[分享]:十二国シリ`ズ 月の影 影の海 下

十二国シリ`ズ 月の影 影の海
小野不由美

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【テキスト中にFれる号について】

《》:ルビ
(例)漆\《しっこく》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する号
(例)|漆\《しっこく》の|《やみ》だった。

[#]:入力者注 主に外字のh明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のペ`ジと行数)
(例)

/\:二倍の踊り字(「く」をkにLくしたような形のRり返し号)
(例)
*岬愀钉の二倍の踊り字は「/″\」

〔〕:アクセント分解された欧文をかこむ
(例)
アクセント分解についてのは下URLを参照してください
http://aozora.gr.jp/accent_separation.html
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   月の影 影の海(下) 十二国


   五章(承前)


   1

 い糸を|撒《ま》いたようなに雨は降る。
 婴こともできず、泣くこともできず、たたぼんやりと|水溜《みずた》まりに|]《ほほ》を浸していると、突然背後でガサガサと|下生《は》えをかき分ける音がした。身をLしたほうがいいのだろうとは思ったが、首をあげることさえできなかった。
 村人か、か、|妖魔《ようま》か。いずれにしてもxk|肢《し》がえるだけで、Y果がえるわけではない。捕らわれるにしてもuわれるにしても、このままここに倒れているにしても、たどりつく先はひとつなのだ。
 |霞《かす》む目をあげて物音のほうをると、そこにいたのは村人でも追っ手でもなかった。そうして人でもない。一^の奇妙なだった。
 姿はネズミに似ている。二本の|後《うし》ろ|肢《あし》で立ちあがって、|髭《ひげ》をそよがせているさまはほんとうにネズミに似ていた。妙な感じがするのは、立ちあがったそのネズミが子供の背丈ほどの大きさもあったからだった。たんなるのようにもえないが、妖魔のようにもえない。それで|子《ようこ》はぼんやりとその不思hなネズミを眺めていた。
 雨の中でvの大きな~を笠のようにかぶっていた。|透《す》けるようなvを白く雨足が|叩《たた》いて、その白い水滴がきれいだと思った。
 ネズミはきょとんとしたように子のほうをているだけで、特に身えるようすもない。すこしネズミよりもぽってりとしていた。著色と灰色のあいだの色をした毛皮はふかふかとして、いかにも|触《さわ》ると莩证沥瑜丹饯Δ坤盲俊CKみについた水滴がなにかのりのようだ。|尻尾《しっぽ》まで毛皮におおわれていたので、ネズミに似ているがネズミとは`う生き物なのかもしれない。
 ネズミは何度か髭をそよがせて、それから二本足のままほたほたと子のほうに近づいてきた。灰茶色の毛Kみが|屈《かが》みこむ。小さな前肢が子の肩に触った。
「だいじょうぶか?」
 子ははげしく|瞬《まばた》いた。子供の声にこえたが、いてきたのはまちがいなくそのネズミだった。不思hそうな表情をして、ごていねいに首までかしげる。
「どうした? 婴堡胜い韦?」
 子はじっとネズミのを目だけで上げて、それから小さくうなずいた。人ではなかったので、すこし警戒をといた。
「そら」
 ネズミは小さな、ほんとうに子供ほどしかない前肢をさしだした。
「がんばれ。すぐそこにおいらの家があるから」
 ああ、と子は@息した。
 それが助かったことにする|安堵《あんど》なのか、失望なのかは自分でもわからなかった。
「ん?」
 伸ばされた手を取ろうとしたが、指の先が婴い郡坤堡坤盲俊%庭亥撙问证伸びる。小さな暖かい前肢が子の冷え切った手をにぎった。

