可《ようか》は女をやって首をかしげる。えのないだったからだ。|r《とし》のはわからない。若いようでもあり、すでに中年を越えているようでもあった。着ているものも身につけている装身具も、|女仙《にょせん》がつけるそれとは格段に`う。身分の高い女なのだとは想像がついたのだが。
「──|玄君《げんくん》」
lがあわててその訾似椒し、蓉可もぎょっとしてそれにAいた。
Fれたのは|蓬]m《ほうろぐう》に住まう|女仙《にょせん》の|L《おさ》、|天仙《てんせん》|玉女碧霞玄君《ぎょくじょへきかげんくん》──|玉~《ぎょくよう》だったのだ。
「|粟苑《けしえん》の花がLに\ってきたのでございましょう」
lが述べると、玉~は|玲《れいろう》とした面を奇岩のあいまの空へ向けた。
「妙なLの吹くことよの」
「はい」
玉~は少しのg、|柳眉《りゅうび》をひそめるようにして空を上げていたが、すぐにをおろして蓉可のほうへ向けた。
「蓉可といったか。──|蓬山《ほうざん》にはもう|T《な》れたかえ」
蓉可は声をかけられて|狼N《ろうばい》した。
まだ下界にいた、玉~は徽hの中にしか住まないものだと思っていた。それほど|隔《へだ》たりのある女神なのだ。文字どおりの上の人に会って声までかけてもらっては、うろたえずにいることなどできない。
「は……はい」
「まだ道に迷うようですが」
lが笑いぶくみに言ったので、蓉可は真っ赤になった。
玉~は耳に快い声をあげて笑う。
「それは新参者のさだめよの。かく申すlも、昔にはさんざん迷うておったほどに。じきにTれよう」
ちらりと蓉可がlにを向けると、lは|屈《くったく》なく笑っている。
「ほんに。──|妾《わたくし》よりは、よほどものおぼえはよいようでございます。嚎啶颏い趣铯骸ようPいてくれますし」
玉~は|笑《え》んだ。
「それは、感心なこと」
蓉可はさらに赤くなってしまった。
「と、とんでもございません。まだまだ|叱《しか》られることばかりで──」
「Tれるまでは、叱られるのも栅幛韦Δ痢萋浃沥护氦摔省
「──はい」
深々と^を下げて~を地につけた蓉可をやって玉~は|微笑《わら》う。同じく|微笑《ほほえ》んで若い女仙をているlにを向けた。
「ときに、|戴《たい》の|女怪《にょかい》が|孵《かえ》ったとか」
「さようでございます」
玉~は常には蓬]mにはいない。ふいにどこからともなくFれる。いつもはどこにいて、どこからどうやってFれるのか、lは知らなかった。|不思h《ふしぎ》に思わないでもないが、|一介《いっかい》の|女仙《にょせん》が|索《せんさく》してよいことではない。
「名は?」
「|汕子《さんし》、と」
「その、汕子はどこじゃ?」
「|紊砟尽钉筏悚筏螭埭》の下に。いっかなはなれようといたしません」
lが言うと、玉~はふっくりした|t唇《こうしん》で笑った。
「いつものことながら、|女怪《にょかい》とは情の深いものよの」
lもまた笑んでうなずく。
|麒麟《きりん》にはHがない。Hの代わりを栅幛毪韦女怪で、これは紊砟兢胃にgる。麒麟のgが枝につくと一夜で|孵《かえ》って、これから|十月《とつき》、麒麟が孵るまで枝の下で熟していく果gを守りつづけるのだ。
「して、どちらと?」
女怪だけがこれから生まれる麒麟の性eを知っていた。
「|泰麒《たいき》だそうでございます」
「そうか」
|牡《おす》は|麒《き》、|牝《めす》は|麟《りん》、|国氏《こくし》を冠して号となすのが古来からのQまりである。F在、紊砟兢gっているのは|戴国《たいこく》の麒、国氏は「泰」ゆえに「泰麒」と呼ばれる。
玉~はひとつうなずいて、紊砟兢酥沥氲坤刈悚颍踏《ふ》みだした。lと蓉可がそれを送って深く^を下げたときだった。
突然、大荬|震撼《しんかん》した。
逆く荬い峭伙Lが小道を|l《か》けiけた。
声をあげるいとまもなく、lはその訾摔胜倒される。同じように倒れた蓉可が悲Qを上げた。
地がQ婴工搿5伉Qりは奇岩にこだまして、迷mが不菸钉剩咆哮《ほうこう》をあげた。
「なにが……」
蓉可の|狼N《ろうばい》しきった声に、lは答えることができなかった。
gなる工趣獾卣黏趣馑激à胜ぁgにそれだけのことならば、必ず|八卦《はっけ》に予言があったはずである。だいいち、gなる天涞禺なら、天神女神の力によって字丐摔馐刈oされたこの蓬山に起こるはずがない。
「玄君、mの中へ」
とにかく|L《おさ》の安全をはからねばと、lが石に爪を立ててなんとかを起こすと、玉~は天を|仰《あお》いで立ちつくしていた。
いつのまにか空が赤い。薄い赤い|《しゃ》を字丐摔猡ろしたようにして、|赤荨钉护盲》がゆらめき空をおおっていた。
「|g《しょく》か……!」
玉~はQ婴蚓Aける大地にはかまわず、空で踊るO光をすえる。
あの突Lに倒されずにすんだのは、さすがは女神と言うべきか。それでもlには、それに感@する余裕などありはしなかった。
「g──」
大荬ねじれ、のたうつように震えるのがわかる。そのたびに^上で赤荬|不g《ふおん》な|蠢《うごめ》きをくりかえした。
赤荬韦悉钉蓼吮?、|蜃萋ァ钉筏螭ろう》のようになにかの影がえた。
それは海の|彼方《かなた》にく冥る大地の幻影である。
「そんな──」
この世ならざる土地が、接近しようとしている。
かく可zな|海桐花《とべら》の花が、突Lに散って|w[《つぶて》のようにlを打った。
「ああ──|泰果《たいか》があるのに……!」
4
白い枝の下に身を伏せ、|湿《しめ》った|苔《こけ》が肌をくすぐるのを感じながら、うっとりと|汕子《さんし》は枝の果gに入っていた。
|泰麒《たいき》の入ったgは|十月《とつき》で熟す。
十月のあとには、あの|泰果《たいか》から汕子の主である|麒麟《きりん》が|孵《かえ》るのだ。熟したgをもぐその瞬gを思うと、汕子の|身体《からだ》は妞挝露趣颏筏郡猡韦扦い盲绚い摔胜搿
|嬉《うれ》しく、|F《ほこ》らしく、あふれるような思いで|光g《こうたく》のある金のgを上げていたときに、突然それはuってきた。
汕子には最初、なにが起こったのかわからなかった。
大荬ねじれる。さかまいて|病钉长铩筏欷搿D护蛞いたように赤荬空で踊り始めた。身震いするほどの恐怖を感じて、ようやく「|g《しょく》」という言~をYに探し当てた。
とっさに立ち上がった汕子の足を突Lがすくう。Lにはけっしてそよがぬはずの白い枝が、音をたててeれた。
悲Qを上げて汕子は枝にすがった。枝をつかみ、Lに逆らって身を起こすと、吹き散らされて枝にからめとられたがむしられていく。そんな痛みに荬颏趣椁欷胗嘣¥悉胜ぁJ丐椁胜堡欷小と切迫した思いで上げたの先で空荬よじれる。
「……泰麒!」
吹き寄せた音が|身体《からだ》を|叩《たた》いた。ねじれてひずんだ大荬さらに|歪《ゆが》み、歪みが枝を|住钉巍筏撙长啶韦えた。
「やめて……!」
金の小さなgがひずみに驻撙长蓼欷搿#十月《とつき》さき、汕子が|己《おのれ》の手でもぐまでは、けっして枝をxれるはずのないgが、枝からねじ切られていくのがえた。
「lか!」
枝に|《か》き切られて血だらけになった|腕《うで》がgを追う。指先と金のgのgの距xは~望的なまでにhかった。
「lか、止めて──!」
汕子の叫びは、全をして伸ばされた指の先で断ち切られた。
金のgはその姿を歪みの中に沈めて消えた。
この世に生まれ、泰麒と呼んだ、そのほかにkした初めての声は悲Qだった。|虚《むな》しいばかりの叫びだったのである。
始まったときと同じく、唐突にそれはKわった。
汕子は|呆然《ぼうぜん》と白い枝を上げた。
そこにはもう金の光はえなかった。たったひとつあった果gは、消えうせていた。
「汕子……!」
声が四方からいて、多くの|女仙《にょせん》が|l《か》けてくるのがえた。まっさきに汕子のそばにたどりついたのは|玉~《ぎょくよう》だった。
「ああ……汕子……」
汕子は差し出された彼女のたおやかな手にすがりついた。
最初に名を。次いで、悲Qと叫びを。その次に汕子の|喉《のど》がkしたのは号泣だった。
「なんということ」
玉~は|孵《かえ》ったばかりの|女怪《にょかい》を抱きしめる。o残に散ったをなで、だらけになった|身体《からだ》をなでた。
「よりによって、|麒麟《きりん》がgったときに」
腕の中の女怪は~叫している。ともすれば|十月《とつき》のほとんどを木の下ですごすほど、女怪の麒麟にする思いは深い。それを目の前で失った痛みは、玉~の想像に余った。
「大事はない」
女怪の背を|叩《たた》いた。
「そのように泣くでない、汕子。……必ず泰麒は探し出してみしょう」
つぶやきながら、|己《おのれ》に言いかせる。
「できるだけ|早《はよ》うに、そなたの手に泰麒をしてやろうほどに」
「|玄君《げんくん》……」
声をかけてきた|l《ていえい》にうなずく。
「T国に|朱雀《すざく》をwばし、至急に|g《しょく》の方角を{べさせよ」
「かしこまりまして」
「月の出までに、ぞえ。女仙を集めてTを_く用意をさせよ」
「はい。ただいま」
女仙が方々に散っていく。玉~は|虚《むな》しくを上げた。