 思いのほか力のある手に支えられ、小さな家にたどりついてからあとのことを、子はえていない。
 何度か目をましてなにかをたような荬猡工毪、それがなんだか思い出せるほど、はっきりとL景をつかむことはできなかった。
 深い眠りと浅い眠りを交互にくりかえしてようやく目めると、子は粗末な家のなかにいて、寝台に横になっていた。
 ぼんやりと天井をて、それからあわてて身体をおこす。とっさに寝台をwび降りて、その訾摔丐郡辘长螭馈j子の足はまったく使いものにならなかった。
 |狭《せま》い部屋のなかにはlの姿もない。まだ|目眩《めまい》のする目でそれを_Jすると、必死で|@《は》って寝台の周欷颏らためた。家具らしい家具はほとんどない。かろうじて枕元に板をMみ合わせただけの棚があってその上に、んだ布、ひとふりのiき身のと青い|珠《たま》がきちんとBえておいてあった。
 子は力をiく。なんとか立ちあがって珠を首にかけ、と布を取りあげて寝台にった。布をいてを布猡韦胜に引っぱりこむ。それでやっと安心した。
 その段になってようやく、子は自分が寝g着に着がえているのに荬扭い俊
 あちこちの|怪我《けが》もぜんぶ手当てされている。横たわった肩の下に|湿《しめ》ったものがあって、取りあげてみるとそれが水に浸した布だとわかる。置きあがったときに荬扭ぬまま落としたのだろう。それを~にのせると莩证沥瑜った。厚い布を重ねた布猡蛞っぱりあげ、珠をにぎって目を]じる。安堵の深い息を吐いた。助かってしまうと、こんなしい命でも|惜《お》しい荬する。
「目がめたか?」
 wび起きて声のしたほうをふり返ると、灰茶の毛Kみをした大きなネズミが立っていた。ドアを_けて部屋のなかに入ってくる。片手にトレイのようなものを、もう片手には|手桶《ておけ》をさげていた。
 警戒心が^をもたげた。人のように暮らし、人のようにしゃべるかぎり、のようにえても油断はできない。
 その姿を|凝《ぎょうし》する子の前で、Oするには荬扭ないようにネズミはのんきな足どりでiく。テ`ブルにトレイをのせて、|手桶《ておけ》を寝台の足元においた。
「幛悉嗓Δ溃俊
 小さな前肢が伸びる。とっさにをすくめて子が逃げると、ネズミは髭をそよがせてすぐに寝台の上に落ちた布を拾いあげた。子がしっかり胸に抱いた布包みに荬ついたはずだが、ネズミはなにも言わなかった。布を手桶に放りこみ、子のをのぞきこむ。
「莘证悉嗓Δ溃俊?胜摔食えるか?」
 子は首を横にふる。ネズミは小さく髭をそよがせてからテ`ブルの上から|住钉妞巍筏撙蛉?辘げた。
「aだ。めるか?」
 子は再び首を横にふる。油断してはいけない。それは子の生命を危にさらす。ネズミは首をかしげて、それから驻撙蜃苑证慰谠に\んだ。目の前ですこしんでみせる。
「たんなるaだ。ちょいとにがいが、めないようなシロモノじゃねえ。な?」
 言ってさしだされた驻撙颉それでも子はうけとらなかった。ネズミは困ったように耳の下の毛Kみをかく。
「──まあ、いいか。どんなものなら口に入れられる? まず|小钉》わずじゃ身体が持たねえ。お茶ならめるか? |山羊《やぎ》の乳はどうだ? それとも|粥《かゆ》ならたべられるか?」
 だまったまま答えない子に、ネズミは困ったようにためいきをついてみせた。
「おまえは三日、眠ってた。どうにかする荬胜椤そのあいだにしてらぁ。その」
 ネズミは子が抱いた布の包みに鼻先を向ける。
「だってLしてるぞ。そういうことで、おいらをちょっとだけ信用しねえか?」
 真っ\な瞳につめられて、子はようよう抱きしめたをはなす。|膝《ひざ》の上においた。
「うん」
 ネズミは鹤悚饯Δ噬で言って、手を伸ばす。今度は子も逃げなかった。小さな手先が~に|触《さわ》って、すぐにxれる。
「まだすこし幛あるけど、だいぶさがったな。落ちついて寝てろ。それともなにかほしい物があるか?」
 子は迷って口を_く。
「……水」
「水な。──よかった、ちゃんとしゃべれんじゃねえか。すぐに冷ましを持ってくるから、起きてるんなら布猡颏ぶってんだぞ」
 子のうなずくのもずに、ネズミはいそいそと部屋を出ていく。短い毛Kみにおおわれた|尻尾《しっぽ》がバランスをとるようにeれていた。

 すぐにネズミは水差しと驻撙取⑿?丹势鳏虺证盲ってきた。
 すこし幛幛冷ましがおいしかった。驻撙撕味趣おかわりをもらって、それから子は器の中をのぞきこむ。ぷんとアルコ`ルの訾いした」
「……これ、なに?」
「酒に|n《つ》けた桃を砂糖で煮たのだ。それなら食えるだろ?」
 子はうなずき、それからネズミを返す。
「……ありがとう」
 ネズミは髭を高くそよがせる。]の毛Kみがふっくりと盛りあがり、目がすこしまって笑った表情にえた。
「おいらはラクシュンってもんだ。おまえは?」
 子は迷い、それから名前だけを告げる。
「子」
「ヨウコかぁ。どういう字をくんだ?」
「荬侮、子供の子」
「子供の子?」
 ラクシュンは不思hそうに首をかたむけてから、へえぇ、とつぶやいた。
「浃铯盲棵前だなぁ。どっから来たんだ?」
 答えないのはまずい荬して、子は迷い迷いしながら答える。
「|c国《けいこく》」
「c国? c国のどこだ?」
 それ以上は知らなかったのでm当に答えた。
「|配浪《はいろう》」
「そりゃ、どこだ?」
 ラクシュンはすこしだけ困惑したように子をて、それから耳の下をかいた。
「まあ、そんなことはどうでもいいか。とりあえず寝ろ。a、めるか?」
 今度は子はうなずいた。
「ラクシュンはどういう字?」
 ネズミはもう一度笑った。
「苦SのSに、俊敏の俊」

   2

 その部屋で一日を寝てすごして、この家にはS俊しかいないようだと子は推yをつけた。
「|尻尾《しっぽ》がありゃあ、それでいいのかい。え?」
 深夜、寝台の足元に|n《あお》い|猿《さる》の首がある。
「どうせY切るにQまっているサァ。`うかい?」
 この部屋には寝台が二つあるが、S俊はここで寝ない。ほかに寝室があるとも思えないが、どこでどうやって寝ているのか、子にはわからない。
「出ていったほうがよくはねえかい? でなければ、一思いに息の根を止めるんだよ、ナァ?」
 子は返答しない。aっていていれば、|n猿《あおざる》は同じことを何度もくりかえした。
 これは子の不安だ。それを言いあばくためにこの猿は来る。ふくらんだ不安を食らうために。──きっとそうなのだろうと思う。
 するすると布猡紊悉颏工伽盲粕n猿が枕元までやってくる。小さな首が|横P《おうが》している子のをのぞきこむようにした。
「いことがおこる前に先手を打つんだ。そうしないと生き残れねえ。わかってるだろう?」
 子は寝返りをうって天井をあげる。
「……S俊を信用してるわけじゃない」
「ヘェ?」
「この状Bじゃ、婴堡胜いらしかたない。せめてをにぎれるようになってから出ないと、出て行ってもみすみすバケモノの|D食《えじき》になるだけだ」
 流石に右手のが深い。一日|珠《たま》を当てていても、まだ握力がらない。
「奴はおまえが|海客《かいきゃく》だと荬ついているかもしれねえぜ? そうのんきにかまえてていいのかい。いまにも役人が踏みzんでくるかもなァ?」
「だったらにものを言わせるだけだ。役人の四、五人ていどが踏みzんできたって、きりぬけられる。それまでは利用させてもらう」
 ──ここには子の味方などいない。
 だが、いまは切gに助けが必要だった。せめてをにぎれるようになるまで。もうすこし体力がるまで。それまでは、安全な寝床と、食べ物と、aが必要なのだ。
 S俊が长胜韦长扦胜い韦わからないが、少なくともネズミは子に必要なものを提供してくれる。长扦ることがはっきりするまでこの状Bを利用する。
「に毒は入ってないか? aはほんとうにaなのかヨォ」
「用心はしてる」
「Yをかかれねえと言い切れるのかい」
 n猿は子の不安を言いあばいていく。それにいちいち答えていくのは、自分になにかを言いきかせる作Iに似ていた。
「eO的にわたしになにかをする荬あるのなら、意Rのないあいだになんでもできた。いま食事の中に毒なんか入れなくても、すチャンスはいくらでもあった」
「なにかを待ってるのかもなァ? 援かなにかをサァ」
「だったら、それまでにすこしでも体力をたくわえておく」
「とりあえず信用させて、それからY切る|肚《はら》かもなァ」
「だったら、S俊の意恧えるまで信用したふりをしておく」
 猿はいきなりきゃらきゃらと笑った。
「性根が座ってきたじゃねえか、え?」
「……さとった」
 この世界に子の味方はいないのだということ。行く鏊も、る鏊もないのだということ。自分がいかに|独《ひと》りかということ。
 それでも生きのびなければいけない。味方も、生きる鏊もない命だからこそ、心底惜しい。この世界のすべてが子の死をねがうなら、生きのびてみせる。もといた世界のすべてが子の⑦をのぞまないなら、ってみせる。
 あきらめたくない。どうしてもあきらめられない。
 生きのびて、ケイキを探し、必ずあちらにる。ケイキが长扦馕斗饯扦忾vSない。长坤趣いΔ胜椋{《おど》してでも、もといた世界にしてもらう。
「ってどうする」
「それは、ってから考える」
「ひとおもいに死んだほうがよくはねえかい」
「lも惜しまない命だから、自分だけでも惜しんでやることにしたんだ」
「──あのネズミはY切るぜ」
 子は猿を返した。
「わたしはS俊を信じてないから、Y切りようがない」