何度わたしても、白い枝に金の果gは|出《みいだ》せなかった。
gは|黄海《こうかい》の西に起こって、|の方角へlけiけていったとわかった。
|不可思h《ふかしぎ》な力に守られた|五山《ござん》の、さらに守oのあつい|蓬]m《ほうろぐう》の花は一花も残さずに散った。|g《しょく》が通^したT国からは|甚大《じんだい》な被害が蟾妞丹欷郡、蓬山の|女仙《にょせん》にとってはそれは心を婴されることではない。彼女たちにとって、重要なことは|麒麟《きりん》のことでしかありえないのだった。
──}は、gの|歪《ゆが》みの中に|住钉巍筏撙长蓼欷抗gが、どこへ行ってしまったのかということだった。
gはこの世と、この世ならざる世界をつなぐ。この世の外を|蓬莱《ほうらい》といい、|《こんろん》といった。一方は世界の果てに、もう一方は世界の影に位置すると护à椁欷搿
その真韦悉趣猡く、それは人には行くことものぞきることもできない境である。gと、月の饬Δ蚴工盲崎_く|《ごごう》のTだけがそのふたつの世界をつなぐことができた。
世界は|虚海《きょかい》と呼ばれる海にとりまかれている。|へiけたgなら、|泰果《たいか》は虚海を渡って世界の果て──蓬莱に流れていったのだろう。
人には渡れぬ世界だが、女仙はgなる人ではない。玉~の指示のもと、多くの女仙が虚海に_いたTを越えて泰果を探しにいったが、泰果の|行方《ゆくえ》は|杳《よう》として知れなかった。
──麒麟は、失われてしまったのだ。
その日からLく、蓬山の|、虚海の|をさまよう汕子の姿が目膜丹欷俊
二章
1
|蓉可《ようか》は|珍珠花《ゆきやなぎ》の|隧道《すいどう》をiけたところで、|汕子《さんし》に出会った。
隧道をiけたところにある小さな丸い訾稀⑷幛椁なvの草におおわれている。周欷纹嫜窑涡泵妞摔稀しがみつくようにして珍珠花が|生《は》えていた。ちょうど隧道の上に生えた一株は、白い花の枝を|《すだれ》のように丸い出口にさしかけている。
その花のをそっとかき分けたところで、蓉可は斜面を下ってくる汕子をつけたのだ。
蓉可は|海桐泉《かいどうせん》の水が入った|桶《おけ》を足元に置く。
人Rには通えぬ奇岩の上を、|女怪《にょかい》はX々と|l《か》けていく。斜面の上から汕子が下りてくることに|不思h《ふしぎ》はないが、|肝心《かんじん》の汕子の姿をるのが久方ぶりだった。
「──汕子、おり」
|女怪《にょかい》は迷路を越えて|の方角へさまよい出る。|一旦《いったん》出ると、Lいときにはひと月ほどもってこないのが常だった。
なにが目的の旅なのかは、|蓬]m《ほうろぐう》の|女仙《にょせん》のすべてが知っている。|倦《う》むほどさまよってから、女怪は疲れはてたでってくるのだった。
「ちょうどいい。水を|汲《く》んできたところ、そこにお座りなさいな」
蓉可が言うと、汕子はおとなしく|豹《ひょう》の|脚《あし》を折って、|珍珠花《ゆきやなぎ》の下に真っ白な|身体《からだ》を休めた。
「今度はLかったね。|黄海《こうかい》の果てまで行っていた?」
できることなら黄海をとりまく|金山《こんごうさん》も越えて、さらに|へ行きたいだろうが、どんな生き物も金山を越えることはできない。いかなるしくみでか、そのように定められていた。
「ほら、おあがり」
|桶《おけ》を口もとにあてがってやると、汕子はおとなしく|F《ふち》に口をつけた。
ひとしきりむとを上げたので、桶をおろして|袖《そで》から出した布を水に|浸《ひた》した。Xくしぼって、脚にあててやる。支えた手にもその脚が幛颏猡盲皮い毪韦わかった。
「ああ、こんなに|[《は》らして」
布で爪先をくるむようにしてやると、汕子は真窑文郡蜷]じる。首を珍珠花の茂みにXくもたせかけるようにして、その重みで雪のように花が散った。
ここにあった珍珠花はかつて一度根こそぎ折れた。ただの一本でさえ残らなかった。
──もう十年も前のである。
「莩证沥いぃ俊?まりh出をしないのよ」
汕子は答えなかったが、それはいつものことなので蓉可も荬摔趣幛胜った。
大きな|g《しょく》があった。さすがに|五山《ござん》では地形が浃铯毪长趣悉胜ったものの、五山の外では地荬一浃筏俊)ぉい饯Δ筏瓢驻つ兢喂gはもぎとられた。
女怪は悲Qをあげ、号泣し、それ以後汕子の声をいたものはいない。
蓉可は四本の脚をていねいに冷やしながらぬぐってやった。
「まだ痛むでしょう。川へ行って冷やしてらっしゃい」
言って、すっかりぬるくなった水をその訾摔长埭工取⑸亲婴狭ち上がってiき出した。
汕子がとぼとぼとiき出した枝道の方角には川はない。彼女は白い木の根元へるのだ。蓉可にはそれがわかったが、あえて呼び止めたりはしなかった。
蓉可には汕子の莩证沥わかるのだ。
|麒麟《きりん》の木に小さなgがついて、それが|孵《かえ》ったら世を手护铯护皮浃恧Δ妊预铯欷俊
下界では人が|麒麟《きりん》に会うことはめったにない。|N仙《しょうせん》して|蓬山《ほうざん》に召し上げられて、初めて蓉可に与えられる任のある仕事になるはずだったし、生まれて初めてg近にる麒麟になるはずだった。
その果gは流されて、麒麟のために用意された蓉可のI手は宙に浮いた。汕子がBう相手を失って乳房を──人の形をした上体の胸には少女のように|微《かす》かなふくらみしかない。それは|豹《ひょう》の形をした|下肢《かし》のほうにあった──|[《は》らしていたように、蓉可の中にもまた、行き訾蚴Г盲疲疼《うず》くものが残された。
果gが流れて十年。どの|女仙《にょせん》も、もう|泰麒《たいき》がってくることはあるまい、と言う。きっとそのうち新しい|泰果《たいか》が|紊砟尽钉筏悚筏螭埭》にgる。それは失われた麒麟が界で死んだことを意味するのだと、そう言うのだ。
それでも|B《あきら》めきれなかった。汕子がいまも|の方角へさまよい出るように、蓉可もまた、泰麒のためになにかをすることをやめられない。o事を祈りつづけ、|々《こまごま》とした品を用意し、少しでも役に立てるよう麒麟についてできる限りのことを学ぶ。そうせずにはいられないから、汕子の莩证沥贤搐い郅嗓铯るし、汕子もまた女仙とは深くかかわろうとしないなかで、蓉可にだけは|Z染《なじ》んでくれた。
足をひきずるようにして去った白い背を送って、蓉可は|桶《おけ》を抱えあげた。
水を|汲《く》みなおそうと|踵《きびす》を返したときだった。|珍珠花《ゆきやなぎ》の|《すだれ》が婴い啤|隧道《すいどう》から女仙のひとりがを出した。
「こちらに汕子がこなかったかえ」
蓉可は、たったいま汕子が曲がっていった枝道のほうをやった。すでに汕子の姿はえない。
「木のほうへ行ったけれど」
「大急ぎで追いかけておくれでないか」
「あたしは、水を」
「|玄君《げんくん》のお召しだ」
蓉可は目を_いた。
「どうやら泰果の|行方《ゆくえ》がわかった」
2
|蓉可《ようか》は|汕子《さんし》を追いかけ、|玉~《ぎょくよう》が待つ|白wm《はっききゅう》へ急がせた。
|蓬]m《ほうろぐう》の建物は、どれもみな|四阿《あずまや》か、さもなければ|庵《いおり》のようなたたずまいをしている。Lなら岩が防いでくれる。もともと莺颏韦瑜ど健幛岛さにはFがない。ただ雨露がしのげればよかった。
蓉可は小道を走り、白い石の|A《きざはし》を五段ばかり上がり、同じく白い石を敷いたmの床に|踏《ふ》みzんだ。ちょうど|l《ていえい》もまたmの中に|l《か》けこんできたところだった。
「汕子をBれてまいりました」
蓉可はその冥ぐ私切韦未菠紊悉似椒する。|椅子《いす》に座り、背後の手すりにもたれていた玉~はうなずいた。
蓉可のかたわらに平伏したlがを上げる。
「おそれながら、|泰果《たいか》がつかったとか」
「|雁《えん》の|麒麟《きりん》がみつけてくりゃった」
「では、本当に|泰麒《たいき》がみつかったのでございますか」
それは奇に近いことだ。|蓬山《ほうざん》のどの|女仙《にょせん》もが、もう|B《あきら》めていた。蓬山のs史の中では、十年もUってってきた麒麟の例などありはしない。^去、|蓬莱《ほうらい》に流された麒麟がないではないが、どんなにLくともその半分以下でつかっている。十年というr月はlを@かせるに足るほど破格の数字だった。
玉~はおっとりと|微笑《わら》う。
「おそらく。……いったんあちらへ渡って、|胎果《たいか》となれば姿形が浃铯毪、麒麟には麒麟の菖浃えるという。それでT国の麒麟に折につけ、|虚海《きょかい》を渡って泰麒を探すようおいしておいたが、今日、ようやく返答があった」
|g《しょく》に流された果gは、国において女の|胎《はら》にたどりつく。それを|胎果《たいか》と称した。
「|延台o《えんたいほ》からでございますか」
玉~は|璃《るり》を|削《は》がせて作った扇を口もとにかざして笑う。
「延台oはしばしば虚海を渡っている子。つけてくださるなら延台oであろうと思うたが、やはりそうじゃったの」
麒麟がしばしばh出をするのは|誉《ほ》められたことではないが、この先つよく|咎《とが》めるわけにもいかないだろう。