 もっと早く荬扭堡肖瑜ったのだ。子は海客だ。だから狩られる。海客には味方などいない。この世界のどこにも居鏊などない。それさえちゃんとわかっていたら、|_姐《たっき》にも|松山《まつやま》にも、うかうかとだまされたりしなかった。おめでたくも信用してY切られることなどなかったのだ。信用したふりで相手を利用し、生きのびる方策を立てることができたはずなのに。
 利用できるものは利用する。それのどこがい。_姐も松山も子を利用して小金を|稼《かせ》ごうとした。だったら、子がS俊を利用して命をつなぐことに、なにをはばかることがあるだろう。
「りっぱな党になれそうだなァ。エェ?」
「それも、いいかもしれない」
 つぶやいて、子は手をふる。
「眠い。──れ」
 猿は奇妙なをする。なにか|苦《にが》いものをこらえているような表情だった。そのまま後ろ^をせて、ふいと布猡蜗陇松颏撙长啶瑜Δ摔筏谱摔蛳した。
 それを守ってから、子は薄く笑う。
 あれは子の、自分でも感じていなかったような不安まで言いあばいてくれるから、自分の莩证沥蛘理するのに役立つ。──利用できる。
「たしかに、りっぱな党になれそうだ……」
 Xい|自嘲《じちょう》の笑みがもれる。
 それでも、二度と他人に利用されるのだけはごめんだ。二度とlにも自分に危害はくわえさせない。かならず、自分を守ってみせる。
「だから、あれでよかったんだ」
 山道で出会ったH子。子がH子にY切られることがなかったのは、H子にY切る|隙《すき》を与えなかったからにほかならない。
 ──そしてその隙を、S俊にも与えないことだ。
 そうすれば生きのびることができる。
 どうして子はこんな世界に来なければならなかったのか。なぜケイキは子を|主《あるじ》と呼んだのか。长趣悉嗓Δい长。长文康膜悉胜螭恰なぜ子を狙うのか。あの女は──ケイキと同じ金のの、あの女はなにもので、なぜ子をuったのか。
 ──妖魔は特定のlかを狙ったりしない。
 だったらなぜ、子がuわれたのか。\い犬の|死骸《しがい》をあの女は抱いた。死を|悼《いた》んでいるようにえた。だとしたら、あれはあの女の仲gだったのか。ケイキのまわりに妖魔がいたように、あの女のまわりにも妖魔がいて、それに子をuわせたということだろうか。しかしながら、あの女もまたlかに子をuうよう命じられているようではなかったか。では、命じたのはlだろう。ケイキもまた、lかに命じられて子にかかわったのだろうか。
 わかることがなにひとつない。わからないままではいられない。だから、かならずlかに答えてもらう。
 o意Rのうちに|拳《こぶし》をにぎると、のびた|爪《つめ》がてのひらにくいこんだ。
 子は手をあげて自分の指先をしみじみとる。
 折れて欠けた爪は利な形をしている。魔物の爪のようだった。
 ──|虚海《きょかい》を渡れるのは妖魔か|神仙《しんせん》だけ。
 子は神でも|仙人《せんにん》でもない。
 ──では妖魔か。
 虚海の岸で赤いに浠していく簸蛞た。あれはほんとうに簸坤盲郡韦坤恧Δ?
 こちらに来る前、子はLいあいだ妖魔にuわれる簸蛞ていた。そうして、その簸犀Fgになった。──だとしたら。
 になる簸猡蓼俊⒂柚でないといいきれるのだろうか?
 赤く浠したも、|n《あお》く浠した目も、ぜんぶに浠していく一段Aだとしたら? 子はgは人gではなく、妖魔だったのだとしたら。
 それはひどく恐ろしいことに思え、同rにひどく|愉《たの》しいことに思えた。
 怒Qること、叫ぶこと、をふるい、他を威Rすること。そこには奇妙な高P感がひそんでいる。子は生まれた世界で、声をあらげることもなく、他をにらむこともなく生きてきたし、それをなにかの罪のように思ってきた。それは本当は、自分でもわかっていたからではなかったろうか?
 子自身のo意Rが、子は妖魔であり、|猛々《たけだけ》しいであることを知っていて、それではあの世界で生きていけないことをわかっていて、o害な生き物のふりをしようとしたY果ではなかったか。
 だからこそ、lもが子を「|得体《えたい》が知れない」と言ったのかもしれない。
 ──そんなことを考えながら、眠りに落ちた。

   3

 家は田@地?摔りがちの、ごく小さなしい建物だった。こちらの住居はだいたいしいたたずまいをしているが、そのなかにあってもこの家が|鳌钉铯印筏筏げ款に入ることが子にもわかる。
 |田圃《たんぼ》のなかにある家はふつう何かの家と集落を作っているものだが、この家は珍しく一家のようだった。山の斜面にある家の近くにはほかの家はえない。
 ネズミの家だといえば小さな家を想像しそうだが、模こそ小さいがサイズはごく普通の建物だった。建物だけでなく、家具から日用品から、ぜんぶが人gのサイズにあっているのが不思hな荬、子にはする。
「S俊、ごIHは?」
 ようやく起きて婴ことができるようになって、子はS俊を手护盲疲^《かまど》の大きなに水を|注《さ》しながらきいてみた。|桶《おけ》をささえる右手にはまだ包?いているけれども、その下のはすでにほとんどふさがっている。
 ^に|薪《まき》を放りこんでいたS俊は子をふりあおいだ。
「父ちゃんはいねえ。母ちゃんは出かけてる」
「旅行? ずいぶんLいね。hく?」
「いんや。近くの里まで。ちっと仕事があってな。|一昨日《おととい》にはってくるはずだったんだが、ってこねえとこをるとこきつかわれてるんだろ」
 では、母Hがすぐにもってくるかもしれない、と子は心のなかにきざんでおく。
「お母さんの仕事は?」
「冬のあいだは女中だな。普段は小作r。夏でも呼ばれりゃ、j用をしにいく」
「そう……」
「子はどっかに行く途中だったのか?」
 われて子は少し考える。どこかに行こうとしたわけではない。ただiいていたのだとは言えなかった。
「……ケイキという人を知らない?」
 S俊は毛Kみについた木屑をBった。
「人探しか? そいつは、このxの人gか?」
「どこの人だかはわからない」
「荬味兢坤、おいらにゃケイキなんて知り合いはいねえな」
「そう。──ほかにすることは?」
「ない。病みあがりなんだから、|座《すわ》ってな」
 言われるまま、子はだるい身体を|椅子《いす》にあずけた。
 小さなダイニング・キッチンの床はむき出しの土で、置かれたテ`ブルも椅子も、ぎしぎしいうような古い品物だった。
 子が座ったOの椅子には布でくるんだがおいてある。片rもxそうとしない子を、S俊はe段とがめなかった。それがどういう思考によるものかはわからない。
「子はどうして」
 S俊はつややかな毛Kみの背中をせたまま子供の声でいてきた。
「男のナリをしているんだ?」
 寝g着に着がえていたので、バレているだろうとは思ってはいた。
「……ひとり旅は危だから」
「そうか。そうだなぁ」
 言って土瓶を持ってくる。なにかを|煎《せん》じたらしい芳香が狭い部屋にたゆたった。[#入力者注:「たゆたう」はこういう龊悉耸工Δ韦な?]驻撙颏栅郡摹テ`ブルの上に出してネズミは子をあげた。
「どうしてそのには|鞘《さや》がねえんだ?」
「……なくした」
 答えながら鞘をなくしたことをいまさらながら思い出した。|虚海《きょかい》を渡るときにと鞘とをxしてはいけないといわれたが、鞘をなくしたことが原因でなにかの碾yが降りかかってくる菖浃悉胜ぁ¥浃悉辘れは、|珠《たま》をなくしてはいけないという、そういう意味だったのだろう。
 ふうん、とつぶやいてS俊は椅子によじ登る。その幼鳏嫌驻ぷ庸─耍酷似《こくじ》している。
「どっかで鞘をあつらえてやらねえと、せっかくのが|《いた》むぜ」
「……うん。そうだな」
 荬韦胜どで答える子を、S俊は真っ\な目であげた。ちょっと小首をかしげる。
「子は|配浪《はいろう》から来たって言ってたよな」
「……そう」
「それは|c国《けいこく》じゃなく、|h《しんけん》の|のほうにある村のことじゃねえのか?」
 そういえば、そんな鏊だったかと、子はぼんやり思いながらだまっている。
「あのあたりで大きな|g《しょく》があったんだってな」
 これにも子はだまっていた。
「|海客《かいきゃく》が打ちあげられて、逃げたとか」
 子はS俊をにらむ。o意Rのうちに手が伸びてをつかんでいた。
「なんの、」
「十六、七の女で、|t《あか》いをしてる。を持ってるんで注意が必要。には|鞘《さや》がない。……子はを染めてるだろ」
 |柄《つか》をにぎって、をただS俊に注ぐ。ネズミの表情はiみとれない。そもそも人gよりは数段とぼしい。
「役所からそうBjがきた」
「……それで」
「そんな|怖《こわ》いすんなって。突き出すつもりなら、役所の人gが来たときに突き出してらぁ。大枚のp金もついてたことだしな」
 子は布をほどく。立ちあがってiき身のを|晒《さら》した。
「なにが目的」
 ネズミはただ真っ\な目で子をあげて、糸のような|髭《ひげ》をそよがせる。
「短荬逝だなぁ」
「わたしを|匿《かくま》った目的はなに」
 ネズミはのほほんとしたしぐさで耳の下をかいた。
「目的、って言われてもなぁ。行き倒れになりそうな奴をほっとけねえだろ。だからめんどうみたし、めんどうをみた以上、やっぱ役所に突き出す荬摔悉胜欷亭à袱悚亭à」
 そんな言~をうのみにはしない。たやすく人を信用すれば必ず|後悔《こうかい》するとわかっている。