「蓬莱に麒麟をつけたという。いまのところ、所在のあきらかでない麒麟は泰麒だけゆえ、泰麒にちがいないであろ」
「……はい」
それでは本当に麒麟がってくるのだ。
「では、さっそく女仙を集めて──」
言いさしたlを玉~は制した。
「よい」
「ですが」
玉~は首を振って、lと蓉可の背後に|呆然《ぼうぜん》と立っている汕子に向き直った。扇を卓の上において、まっすぐI手を伸ばす。
「……汕子。ここへ」
汕子はのろのろと玉~のg近へiいていく。
「必ずつけてみしょうと言うたは、|嘘《うそ》ではなかったろう?」
玉~は汕子の手を取った。
「少しばかりWうなったが、Sしてたも」
言って汕子の手を|叩《たたく》く。
「|紊砟尽钉筏悚筏螭埭》の根元に扉がある。行って、今度こそこの手でもいで来や」
汕子の真窑文郡摔撙毪撙妞浮かんだが、彼女は泣かなかった。そくざに身をひるがえすとそのまま|l《か》けていった。
玉~は|疾走《しっそう》してゆく白い|女怪《にょかい》を目をめて守る。白wmをwびだした汕子が小道を曲がるのを届けてから、lに向かってはれやかに笑った。
「やっと蓬山に祭りの季がきますぞえ」
汕子は走った。生まれてこのかた、ねぐらと定めた木の根元に走ると、太い证韦たわらにひとりの若い女が立って、その足元を示していた。そこはそこには丸く白い光のさしている鏊がある。
すでに|女仙《にょせん》が集まっていた。守る彼女たちには|一瞥《いちべつ》もくれず、汕子はまっすぐ女のもとにかけよった。
紊砟兢涎陇紊稀⒕薮螭室幻堆窑紊悉肆っている。ずっしりと|苔《こけ》むした岩の、ちょうど木の根元から一iほどの鏊に、女は立っていた。
足元にはyのが落ちている。近づいてみれば、それはgなるではなく、一匹の|蛇《へび》だった。白yの|[《うろこ》を持ったふたつ尾の蛇が丸くなって、一方の尾をくわえて窑蜃鳏盲皮い郡韦馈
蛇の作った窑沃肖媳?xいている。ちょうど丸い光が降り注いでいるようにも、苔の下から光がさしているようにもえた。
汕子が足を止めると、彼女は|微笑《わら》って美な右手を差し出した。彼女の左手の指には蛇の一方の尾がきついている。
「汕子、ですね」
汕子は彼女を、蛇が作った光のをのぞきこむ。I手を冥菠郡郅嗓屋の、向こうは白い|《やみ》だった。淡い光の|隧道《すいどう》がAいた底に、ぽっかりと丸い穴が|空《あ》いていた。穴に切り取られたL景の中にえるのは、Tれない式の建物と、庭らしき空gと、金の丸い光だけだったが、汕子にはそれで充分だった。
──泰麒。
なにを|`《あや》っても、あの光が泰麒か否かを`ったりはしない。
「お入りなさい。ただし、私の手をけっして放さないでくださいまし」
そういった女は、汕子の知るではなかったが、いまはどうでもいいことだった。
彼女の手を握り、汕子は光の中に|踏《ふ》みこむ。冷え冷えとした空荬吹きあげてきていた。隧道の出口には|珍珠花《ゆきやなぎ》の花弁が舞い散るようにして、白い冷たい花が吹きこんでいる。
光の中に最後の足までが踏みこむと、ふんわりと浮き上がる菖浃あって、天地の感が消绀筏俊V妞颍漂《ただよ》うようにして隧道の出口へ向かって一iを踏み出した汕子の背後に、女がAいて下りてくる。
「さあ。MめるところまでMんでごらんなさい」
言われ、汕子はiき始める。出口へ向かって、汕子がMめるぎりぎりの|F《ふち》までiんでから、|腕《うで》を伸ばした。
いまや界いっぱいにひろがったL景は、白い冷たい花の舞う墨色の空荬沃肖私黏瓮瑜す猡浮かんでいる、ただそれだけの光景だった。
光はよくれば小さな子供の姿をしているようにも思われたが、汕子の目には、それがひとつの果gのように映った。本当なら十年も前に汕子が白い枝からもいだはずの果g。腕に抱えるほどの大きさがあって、つややかな金の色をしている──。
汕子の指はせいいっぱいに伸ばしても、金の果gに届かない。女の手を握る指に力をこめ、上体を伸ばし、手探りをし、冷たい空荬颏きわけ果gをさし招くようにすると、果gのほうから汕子の手の届くあたりへ漂ってきた。
──どれほどこの瞬gを粢たろう。
汕子は指先に触れたその果gをしっかりとつかまえた。
手元に引きよせると、そのgはyなく、汕子の腕の中にもがれて落ちた。
3
彼が白い手の、すぐg近へiいていくと、白い手は迷わずに彼の手首を握った。
冷えた肌に、その手の感触はひどく暖かかった。
}と|土B《どべい》のgのせまい|隙g《すきま》にどうやって人がLれているのか、それを_かめたかったはずなのに、g近までいった瞬g、あたりのL景が定かではなくなった。ちょうど|瞳《ひとみ》を水の膜がおおいでもしたように、L景が|《うる》んでにじみ、ものの|郭《りんかく》が消え失せた。
思わず手探りをするように伸ばした|腕《うで》の手首をつかまれ、すると急に|身体《からだ》が浮きあがる感触があって、するりとどこかに引きzまれた。
引きzまれた先は白い空gだった。色のないもやのようなものが猡たちこめていて、どんな鏊だか判然としなかったが、彼はなんとなくそこをふわふわした球形の鏊のように感じた。
そこはいっそう暖かく、さらに暖かいLがどこからか流れてきていた。
足元には|硬《かた》い|床《ゆか》の感触がなかった。かといって柔らかなものを|踏《ふ》んで足をとられる感じもしない。の上に立つとこんな感じがするかしら、と彼は思う。
すぐ近くに人の菖浃してlかがしっかりと彼の手を捕らえていたが、その姿はえなかった。もやの中にちらちらと乳白色の影が婴い皮い毪瑜Δ摔馑激à郡堡欷伞荬韦护い坤盲郡もしれなかった。
少しのgぽかんとしていると、彼の手首を握った手が彼を引いた。|不思h《ふしぎ》に|怖《こわ》い感じはしなかったので、おとなしく手を引かれるにまかせる。
ごく短い|廊下《ろうか》をiくほどのg、ふわふわと引かれて、やがて水面にを出すようにして、ぽかりともやの外に出た。
突然光にさらされて、彼はしばらくきょとんとしていた。
目の前にあったのは、たこともない木の真っ白な证坤盲俊¥饯欷悉蓼毪羌白の金属でできたようにえた。证咸く、それでもさほどに高くなく、やはり白い枝は大きく横に伸びて、先端で|垂《た》れるようにしなっている。
その枝の向こうには奇妙なL景がえた。v色をした浃铯盲啃韦窝窑Bなる子。hきに集まった、Tれない格好の女たち。
そうして、なかでもいちばん奇妙だったのは、彼の手を握った女の姿だった。
女は半分が人で、半分が|虎《とら》か豹《ひょう》のようにえた。は妙にのっぺりとして、そこに真窑文郡表Fのしようのない色をたたえて_いている。|怯《おび》えてもいいはずだが、|不思h《ふしぎ》に|怖《こわ》いとは思わなかった。それよりむしろ、しい目だとそう思った。
「……タイキ」
「半の女はそういったが、それがなにを意味する言~なのか、彼にはよくわからなかったし、ましてやそれが彼女が十年ぶりにkした言~であることなど、わかるはずがなかった。
「|泰麒《たいき》」
彼女の柔らかな手がをなでて、同rに丸い目から澄んだ妞こぼれた。
彼はなんとなく、いつも母Hにするように手を握ってそのをのぞきこんだ。
「かなしいことがあったの?」
彼が言うと、彼女は首を横に振った。いいえ、と否定するよりは、荬摔筏胜ていいのよ、と言いたげなその仕草が母Hのそれによく似ていた。
「……泰麒? その子が?」
声がこえて、彼はようやく木の周欷瞧婷瞍胜钉铯幛が起こっていることに荬ついた。どうしたのだろう、と思っていると、ひとりの女が近づいてくる。
「……珍しいこと」
「だれ?」
女は彼の前に|膝《ひざ》をついた。
「わたしは|玉~《ぎょくよう》と申す。……こんなをたのは何百年ぶりかの」
女は彼のを|梳《す》いた。
「|\麒《こっき》だ。ほんに、珍しいこと」
「なにか、おかしい?」
彼は目の前の女にではなく、かたわらに立って彼の手を握っている半人半の女のほうを上げた。すでに彼の中で、こちらの女のほうが自分のたよるべき存在なのだと、そうなんとなく理解されていた。
彼女はもう一度、o言で首を横に振った。
「もちろん、おかしくはないとも。めでたいことじゃ」
目の前の女は言う。
「あちらで生まれたのなら名前があろうが、ここでは泰麒とお呼びする」
「泰麒? どうしてですか」
「それがQまりだから、かの」
「ここは、どこなんですか? ぼくは庭にいたはずなんですけど」
彼は、常なことが起こったのだと理解できないほどに小さくなかったが、それによってひどくeするほどには大きくなかった。
「ここは蓬山。泰麒のあるべき鏊」
「よく……わかりません」
「いずれおわかりになろう。──これは、|汕子《さんし》。|白《はく》汕子という。あなたのお世を申しあげる」
彼はかたわらの女を上げた。
「汕子……」
さらに玉~は、を|へ向けた。
「そちらは、|廉台o《れんたいほ》」
白い木の证韦饯肖恕⒔黏误の女が立っていた。彼が玉~のを追って彼女のほうをたとき、ちょうど白い|蛇《へび》がするすると|腕《うで》にきついて、yの腕に浃袱郡趣长恧坤盲俊I撙摔悉栅郡膜幛挝菠あって、それが腕にyの|i《くさり》でつながった指に浃袱郡瑜Δ摔庖えたが、@いていたので_かなこととはいえない。
「お礼を申されよ。泰麒のお|迎《むか》えに汕子をつかわすため、F重な宝をおJしくだされたのだから」
彼はやんわりと|微笑《ほほえ》む女を上げ、さらに汕子に目をやった。汕子がうなずいたので、いわれるままに^を下げた。
「ありがとうございました」
彼女はただ|微笑《わら》う。それを鹤悚饯Δ艘やって唐突に玉~が立ちあがった。|踵《きびす》を返し、去っていこうとする。
「あの、玉~……さん」
「泰麒。さま、と」
彼は汕子を上げた。
「……さま、とお呼びするのです」
彼はうなずいた。汕子の言~は|不思h《ふしぎ》に|趸蟆钉趣蓼伞筏い蛏まなかった。泰麒、と耳なれない言~で呼ばれても、汕子の口から出ると、自分の呼び名だとあっさり|{得《なっとく》できた。
「玉~さま。・・・・・いろんなことがとても不思hな荬するんですけど」
彼には自分の困惑を、うまく表Fすることができなかった。
玉~はただ笑った。
「じきにTれようほどに、おいおい汕子にかれるがよかろう」
彼は汕子を上げた。汕子は微笑んだ。──表情のとぼしいだから、さだかではないが、たしかに微笑んだのだと感じた。
「はい」
彼が汕子の手をく握ると、それ以上にい力で答えがあった。
4
「──|汕子《さんし》、汕子。その子をようくせておくれ」
「こちらへおいでなさい、|泰麒《たいき》。|衣《きぬ》をしんぜましょう」
「衣より水を。それより|桃《もも》がよろしいか」
「|李《すもも》でも|梨《なし》でも」
|玉~《ぎょくよう》が|腕《うでわ》の女をともなってその訾蛉イ毪胜辍|女仙|女仙《にょせん》にとりかこまれて泰麒は困惑してしまった。
女仙たちの笑をればZ迎されているらしいとはわかるのだが、なにしろ状rが普通でない。汕子の手を|浴钉たく》く握って、腕にすりよるようにする、どっと女仙がはやしたてた。
「あれ、そのように汕子はがりにつかずとも」
「汕子も|独《ひと》り|占《じ》めおしでない」
「泰麒、こちらにいらっしゃいませ」
かねて|l《ていえい》は女仙たちに声をかけた。
「そのように|浮《うわ》ついては、泰麒もお困りでしょう。しばらくつつしんで、汕子にまかせておやりなさい」
言ってlはかたわらに立った|蓉可《ようか》を振りかえる。
「mにおBれおし。|露茜m《ろせんきゅう》がよいだろう」
lは、この若い女仙が泰麒のためにずっとそのmの浃颏筏皮い郡长趣蛑っていた。蓉可は感Oまった子でlを返し、それから深くうなずいた。
蓉可はそろそろと子供の前にすすんだ。|膝《ひざ》をついて目の高さを合わせる。泰麒のをのぞきこんだ。
「……よくおりくださいました。心からおよろこび申しあげます」
泰麒は守るように自分の肩にまわされた汕子の腕がほどけるのを感じた。やんわりと押しだされて、膝をついた女に|峙《たいじ》する。
「あなたは、lですか?」
「蓉可と申します」
「蓉可さまは・・・・・」
言いさしたとたんに、周欷闻たちがどっと笑った。蓉可もまた笑みを浮かべた。
「蓉可、とお呼びください。さま、と泰麒がお呼びになるのは、|玄君《げんくん》だけでよろしいのですよ」
「玄君?」
「玉~さまでございます」
泰麒が汕子を仰ぎると、汕子はうなずいた。それで泰麒も|{得《なっとく》した。
「じゃあ、蓉可。──蓉可はどういう人なんですか? どうしてぼくは、ってきたことになるんですか?」
「わたくしはこの|蓬山《ほうざん》に住む|女仙《にょせん》でございます。そして泰麒は、この蓬山の主。泰麒はここでお生まれになったのですよ」
泰麒は目を_いた。しばらく蓉可をつめた。しばらく蓉可をつめた。
「……ここで生まれた……?」
「はい」
蓉可はうなずく。
「いわば、ここが泰麒のごg家でございます」
「でも……」
言いさした泰麒を、蓉可は首を振ってとどめた。
「泰麒はずっと|行方《ゆくえ》知れずでいらっしゃいました。天涞禺にまきこまれて、国に流されておしまいだったのです。本当に……お探しもうしあげました」
そういう蓉可は|嬉《うれ》しいような、せつないような表情をしていた。
「どこでどうしていらっしゃるのか、Lいg心配もうしあげておりました。やっとおりいただけて、こんなに嬉しいことはございません。本当に、よくおりくださいました」
泰麒はただ蓉可のを返した。
それでは自分は、うちの子ではなかったのだ、と思った。
思ったとたんに、それはすんななりと胸の中にとけこんだ。
祖母が自分を|嫌《きら》うわけも、自分がどこか浃恰そのせいで周欷趣胜摔しらぎくしゃくしてしまうわけも、その一言でぜんぶh明がついた荬した。
gHのところ、彼は家族とうまくやっていくことのできない子供だった。彼自身はうまくやっていきたいとっていたし、そのように行婴筏皮い毪膜猡辘坤盲郡韦坤、それでも彼と家族のgにはどうしても|埋《う》められない悉存在した。
同じ年の子供がよく考えるように、彼もまた自分は分子なのかもしれない、と思うことがよくあった。──そして、それはやはり真gだったのだ。
「……もしかして、汕子がぼくの本当のお母さんなの?」
汕子と蓉可を比べたが、ふたりはともに首を横に振った。
「汕子は泰麒の|W《しもべ》です。泰麒のお世をもうしあげるためにいるのでございます。わたくしはgなる|女仙《にょせん》、泰麒にお莩证沥瑜暮らしていただけるよう、j用をいたしますのが栅幛胜韦扦埂
「じゃあ、ぼくの本当のお母さんはどこにいるんですか……?」
蓉可は^上の枝を上げた。
「泰麒はこの木になったgからお生まれになりました。天帝がお{みくださったのですよ」
泰麒は白い木をあげた。白yの枝には果gはもちろん、花も~もえない。彼はまだ生命のQ生についてよくは知らない。それで蓉可のその言~には、さしたる抵抗を感じなかった。
きっと──と、泰麒は思った──季になれば、この枝いっぱいに赤いgがなるのだろう。たぶん大きなgで、それをぽんと割ると、その中に自分が入っていたのだ。
それはどこか奇妙な生まれ方であるようにも思われたが、彼は自分があるNの端であることをなんとはなしに感じとっていたので、それは生まれのせいなのだと|{得《なっとく》することができた。
(それで、だったんだ)
自分はもらわれてきた子だったから、祖母に|嫌《きら》われ母の|迷惑《めいわく》になっていたのだ。
木のgから生まれたので、どうしても祖母やIHが喜ぶようにふるまうことができなかったのだ。
──そうして、本当のIHはいない。どんな事情があるのかはわからないが、自分にはそもそもHがないのだ。
その思考はするすると胸の内にすべりこんできて、そもそもあった_信のようにそこに宿った。|嘘《うそ》だとは思えなかった。なにかのまちがいだとも、思えなかった。ただ──、ひどくせつない莘证した。
「・・・・・どうなさいました?」
蓉可がいてきたので、唇をひきむすんで首を振った。汕子がいたわるように腕をまわしてきたので、せいいっぱいの力で汕子の|身体《からだ》にしがみついた。
──わかってしまった。
(ぼくはうちの子じゃなかったんだ)
たくさんのの断片がYをよぎっていった。
怒らせてばかりいた祖母。父Hの|叱《しっせき》。彼はどうしても、ふたりの期待にこたえることができなかった。|母H《ははおや》は彼のことで祖母や父Hと言い争うことが|~《た》えず、弟は自分が叱られるのは彼のせいだと、そう言って怒った。
──困るんです、と若い教は言った。
(少しもクラスに|Z染《なじ》んでくれないので、困っているんです)
彼女は彼を途方にくれた目でた。
(やはりこの年で、友_がひとりもいないのは}があると思うんです)
祖母は|《しわ》の深い口もとを|歪《ゆが》める。
(どうしてお友_を作らへんの)
(お|x母《かあ》さん、ちがうんです。この子は仲g|外《はず》れになってるんです)
(そんなん、本人の|菪浴钉しょう》に}があるからやわ。どうしてちゃんと、お友_とうまくやっていくことがでけへんの)
(お兄ちゃんは弱虫だから、仲gに入れてもらえないんだよ)
(あんたは|a《だま》っとき。あんたはあんたで、弱いものいじめばっかり。母Hがしっかりせえへんし、うちの子はふたりしてこんなんなんやわ。まともに子供を育てられへんの)
(おx母さん、でも──)
祖母の|叱《しっせき》はY局いつも、母HをめてKわる。そうして母Hはひとりでなくのだ。
(どうしておまえは、そうなんだ)
父Hに|溜《た》め|息《いき》をつかれて、なんと返答すればよかったろう。
(お|祖母《ばあ》ちゃんに叱られずにすむよう、もう少ししっかりできないのか)
──ごめんなさい。と|《わ》びる以外に返す言~がなかった。
(お兄ちゃんのせいで、またぼくまで怒られたじゃないか。お兄ちゃんが祖母ちゃんを怒らせてばっかりいるから、ぼくまでいっつも迷惑してる)
──ごめん、と|x《あやま》るばかりで。
彼なりに努力してみても、少しもY果は浃铯椁胜った。