「海客は役所に送られる。そこで待ってるのは良くて禁だし、けれりゃ首を|刎《は》ねられる。どっちかってぇと、子は後者だろうな」
「なぜ、そう思う」
「浃市gをつかうんだろう? o送されるところを妖魔にuわせて、そんで逃げたってじゃねえか」
「あれはわたしがやらせたわけじゃない」
「だろうな」
 ねずみはあっさりうなずいた。
「妖魔がそうそうgに人に兢Δい。子が呼んだんじゃなくて、子を|狙《ねら》ってきたんだろう。ちがうかい」
「……わたしには、わからない」
「それにしても子はやっぱりい海客だろうな。妖魔に狙われるような人gだからな」
「……それで」
「h丐怂亭椁欷欷惺中八九命がねえ。逃げるのは当然だが、どこへ逃げればいいのかわかってるのか?」
 子は答えなかった。
「わかってねえんだろう。こんなところわうろついているようじゃな。──エンコクに行きな」
 子はまじまじとS俊のを返した。ネズミのにはなんの表情もない。少なくとも子にはiみとることができなかった。
「……どうして」
「人がされるのを^しにできるかい」
 言ってS俊は笑った。
「死刑が当然の党に同情するほどおいらだっておひとよしじゃねえ。だが、海客だってだけでされちゃあ、たまらんだろ」
「い海客なんでしょう」
「役人はそう考えるだろうってだ。海客に良いもいもあるもんかい。珍しいものは菸钉いような荬するだけだろ」
「い海客は国を绀埭工盲啤
「迷信だ」
 あっさりと言った口{にかえって警戒心がわいた。同じように迷信だといった人がこの国にいた。それは人gの女だったけれども。
「それで? そのエンコクとやらに行けば、助かるわけ」
「助かるさ。エンコクの王は海客を|E《うと》まない。あそこじゃ海客もほかの人gと同じように生活してる。海客に良いもいもない^だろ。だから、エンコクに行くのがいいと思う。──その|物X《ぶっそう》なもんをしまいな」
 子は、ためらい、ためらい、とりあえずをおろした。
「座んなよ。茶が冷めるぜ」
 言われてようやく子は椅子に座る。S俊の意恧わからない。海客であることがばれた以上、早々にここを出ていったほうがいいのだろうが、せめてエンコクについてしい情螭ほしい。
「このあたりの地理がわかるかい」
 子は首を横にふった。S俊はうなずき、驻撙虮Гà埔巫婴蚪丹辘搿をにぎったままの子の足元まできて、土gに|屈《かが》みこんだ。
「ここは|安《あんよう》h、|鹿北《かほく》ってところだ」
 S俊はgな地恧蛲沥紊悉嗣瑜い皮い。
「ここが虚海、hはここ。配浪ってのはこのあたりらしいから、子は南西、つまり|巧国《こうこく》の中央へ向かってiいてきた案配になる。逃げるんなら巧国を出なきゃならないのに、これじゃ逆だ」
 子は地恧蜓}jな莘证且おろした。これを信じていいのか。地恧韦嗓长に|嘘《うそ》がないか。疑いながらも、くいいるようにつめる。これが今もっともほしい情螭坤盲俊
「西Oが|北梁《ほくりょう》h、これをまっすぐ西に向かうと|青海《せいかい》てぇ内海に出る。青海を渡った岸が|雁国《えんこく》だ」
 S俊の小さな指が略恧取Ⅲ@くほど_者な文字をいていった。
「まず、北梁を目指せばいいんだな……」
「そうだ。最K的に|阿岸《あがん》てぇ港につけばいい。阿岸からは雁国へ船が出てる」
「……船」
 船が使えるだろうか。港をOされていたら、みすみす|W《あみ》のなかにwびこむようなものだ。
「だいじょうぶだ」
 子の独白を透かしたようにS俊は笑う。
「hから巧国の外に出るには、まっすぐ北に行って山越えしてc国へ出るのがいちばん早い。役所のB中もまさかこんなところへは来ないだろうが、と言ってたしな。道をg`ったのが幸いしたんだ。手配がまわっているが、赤毛の若い女、とある。そのめだつさえなんとかすりゃあ、そうそうばれやしねえだろうよ」
「……そう」
 子は立ちあがった。
「ありがとう」
 S俊はキョトンと子をあげる。
「おい。まさか今から出かける荬い」
「急ぎたいから。世になってばかりでいけど」
 S俊もまた立ちあがる。
「待ちな。よくよく荬味踏づだなぁ」
「でも」
「雁国に言ってそれから、どうする。手当たりしだいに人を捕まえて、ケイキって奴をい亭iくのかい。船の\り方はわかるのか、雁国に保oを求める方法はわかるのか?」
 子はをそらす。目的地が定まっただけでもこれまでの旅に比べれば格段に先行きがひらけたような荬していたのに、それでもなお\り越えなければならない困yがこんなにある。そうしてこれはおそらく、gHに直面する困yの何十分の一にも氦郡胜い韦摔沥いない。
「なにごとにも浃盲皮猡螭あらぁ。そう焦るな。ここで焦ったところで、後になって行きまる。な?」
 子は^を下げた。心のどこかで|F《わな》を恐れる自分がいるが、とりあえずここではS俊をmりにするしかないのだ。
「そんじゃ、にするか。とにかく体力をつけろよ。阿岸まではひと月はかかるんだからな」
 子はもう一度^を下げた。
 少なくとも、体力が完全にるまで。それまでにはS俊の意恧夥证るだろう。gにおめでたいのか、それとも深い策略があってのことか。雁国に──阿岸に、行かねばならない。それを知られている以上、S俊の真意だけは届けないわけにいかないのだ。