どうしてうまくいかないのか、彼にはわからなかった。自分の存在が家族全部に不快な思いをさせているように思えてならなかった。彼さえいなければ、家族は氦扦い椁欷毪韦扦悉胜い、そんな荬常にしていた。
(本当にそうだったんだ)
自分という分子がいたから。
(ぼくは、うちにいてはいけなかったんだ)
振りかえるとそこは、暖かいばかりの鏊であった荬した。父Hが、母Hが恋しかった。祖母が弟が|《なつ》かしかった。
彼がもう少しがんばれば、なにもかにもがうまくいって、lも怒ったり泣いたりせずにいられたのではないかと思えるのに。
(でももう、ぼくは二度とうちにはれない)
妞こぼれた。
それは_愁ではなく、|巯А钉いせき》だった。
彼はすでに、exを受け入れてしまっていた。
三章
1
「お目めですか……?」
|汕子《さんし》の声がして、|泰麒《たいき》は目を擦った。きょとんと目を_けて、しばらく横になったまま|天井《てんじょう》をながめた。
白い石の天井だった。|乳白色《にゅうはくしょく》の石にはびっしりとなにかの戆袱りこまれている。四隅にはBの刻がえ、草や花が}jにからみあいながら、天井の中央にある丸い戆袱欷螭扦い搿Iは|T《ぬ》ってなかったが、代わりに々な色をした石がはめこんであった。
「あのBはなんていうB?」
指を伸ばして四方にとまったBのうちのさした。
「さあ……」
困ったような声に、ふうん、とつぶやく。本当を言えば、Bの名前が知りたいわけではなかった。昨日、もう大きくなったのにたくさん泣いたのを思い出したので、少しきまりがかっただけだ。
「いま、何r?」
思いきって、汕子の声がしたほうをた。小さな部屋──といっても、彼の勉部屋よりも少し小さいに^ぎない──の、床いっぱいに薄いきれいな柄の|布狻钉栅趣蟆筏しきつめてあって、三方の壁ぞいにクッションとも枕ともつかないものがKべられている。白い石でできた壁の上半分には、小さな石をはめこんで、なにかの淠兢描かれていた。
一方だけは壁がない。代わりに布が|字亍钉いえ》にも下がっている。布はいまたくし上げてあって、ちょうどそこに汕子の姿があった。
汕子は困ったように首をAけた。
「ぼくは、これからどうすればいいんですか? 学校に行かなくてもいいの?」
泰麒はもう、自分の生活が大きく浃铯盲皮筏蓼盲郡韦坤壤斫猡筏皮い搿D恳ましで起きて、服に着替えて、を洗って朝食を食べて学校に出ていくような、そういう生活でないことだけは_かだと直感していた。
「なにをすればいいの?」
「なにも」
そう言って汕子は首を振った。
「お起きになりますか?」
そうかれるところをみると、このまま寝ていても起きても、どちらでもかまわないらしい。それがここしばらくのgだけにSされた特eな状Bなのか、それともこの状BがずっとAくのか、それは判然としないにしろ。
「起きます」
泰麒は小部屋の奥のほうに横たわっていた|身体《からだ》を起こした。
汕子が立ち上がって、それでこの小部屋が床から一段高くなっているのだとわかった。カ`テンの向こうには、|透《す》かしをしたい扉が何枚もKんでいる。_いている部分から、その向こうにeの部屋があるのがえた。
泰麒はd味深く自分のいる小部屋と、向こうにえる部屋を史证工搿W蛉栅夏兢蜗陇uずかしいくらい泣いて、そのまま眠ってしまった。それで自分が\びこまれた部屋がどういう部屋なのか、少しもわかっていなかったのだ。
この小部屋はとても落ち着ける鏊だと思った。向こうにえる部屋も、莩证沥韦瑜丹饯Δ什课荬馈O颏长Δ尾课荬摔媳冥ないようだったが、代わりに白い石の手すりがあって、その外、手を伸ばせば届くほどの距xに、|苔《こけ》におおわれた岩が壁のように迫っている。岩壁と建物の|隙g《すきま》から入った光が、表面の苔をつややかにxかせていた。岩壁にしがみつくようにして|生《は》えた草や小さな木が、部屋の中にまで入りこんでいるのが|面白《おもしろ》かった。
汕子が水差しと|桶《おけ》を持って小部屋の中にってきた。一段低くなった部分の、片隅にあるテ`ブルに桶を置いて泰麒を呼ぶ。ころころと|布狻钉栅趣蟆筏紊悉颍《ころ》がるようにして、汕子のそばによった。
「おはようございます」
言うと、汕子はただ|微笑《わら》って泰麒に布猡味摔搜欷堡毪瑜Α⑹兢筏俊¥となしく腰を下ろす。自分が裸なのに荬扭い郡堡欷伞⑻丐荬摔筏胜った。汕子も|蓉可《ようか》もそのほかの女たちも、泰麒が知るいかなる服とも`う服を着ていたので、ここでは前のような格好はできないのだろうと、そう思った。
裸でも寒くない。かといって暑いわけでもない。ここはちょうどいま、莩证沥韦いぜ竟なのだろう。
汕子が少し浃铯盲郡浃辘たで、洗面をさせてくれた。うんと小さな子供になったようでuずかしかったが、それるままになっていた。|桶《おけ》を持って出ていった汕子は、こんどは服を抱えてってきた。それは、祖母が着る着物に少しだけ似ていると思った。
服を着せてくれるgも、汕子はずっとo言だった。汕子はo口なのだと、そう思ったがべつに荬扭蓼辘矢肖袱悉筏胜ぁ7を着せられ、手を引かれてOの部屋へ行くと、部屋の中央には朝食ののせられたテ`ブルがあって、蓉可がそのそばに立っていた。
「おはようございます。蓉可」
声をかけると、蓉可は|嬉《うれ》しそうに笑う。
「おはようございます。よくお休みになれましたか?」
「はい。──蓉可が朝ごを作ってくれたんですか?」
「いいえ。お食事を用意するのは、そういう役目の者がするのですよ」
泰麒はきょとんとする。
「ひょっとして、お|叱《そうじ》をするのも、そういう役目の人がいるんですか?」
「さようでございます。──さ、冷めないうちにお食事をなさいませ」
まるでお金持ちの家の子になったようだと思った。gHにそういう子を知るわけではないのだけれど。
蓉可に白くLい|箸《はし》を渡されて、それを手に取った。
Tれない料理をわたして、それから蓉可と汕子を比べる。
「蓉可と汕子は食べないんですか?」
「汕子は食事をいたしません。わたくしは、先にすませました」
「でも、ぼくひとりでこんなに食べられません」
テ`ブルの上には大小いくつもの皿がKんでいる。
「お残しになって、かまわないのですよ」
「ひょっとして、ぼくが寝坊をしたのでみんなごをすませてしまったんでしょうか」
蓉可は笑う。
「汕子は食事をしないのです。そういう生き物ですから。たとえ食事をしても、泰麒にお|相伴《しょうばん》できる身分ではありません」
泰麒は首をかしげた。身分、という言~は知っているが、|{得《なっとく》するのがyしい言~であったからだ。
「一wにごを食べられないんですか? 寝坊しなくても?」
「さようです」
泰麒は困りきってテ`ブルをつめた。
「……どうなさいましたか?」
「ここではそうするのが、あたりまえならしかたないんですけど……」
「はい?」
泰麒はそばにひかえた蓉可を上げる。
「そういの、ぼくは少し浃矢肖袱するんです。……ええと」
首をひねって、言~を探した。
「寝坊した|P《ばつ》で、ひとりでごを食べるのなら、我慢できるんですけど。ひとりじゃなくて、それなのにひとりでごを食べるのは浃矢肖袱扦埂¥っと一wに食べたほうがおいしいと思うんです」
まあ、とつぶやいて、蓉可は声を立てて笑った。心得たようにうなずいて、部屋の一方にある|n立《ついたて》の向こうに声をかける。どうやらその向こうにも部屋があるらしかった。
「──手を休めてこちらにいらっしゃいませ。泰麒が|朝A《あさげ》にお招きくださるそうです」
2
朝食のあと、蓉可は外を案内してくれた。
|汕子《さんし》の手を握って建物の外に出る。|泰麒《たいき》はそこで少しのg、きょとんとしていた。建物にはまったく外壁がない。出入り口にも|n立《ついたて》が立ててあるだけ、扉も酩猡胜った。三段ばかりの石段が小道に向かって下りていて、庭もなければTもない。かろうじて石段の前は少しだけ冥なっていたが、蹩冥虺訾郡工扒挨もう奇岩の壁面というありさまだった。
奇岩は高く、|仰向かなければ空がえない。三方に伸びた小道は岩壁に|挟《はさ》まれて、道というより路地にえた。ビルの谷gのい路地に立てば、こんな莘证したかもしれない。背後を振りかえるといま出てきたばかりの建物だけが低くて、本当にビルの谷gにひっそりとLされた家のようにえた。
「……|不思h《ふしぎ》なところですね」
泰麒がしみじみとつぶやくと、蓉可は笑う。
「さようでございますか?」
「こんなことをくのはとっても浃胜螭扦工堡伞ここはどこなんですか?」
蓉可は首をかしげた。
「ここは|蓬山《ほうざん》でございます」
「ええと、そうじゃなくて……」
泰麒はなんとか自分の困惑を护à瑜Δ取⒀匀~を探す。
「うちの近所ではないと思うんです。うちからどれくらいxれたところなのかな、って。──ここは日本のどこかですか? それとも外国なんでしょうか」
言~は外国Zではないけれど、なにもかもがとても浃铯盲皮い啤⑷毡兢韦嗓长とも思えない。
「それとも、ぼくはぜんぜんeの世界に来てしまったんでしょうか」
タンスを通りiけたみたいにして。[#入力者注:「ナルニア国物Z」というファンタジ`ではクロ`ゼットを通りiけて世界をLれる。でも、いまの若者はこのは知らないと思う…]
蓉可は少し困ったように首をAける。
「……そうなのだと存じます」
「そうかぁ……」
ひどく奇妙な莘证した。目の前にあるもの全部はFgでしかないようにえるのに、今まで思っていたFgとはちがうものだなんて。
しみじみ考えていくと、「Fg」とはなんなのか、なにが「Fg」なのかさっぱりわからなくなってしまいそうなので、泰麒は息をひとつ|吐《は》いて、それで考えるのをやめることにした。
「──ここには冥て饯椁鏊はないの?」
「ございますよ。ご案内いたしましょうね」
言ってiき出してから、蓉可は背後の建物に目を向けた。
「ここは|露茜m《ろせんきゅう》と申します。泰麒のお住まいに用意いたしました」
「はい。もう少しここにお|T《な》れになって、ほかによいmがございましたら、そのようにおっしゃってくださいまし」
「引っ越してもかまわないの?」
蓉可はかろやかな声で笑う。
「かまいませんとも。泰麒は|蓬]m《ほうろぐう》の主、お好きなようにお使いになってよろしいのでございます」
泰麒は首をAけた。い小道をたどって、ゆるやかな上り道と|隧道《すいどう》が交差する分岐点まで来ていた。
「それが……よくわからないのですけど」
「はい?」
「蓬]mって、ここのことですよね?」
「さようでございますよ」
「どうしてぼくが主になるんですか?」
泰麒は心底困惑していたのだ。蓉可にしても汕子にしても、ほかの|女仙《にょせん》にしても、泰麒よりはずっと年上なのだし、なかでも|玉~《ぎょくよう》はなにかしら威のようなものがある。その女たちをさしおいて、自分が主だと言われるわけがわからなかったし、どう考えてみてもそれは不似合いなことだとしか思えなかった。
蓉可は少し困ったように|微笑《ほほえ》んだ。
「泰麒が|麒麟《きりん》でいらっしゃるからです」
「キリン、ってなんですか?」
「昨日の、あの木からお生まれになるのが麒麟でございます」
ぱっと胸の中に明るいものがさした。
「じゃあ、ぼくのほかにも同じような生まれの子供がいるんですね」
「はい。いまは泰麒のほかに十一」
「ぼくを入れて十二人?」
「さようでございます。昨日お会いになった、|廉台o《れんたいほ》も麒麟でいらっしゃいますよ」
「|腕《うでわ》の人?」
「さようでございます」
「昨日の人に、また会えるでしょうか」
蓉可は首を横に振った。
「廉台oはもうおりになられておしまいです」
それはひどく|惜《お》しいことのように思われた。昨日、あんなに泣いて泣き寝入りしたりせずにいられたら、色々なができたかもしれないのに。
「ほかの人たちはどこにいるんですか? 会えるでしょうか?」
蓉可は笑った。
「もうみんなお国にお|下《くだ》りあそばしましたけれど、泰麒もお下りになれば、お会いになれますとも」
「下る?」
「王をおxびになって、蓬山をお下りになれば」
「王──。王がいるんですか?」
「はい。泰麒のご主人が王でございますよ」
「ご主人?」
「|麒麟《きりん》は王をxび、王にお|仕《つか》えするもの。それまで泰麒をおあずかりするのが、蓬山の役目でございます」
きっと自分は王のところでPくことになるのだ。どの王のところでPくのか、それをQめるまでここにいて、ひょっとした修行か何かをするのかもしれない。
展望が_けて、泰麒は昨日からずっと感じていた途方にくれる莘证少しXくなった荬した。
「でも、ぼくにそんなたいそうな仕事ができるかな」
まあ、とつぶやいて蓉可は声をあげて笑う。
「おできになりますとも。だって泰麒は麒麟ですから」
「キリンは王のところで仕事をするものなの?」
「そうでございますよ」
「じゃあ、ほかのキリンも?」
うなずいて、蓉可は指を折る。
「ここには国が十二、あります。それぞれ、王がひとりで、十二人。麒麟も十二、ひとりの王にひとりの麒麟、そういうQまりになっているのでございます」
「へぇ……」
「ただし、いまは王が十一人しかおられません。北|の国、|戴国《たいこく》の王は十年も前に亡くなられて、次の王がQまっていないのです」
「戴国のキリンは?」
蓉可は笑って、泰麒のをのぞきこんだ。
「ここにいらっしゃいますでしょう?」
「──ぼく?」
「さようでございますよ。泰麒は戴国の|麒麟《きりん》、だから『泰麒』とお呼びするんです。王はこれから泰麒がおxびになる。lを王にするかQめるために、麒麟はいるのですから」
泰麒がまばたきをした。
「そんな、大切なことをぼくがQめていいの?」
蓉可は深くうなずいた。
「それは泰麒にしか、Qめられないことなのです。──さ、ここが|桑@《そうえん》でございますよ」
3
|泰麒《たいき》が|蓬山《ほうざん》の生活に|T《な》れるのには、いくらのrgもかからなかった。
奇妙な格好、奇妙な生活T、野菜しか出ない食事。
|不思h《ふしぎ》はたくさんあるが、そんなものにこだわるほど|大人《おとな》ではない。不快なことならばともかく、それらはいっさい特に|不愉快《ふゆかい》とも思えなかったので、|泰麒《たいき》は苦もなくそれを受け入れていった。
ひとつだけうまく|Z染《なじ》むことができないことがあるとすれば、それは自分の姿形が浃铯盲郡瑜Δ怂激铯欷毪长趣坤盲俊¥长长摔るRは家にあったそれほど明tには姿を映してくれないが、映りのいことを考]に入れても、どうにも自分でないもののように思われてならない。
もともとしみじみ自分のを眺めるTなどありはしなかったので、どこがどうちがってしまったのかh明はできないが、Rに映った自分は他人のようにえた。
どういうしくみでかはわからないけれど、あの白いもやの氦沥康坤蛲à盲郡趣に、なにかの浠が起こったようだった。
自分の置かれた立訾稀いくらもUたずにのみこんだ。|女仙《にょせん》によってたかって世をかれること、m当なrgに起き、m当なrgに眠り、そのgなにをするでもなく蓬山をめぐって暮らすこと、|汕子《さんし》や女仙にいろいろな|をして、ここでの暮らしに必要な知Rをたくわえること、それがいま自分に求められているすべてであること。
暖かく──そのgoして泰麒を守る女仙たちも、すぐにそのoを|解《と》いた。
「最初はどうなることかと思ったけれど」
|茉莉花《まつりか》の上に冥菠疲乾《かわ》かした布をふるいながら女仙のひとりが言う。あおがれて茉莉花の|觥钉摔》いがくなった。
「なにしろ、十年も蓬山をxれていた|麒麟《きりん》の例などほかにありゃしないんだから」
|蓉可《ようか》は同じように布をふるいながら、Xく彼女をねめつけた。
「何年xれていようと、麒麟は麒麟だもの。浃铯毪悉氦ないでしょう」
「そりゃ、そうなんだけどね」
同じようにしてふるった布をたたんでいたeの|女仙《にょせん》が声をたてて笑う。たたんだ布は茉莉花の移り香でいい訾いした。
「さすがに|蓬莱《ほうらい》育ちでは、奇妙なところがないじゃないが。──なぁに、|嫌なふうに奇妙なわけじゃないから、かまやしない」
蓉可はたたんだ布をeんだ手を腰に当てる。
「奇妙呼ばわりはき韦皮胜辘蓼护蟆¥饯辘悚、蓬山育ちの麒麟よりもあたしたちに莅菠い堡欷伞⑵婷瞍嗓长恧ありがたいじゃありませんか」
周欷牵衣《きぬ》をとりこむ数人の女仙がどっと笑った。
「蓉可は本当に泰麒びいきだ」
「泰麒びいきでいんですか」
むきになる蓉可の周りを女仙は取り欷唷S护毪瑜Δ私づいて蓉可の足元に布をeんでは、はやしたててxれていく。
それを守っていた|l《ていえい》もまた、笑った。
「そんなに蓉可をいじめるものじゃない」
本来、蓬山の女仙は荬坤盲俊¥饯欷扦狻Ⅶ梓毪问涝をするためにいるのだから、肝心の麒麟がいなければなんとはなしに意菹沈して^ごす。ましてや、つい先だってまでのように、麒麟の|行方《ゆくえ》がわからずにいれば、さしもの女仙も|悄《しお》れようというものだ。
麒麟は常にいるとは限らない。むしろ蓬山に麒麟のいないrgのほうがLかった。麒麟がいなければ水|汲《く》みも洗濯も|C《はたお》りも全部が自分たちのため、はりあいのないことおびただしい。──だが、いまはちがう。いまは麒麟がいる。
それでもう、どの女仙もすっかり浮かれてしまっている。それでなくとも女仙にとって麒麟は|邸钉い取筏筏ぁ¥嗓西梓毪郅筏い长趣浃铯辘悉胜い、どうしたってF在いる麒麟が一番郅筏荬してしまう。gをいえば女仙のlもが蓉可を笑えない。五十人近くいる女仙の全部が、泰麒を郅筏て郅筏てたまらないのだ。
それでも蓉可をよってたかって「泰麒びいき」と呼ぶのは、ほかの女仙より泰麒に|Z染《なじ》みの深い年若の女仙を少しばかりねたんでのふるまいに^ぎない。
「蓉可!」
子供特有の澄んだ声がした。
|女仙《にょせん》がみんな手を止めて、声のしたほうをる。い小道をiけて、泰麒が訾耍l《か》けこんできたところだった。
「Lして、Lして」
泰麒は息を|《はず》ませて言う。蓉可にwびついて、背後にLれた。
「泰麒も蓉可びいきだ」
「ほんに」