   4

「ずいぶん大きな|g《しょく》だったんだって?」
 S俊は昼食のあとかたづけをしながら言った。
「……|配浪《はいろう》のL老はそう言ってた」
「|《しん》の|一?稀⒔衲辘温螭全绀坤趣怠¥わいそうなだ」
 子はただうつむく。胸のどこかがわずかに痛んだ。
「子がしょげることはねえ。eに子のせいってわけじゃねえんだから」
「しょげてるわけじゃない」
 |^《かまど》の灰をき出しながら言った子の手をかるく叩いたのは、短い毛Kみにおおわれた|尻尾《しっぽ》だった。
「|海客《かいきゃく》が来るからgが起こるわけじゃねえ。gが起こるから海客が来るんだ」
 子はS俊に言われたとおりに木箱のなかに灰を落としこむ。燃え残った木屑を拾いあげてべつの箱に入れた。
「いてもいいかな」
「なんだ?」
「gって、なに?」
 工韦瑜Δ胜猡韦坤扰淅摔伍L老にいたが、gHにどういうものだかはよくわからない。
「ああ、gもわからねえか。あっちにはgがねえんだな」
「日g、とか月gならあるけど」
「似たようなもんだ。べつに太が欠けたり月が欠けたりはしねぇけどな。そうだな、工撙郡い胜猡螭な。工峡荬乱れるが、gは荬乱れる」
「雨が降って、Lが吹いて?」
「そういうこともある。たんに工韦瑜Δ舜箫Lが吹くもあるが、そういうgはたいしたことがないな。地震があったり雷がQったり川が逆流したり、いきなり地面が沈んだりする。いろんな天涞禺がいっしょくたにくると思えばまちがいないかな。配浪じゃヨウチって湖の底が盛りあがってあふれたとよ。もう湖はE形もねえそうだ」
 子は灰を落とすために洗っていた手を止めた。
「そんなにしい暮Δ胜危俊
「ものよるけどな。おいらたちは工瑜辘衔gが怖い。gはなにがおこるかわからなねえから」
「どうしてそんなことが」
 S俊は真なで、大仕事をする手つきでもってお茶を入れている。
「gってのは、あっちとこっちが重なって混じっちまうことを言うんだそうだ。本来ならe々のものが重なるから、暮Δ摔胜搿¥瑜はわからねえけど、そういうことなんだと思うぜ」
「あっちとこっち……」
 この家で出されるお茶はv茶のような色をしている。それでもぜんぜん訾いちがう。味は口あたりのいいハ`ブティ`に似ている。
「あっちというのは、|虚海《きょかい》の向こうのことだな。こっちは、こっちだ。名前なんかねぇ」
 子はうなずいた。
「虚海はを取りいている。虚海の先にはなにもない」
「なにも?」
「そう、なにも。行けども行けどもえんえんと虚海がAいていて、果てがない。少なくともそう言われているな。物好きな奴が果てをてこようってんで船を出したこともあったらしいが、ってきた奴はいないそうだ」
「じゃ、こちらは大地が平らなんだ」
 S俊は椅子によじ登りながらきょとんと子をた。
「地面が平じゃなかったら、みんな困るじゃないか」
 あきれたような声がすこし笑えた。
「……こちらの世界はどういう形をしているんだろう」
 S俊は、テ`ブルの上にあった|胡桃《くるみ》を手に取って置いた。
「世界のまんなかにスウサンがある」
「スウサン?」
「|崇高《すうこう》な山、とくな。ほんとうに崇高と呼ぶこともある。|中岳《ちゅうがく》とも|中山《ちゅうさん》ともいう。その四方には|西南北の山がある。||岳《とうがく》、とか||山《とうざん》とかいうが、|西南北をそれぞれ|蓬《ほう》山、|A《か》山、|霍《かく》山、|恒《こう》山と呼ぶのが普通だ。|岳は昔は|泰《たい》山といった。北の国、|戴国《たいこく》の王が号を|代《たい》から泰《たい》にあらためたので泰王をはばかって蓬山と呼ぶようになったといてるな。この五つの山が五山だ」
「へぇ……」
「この五山の周欷耍黄海《こうかい》がある。海といっても、水のある海じゃねえ。荒れた岩山と砂漠、沼地と浜¥坤盲圃だ」
 S俊の指が描いていく文字を子は守る。
「たことはない?」
「あるわけがねえ。黄海の周欷颏丹椁|西南北の|四金《しこんごう》山が取りいている。金山の内趣稀⑷摔巫?嗍澜绀扦亭ā
「そう……」
 まるでなにかでた古い地恧韦瑜Δ实匦韦馈と子は思った。
「金山の周欷嗡姆饯怂膜膜文诤¥あって、さらに八方を八つの国が取りいてる。その周欷虚海だ。にうんと近いところに四つ大きなuがある。この四つの国と金山の周欷伟摔膜喂で、ぜんぶで十二国」
 子は缀窝У膜伺渲盲丹欷亢桃をつめた。それは花のようにもえる。五山を中心に、花びらのように配置された国々。
「それ以外はない?」
「ないな。その外は虚海だけだ。ず`っと世界の果てまでなにもない海が冥っている」
 ただ、とS俊はつぶやいた。
「虚海の|の果てには不思hなuがあるというもある。まぁ、一Nの徽hだ。それを|蓬莱《ほうらい》国という。e名を|日本《にっぽん》ともいうな」
 言ってS俊がいたのは「|倭《わ》」という文字だった。
「倭? 日本?」
 gHに文字をいてみせると「倭」のほうを示す。
 子はすこし唇をかんだ。こんなふうにして、今まで|翻U《ほんやく》されてきたわけか。
「海客は倭から来るというだ」
 今度はきちんと「倭」とこえた。子が言~を知ってしまったので翻Uの必要がないということなのだろう。
「ほんとうかうそかは知らねえけど、海客のをいてみると、どこからに倭という国があるのはたしからしい。倭を趣筏拼を出した奴もいるが、やっぱりってこなかったそうだ」
 もしもほんとうに日本が虚海のかなたにあるものならば、船を|に|漕《こ》ぎ出せばれる可能性がある。しかし、そんな手段ではれるはずのないことを、月影を通ってやってきた子は知っていた。
「反に、金山のどこかに|という丘があるという言い护à猡る。そこは中国という。中国からは|山客《さんきゃく》がやってくる。
 言いながら、S俊は「|h《かん》」という文字をく。
「山客? じゃあ、海客のほかにもこちらに混じりこんでしまう人gがいるんだ」
「いるな。海客は虚海の岸にたどりつき、山客は金山の|麓《ふもと》にたどりつく。この国じゃ山客は多くねえが、どっちにしてもKわれるはめになるな」
「そうか……」
「hも倭も、普通は人は行き来できねえ。それができるのは妖族と神仙だけだといわれてる。ただ、gがおこって、あっちから人が流されてくることがある。それが山客と海客」
「ふうん……」
「hや倭じゃ、家は金y玉でできている。国はNかでr民でも王侯のような暮らしをするそうだ。人はみんな宙をlけて一日に千里でも走る。赤ん坊でも妖魔を倒す不思hな力を持つそうだ。妖魔や神仙が神通力を持つのも、あちらへ行って深山の泉をむからだとさ」
 言ってS俊は子をる。子は苦笑しながら首を横にふった。
 奇妙なだ、と子は思う。もといた世界にって人にせばおとぎと言われるだろう。この世界にもおとぎがある。
 思って子はかすかに笑った。
 この常な世界、とずっとそう思ってきたが、はたして常なのは世界だろうか、子だろうか。
 答えならわかっている。だから海客は追われるのだと、そんなことをようやく思った。
   5