女仙たちは笑って言って、持っていた布をeみあげる代わりに、泰麒にかぶせる。|茉莉花《まつりか》の茂みと蓉可のgにLれた小さな|身体《からだ》は、あっというまに布の山にLされてしまった。
女仙たちがくすくすと笑っていると、Aいた射しがさっと|遮《さえぎ》られた。奇岩の上に白い姿がえて|女怪《にょかい》が訾讼陇辘皮る。それに向かって全Tが|の小道をさした。
「あっちだよ、汕子」
「泰麒なら、あちらへ向かわれたよ」
「あたしを|《ころ》ばす荬い扦亭А
口々に女仙が言ったが、汕子はけっして泰麒を失ったりはしないのだ。まっすぐ蓉可に近づいて、背後の布の山を持ち上げてしまう。首をすくめるようにしてLれていた泰麒が、をあげて大きく息をついた。
「……やっぱりつかった」
汕子の前足を抱くようにして、ぺたんと座りこんでしまう。まだ息が|《はず》んでいた。
汕子はその^をひとつなでて、腕に抱えた衣を女仙に渡す。女仙たちが笑った。
「汕子の目をくらまそうなんて、o理なだ」
「そうみたい」
笑って言った|]《ほお》はt潮している。汕子の前脚に|身体《からだ》をもたせかけて、|袍《ほう》の|襟《えり》をゆるめる子供をlもが笑って守った。いままで蓬山にいたどの|麒麟《きりん》よりも、泰麒はた目にも郅椁筏荬するのは、全Tが泰麒びいきのせいかもしれない。
蓉可も笑って泰麒のをなでる。ってきたときよりも伸びたが、汗で~にりついていた。やんわりと~にかかったをかきあげてやる。
麒麟のは普通は金の色をしている。正_にはでなくて|鬣《たてがみ》なのだが、泰麒のそれは|《はがね》の色をしていた。普通の麒麟でない|^《あかし》だが、それが特e尊いことのように思われてならない。
「水を浴びておいでなさい。すぐに|夕A《ゆうげ》ですよ」
麒麟は女仙よりはるかに高位の生き物だった。それでも世をすれば自分の子供のような荬するから、自然口{はくだけてしまう。女仙の|L《おさ》である|碧霞玄君《へきかげんくん》でさえそうなのだから、彼女たちを|咎《とが》める者がいるはずもなかった。
「幸い、着替えはここにいくらでもある。ここがすんだらお迎えに参じましょう」
「うん」
うなずいて泰麒は立ちあがる。
「汕子、行こう」
泰麒の手を引いてiいていく汕子を、|女仙《にょせん》たちは目をめて送る。
「一番の泰麒びいきは、汕子だね」
「まったくだ」
うなずきあったが、悔しいわけではない。女仙とはちがい、汕子は泰麒だけのものだ。それをiきにしても、起こる荬摔悉胜欷胜ぁ1伺たちは\がいい。ちょうど|夕A《ゆうげ》の前に泰麒に会えた。食事の直前に会えたものが、泰麒の食事に|相伴《しょうばん》する。それが最近できた蓬山での新しい|不文律《ふぶんりつ》だったので。
4
乾いた衣をたたみ、まだ射しの|觥钉摔》いと|茉莉花《まつりか》の訾い韦工耄泰麒《たいき》のひとそろいだけをeにして、蓉可たちは川へ向かった。
|露茜m《ろせんきゅう》に近い|Y《ふち》に向かう小道を曲がったとたんに、澄んだ笑い声がこえてきた。
Yでは泰麒が|汕子《さんし》の尾を追って、もぐったり浮かんだりをくりかえしている。高く|鳌钉か》げた尾を捕まえそこねて水に倒れこんだ泰麒は、水面にを出すなり、蓉可たちに荬扭い剖证蛘瘠盲俊
「お迎えに参じましたよ」
「ありがとう」
女仙のひとりが岸に布を冥菠搿Kから上がった泰麒がその上に立つと、eの女仙が|腕《うで》に冥菠坎激切?丹剩身体《からだ》を包みこんだ。
「自分でするよ」
「泰麒は背中を濡れたままにするから、だめです」
言い放って彼女は白いからだから水滴をぬぐっていく。泰麒は自分のことを他人にしてもらうのをすまながるが、要はlもが泰麒に触れていたくてたまらない。
さらにeの女仙がひとそろい着せてやって、蓉可がをふいてやった。
「もう、だいじょうぶ」
「まだから|滴《しずく》が落ちていますよ」
泰麒は布のgからこぼれおちた自分のをつまんだ。それは\ともyともつかない奇妙な色に渖してしまっている。
「がLすぎない?」
「まだ短いくらいです」
泰麒はきょとんと蓉可を上げる。
「伸ばさないと、いけないの? 女の子みたいに?」
「伸びるのがとまるまで、伸ばすのが普通なんだそうですよ。そろえるぐらいはしますけどね」
「切っちゃ、だめなの?」
「|洹钉皮螭冥蟆筏筏郡趣にみっともないお姿でいたいのなら、お好きにどうぞ」
「……洌俊
蓉可はあらかた水荬颏ったを|梳《くしけず》ってやる。
「泰麒は|麒麟《きりん》ですもの。麒麟の形になることができるんですよ」
「キリンの形、って。それ、游铯违リンのこと?」
「そうですよ」
泰麒は考えてしまった。
自分はgはキリンなのだとはいていたが、「キリン」とはgに木のgから生まれた人gのことだと思っていた。蓉可のいまの言~からすると、どうもそればかりではないらしい。
「ぼくは、gは游铯胜危俊
これはちょっと困惑する事Bだった。人だって游铯我环Nなのだけど、少しばかり意味がちがう。
「そうですとも」
「いつか会った、|廉台o《れんたいほ》も?」
「もちろんです」
泰麒はさらに困惑してしまった。
|狼男《おおかみおとこ》のようにキリンに渖恧工毪韦しら。狼になるのはそんなに浃扦悉胜荬するけれど、キリンになってあんなふうに首が伸びたりするのは浃莘证するにちがいない。
──このr点で、泰麒は麒麟という生き物をまだ勘ちがいしたままだった。
|微笑《わら》って泰麒と|女仙《にょせん》たちを守っていた|l《ていえい》は、すっかり困ったをしている泰麒に荬扭い啤ああ、とつぶやいた。
「泰麒は浃筏郡长趣ないんで、よくわからないんですね。──麒麟のは、あたしたちのとはちがう。それは|鬣《たてがみ》ですから」
泰麒はうなずいた。たしかにキリンには鬣がある。
lは泰麒を手招きして、~の中央、|生《は》えぎわに近いあたりにそっと触れる。なにかひどく|嫌《いや》な荬、落ち着かないような不安なような感じがした。
「──ここにほんのわずか、盛りあがったところがある」
言われてあわてて指で探った。_かに、なでるとわかるていどの小さな盛り上がりがあった。
「これが|角《つの》。角は|麒麟《きりん》にとって、特eだいじな鏊だから大切にしないといけません。いま、嫌な感じがなさったろう? 触られるのが嫌な荬」
「……ちょっとだけ」
「o理をなさることはないんですよ。麒麟は角に触れられるのが|嫌《きら》いな生き物なんですから。大きくなれば、もっと嫌になります。ぜったいに触らせないようになる。たとえそれが汕子でもね」
──そういえば、と泰麒は思う。自分はそもそも~をなでられるのが好きではなかった。それが母Hでも、なんとなく逃げたい莘证したものだ。
「じゃあ、やっぱりぼくはキリンなんだ」
「もちろんです」
蓉可は|呆《あきれ》れたように口をはさんだ。
「|洹钉皮螭冥蟆筏工欷小はっきりわかりますよ、きっと」
「洹って、どうやってするの?」
泰麒にわれて、蓉可は首をかしげた。
「そうですねぇ。生まれたときからずっと|蓬山《ほうざん》で育っていれば、なんとなくわかるんでしょうけれど。うまれたときから、あるていど大きくなるまで、麒麟は麒麟の姿をしてますから。──|蓬莱《ほうらい》じゃ、麒麟でも生まれたときから人の姿をしているんですって?」
蓉可も蓬莱の事情をよく知るわけではないが、^去に蓬莱からってきた麒麟の例があるので、gでとはいえまったく知らないわけでもない。
「キリンになるのって……嫌な感じがしないのかなぁ」
「浃蛳婴る麒麟はいませんから、べつに嫌なことじゃないんだと思いますよ」
「浃袱悚胜い韦な」
「少しも浃袱悚りませんとも」
言ってから蓉可は泰麒のを指で|梳《す》いた。
「泰麒はね、普通の麒麟とは少しちがいます。普通の麒麟は、|廉台o《れんたいほ》のように金の|鬣《たてがみ》をしているものですから。泰麒は\麒麟なんですって。\麒麟は珍しいんだそうですよ。……早く蓉可にもせてくださいまし。鬣の色がこんなにきれいなのだから、きっとおきれいでしょうね」
「でも、どうやってなるのか、想像もつかない」
「でしょうね……」
蓉可は息をつく。
「あたしにも、想像もつきません。あたしは|麒麟《きりん》じゃないし、だから|洹钉皮螭冥蟆筏筏郡长趣胜螭皮胜い扦工猡巍)ぉい猡筏C会があれば、|玄君《げんくん》におきしておきましょうね」
「うん……」
まだどこか然としない|子《ようす》でうなずく泰麒をつめながら、lは内心で眉をひそめた。十年ものLいg、人として暮らしてきた泰麒がはたして浃扦るのだろうか。浃筏胜麒麟はいないが、もしもその最初の例になれば、それはかなり|不《ふびん》なだ。
|玉~《ぎょくよう》にけばわかるのだろうが、|肝心《かんじん》の玉~には会いたくて会えるものではない。しかも、泰麒にはもうあまりrgがなかった。
lはなにごとかを言って笑いあう泰麒と蓉可からをそらし、不安な莘证悄氦欷悉袱幛靠栅蛞あげた。
幸い春分は^ぎたが、|夏至《げし》には_gに人がNってくる。
──浃扦ない不完全な麒麟が、王をxぶことができるのだろうか。
四章
1
|泰麒《たいき》はとぼとぼと小道をiいていた。目的があってiいているわけではないし、だから道の子などてはいなかったが、|汕子《さんし》がいれば道に迷うことはありえない。そもそも、泰麒だって自分が住む|露茜m《ろせんきゅう》の周x以外は、まったく道などわかりはしないのだ。
あてもなくiいているうちに、ふいに小道の先に行く手を|遮《さえぎる》るTがえた。扉はぴったり]ざされて、完全に道を遮断している。
これが|蓬]m《ほうろぐう》の果てだった。露茜mからここまでは、まっすぐに来ても相当のrgがかかるはずだが、それでは@くぐらいLいg、自分は物思いに沈んでいたらしい。
「・・・・・・・・・・・・」
泰麒は|溜《た》め|息《いき》をついた。Tには内趣耍V《かんぬき》があるばかり、_けようと思えばたやすく_けられるが、Tの外にはけっして出てはならないと、そう|女仙《にょせん》たちに教えられていた。
そのままひきかえす荬摔猡胜欷骸⑻麒は背後を振りかえる。o言で後をついてきていた汕子に向かって手を伸ばした。
「汕子、上にBれていって」
汕子はうなずいて、泰麒を抱き上げる。普通の女ならそれが困yなほど泰麒はもう大きいが、|蓬山《ほうざん》にって以来かけほどの重さはない。|仙骨《せんこつ》とかいうものがあって、泰麒はうんとXいのだ。それで汕子は苦もなく泰麒を抱きあげて、Xく岩壁を|蹴《け》ると奇岩の上に向かって|l《か》けあがった。
岩の上からおろした蓬]mは迷路そのものだった。
ところどころに|碧《あお》くxいてえるのは数々のmの屋根、迷路の奥には白い木の枝が射しを受けてxいてえる。
泰麒は汕子に抱き上げられたまま、しばらくその方角を眺めた。
上からた蓬]mは扇状をしている。もっとも奥の|の高台に|紊砟尽钉筏悚筏螭埭》があって、その先はない。切り立った断崖で、どれほどあるかわからない段差の下には、人がiくことさえ困yなほど}jな奇岩地?果てもなく冥っているのだ。
その高台を突端に、迷mはごくゆるやかに下りながらその幅を冥菠皮い。o数にある枝道は堂々めぐりをくりかえしながら、やがてひとつの小道に束し、その道が唐突にTで区切られて、それが迷mのKわりなのだった。
迷mの北はしい峰だった。~壁を作り、|尖塔《せんとう》を作りしてはるかな高みへlけのぼる山は、汕子といえども|登攀《とうはん》がむずかしい。
|を断崖に北を~壁に守られて、蓬]mをたずねるにはTをiけ、}jOまりない迷路を正しくiけるしかないようになっている。
──そして、と泰麒は汕子の|腕《うで》を下りて奇岩の上に立ち、背後を振りかえった。
迷mの外、南と西にはさらに下りながら、诖螭拭月筏Aいていた。
外の迷路と内の迷路は}jに入りMんで、こうして上からおろしていても、どこまでが内でどこからが外なのか分けることができなかった。
外の迷路は内の迷路に比べて、はるかにiみ解くことがやさしい。道幅も冥、あちこちに点在する訾猓桁《けた》`いに冥ぁ¥てずっぽうにiいても太の位置さえ|把握《はあく》していれば、ここまで来るのはそうyしいことではないだろう。
そう思いながら渡して、泰麒はかなりxれたところにある奇岩の|麓《ふもと》に、|翠《みどり》の|釉a《うわぐすり》のxきをつけた。
「汕子、あれはなに?」
指さすと、汕子もまた真窑文郡颏饯沥椁叵颏堡搿
「|甫渡m《ほときゅう》……」
「Tの外にもmがあるの?」
「xmでございます」
「……ふうん」
泰麒は奇岩の上に腰を下ろした。
しばらくvの迷mに入る。奇岩の上には|疾《はや》いLが吹いていた。わたすかぎり、海などなさそうなのに、潮の|觥钉摔》いがした。
「……どう、なさいました?」
しばらくLに吹かれていたら、汕子がそっとうてきた。汕子がこんなふうにしかけてくることはまれだから、よほど考えこんでいたのだろう。
泰麒はふと、外の迷路をたどっていたを上げて汕子をた。
「汕子は|洹钉皮螭冥蟆筏筏皮饯Δいψ摔颏筏皮い毪危俊?饯欷趣狻⒆畛酩らそういう姿なの?」
汕子は泰麒の^をやんわりとなでる。
「|女怪《にょかい》は浃い郡筏蓼护蟆\浃扦るのは、その力が|こ!钉袱螭袱绀Α筏扦悉胜いらです」
「……ふうん」
「姿を浃à毪长趣稀㈦yしいことなのです。|妖魔《ようま》のなかにも|化《てんげ》するものがおりますが、そういった妖魔は王の手にも余るほど魔力|甚大《じんだい》なもの」
「妖魔?」
「|妖《あやかし》の技を持ち、天の秩序に兢铯踏猡韦蜓魔と呼びます」
「女怪も妖魔?」
汕子は首を振った。
「女怪は人と妖のちょうどgに位置するもの。|人妖《にんよう》とも|妖人《ようじん》とも申します。蓬山で生まれた女だけを特eに女怪と呼びますけれど」
「じゃあ……|麒麟《きりん》は妖?」
汕子は泰麒にだけそうと知れる表情で笑った。
「妖の技を持つなのは_かでございますが。──いいえ、麒麟を妖とは呼びません。麒麟は神と申しあげるのですよ」
「どうして?」
「この世に麒麟より尊い方は神と王だけ。……もっと正しく申しあげれば、この世に泰麒よりも身分の高いお方は、|泰王《たいおう》と|西王母《せいおうぼ》さま、天帝しかおられないのでございます」
「……よく、わからない」
汕子は何度も泰麒のを|梳《す》く。
「では、こうえていらっしゃいませ。西王母も天帝も下々には交わらぬお方。お会いすることもありますまい。……ですから、泰麒より尊いお方は泰王しかおられないのだと」
「そのほかのひとは? |玉~《ぎょくよう》さまは、ぼくよりずっと|ァ钉à椤筏い窑趣扦悉胜い危俊
「玉~、と名前でお呼びになれるのは、身分が等しいからでございます。さま、とお呼びするのは、そのほうが礼xにかなっているからです」
「yしいんだね」
「yしゅうございますか?」
「うん」
泰麒は足元のL景をおろす。しばらくLを吸ってから、汕子にいた。
「どうすれば……|洹钉皮螭冥蟆筏扦るようになるだろう」
汕子は泰麒の少し|nd《ゆううつ》そうな横にあらためて目をやった。
「それは泰麒の生まれながらお持ちの力。……必要になれば、必ず思い出されます」
「そうかなぁ……」
泰麒は目を伏せる。
このところ|女仙《にょせん》が、\|麒麟《きりん》をせてくりゃれと、はやすことが多い。泰麒にも女仙たちがいっぱいの矍椁蜃苑证俗いでくれていることがわかるゆえに、できることなら浃筏票伺たちを喜ばせてやりたいと思う。それでも、その方策がかいもく当がつかないのだった。
「お|焦《あせ》りになりませんよう。……泰麒はただ、のびのびとお暮らしになればよろしいのでございますよ」
「……うん……」
汕子の腕にをもたせかけたときだった。
甫渡mのほうの迷路に、ふたりばかりの人影がえた。
「……汕子。人がいる」
汕子もまたそちらをやってうなずいた。
「|M香《しんこう》の女仙でございましょう。甫渡mの祭に花と香を持っていったのです」
「女仙と一wにろうか、汕子」
奇岩の上から下の小道まで、泰麒には下りることさえできない。立ちあがった汕子の腕に抱かれようとした|刹那《せつな》、汕子がキッとを上げた。
「……どうしたの?」
泰麒がうた瞬gだった。汕子の姿がい|w裂《きれつ》に吸いこまれるようにして消えた。
「汕子?」
「そこをお婴になりませんよう」
声だけが──それもひどくoした声が──どこともしれぬg近からこえた。
泰麒は岩の上で|身体《からだ》を硬くする。こんなことは初めてだった。汕子がしいをするのも、あんな声を出すのも、|不思h《ふしぎ》な力をFすのも。なにか──蓬山に来てはじめて、なにかが起こったのだと想像がついた。
周欷艘を|配《くば》りながら、泰麒は我しらず息をひそめる。く|尖《とが》った岩にしがみつきながら、消えた汕子がどこかにえないものかと、伸ばした首になにかがかすめた。
「……え」
なにかがの横をかすめてwんできたのだとはわかった。
次いで、岩にすがったI手になにかがきついたのも感じた。ふいにい力でI手を引っられ、奇岩の点から外へ向かって体がAくのを感じた。
わずかの一瞬に泰麒の目は|捕《と》らえた。自分のI手にきついたい|i《くさり》と、その先についた重り。
身体が宙に投げ出されてゆく。
──何者かによって、岩からひきずり落とされたのだ。
2
「|捕《つか》まえたぞ!」
高らかに、野太い声が|《ひび》いて、それにきょとんと目を_いた。
岩の上から落して、出てはならないといわれていた外に出てしまったことは、一瞬のうちに思い出した。なぜ落したのかを、もう一度|反c《はんすう》しようとしたときに、太い押しした叫びがこえた。|寝《ねころ》んだままを向けると、薄い色の空に点々と赤い|w沫《しぶき》が散るのがえた。
(……血みたい)
思った瞬g、すっと泰麒の体温が下がった。一瞬のうちに身体が|觥钉长》りついた。
|蓬山《ほうざん》に来てからは、思い出すC会のなかった自分の|性癖《せいへき》を思い出した。
──だめなのだ、どうしても。
自分が|怪我《けが》をしてもそんなには感じないのに、他人が怪我をして血を流しているのをると、|怖《こわ》くて怖くて息が止まりそうになる。
目を]じたかったが、|《まぶた》