「……|巧国《こうこく》に流れついた|海客《かいきゃく》はみんな死ぬことになるね。|g《しょく》と海客が切りxせないなら」
 しばらくぼんやりと^去に锥啶い郡坤恧海客の\命について考えて、子は口を_いた。
「そういうことになるなぁ。……子は、仕事はなんだ?」
「学生」
 そうか、とS俊は何やら感慨深そうにする。
「海客のなかには、こっちじゃ知られてない技gを持っていたり、知Rを持っていたりする奴がいる。そういう人gはえらい人の保oを受けて生活できるんだがなぁ」
 なるほど、と子は自嘲の笑いを漏らす。子にはこの世界になにかをもたらせるほどの知Rはない。
「……倭へる方法を知らない?」
 子がくと、S俊は明らかにyしいをした。
「おいらは知らねえ。……これは言わねえほうがいいのかもしれねえけど」
 言い淀んでから、
「多分、そんな方法はねえと思う」
「そんなはずない。来れたものなら、る方法だってきっとあるはず」
 子の声にS俊は|髭《ひげ》を|垂《た》れる。きゅうぅ、と|喉《のど》をQらした。
「人は|虚海《きょかい》を渡れねえんだよ、子」
「gHに渡ってきた。だからわたしはここにいる」
「来ることはできても、行くことはできない。gH、海客にしても山客にしても、ったはついぞかねえ」
「そんなはず……ない」
 れない、という言~はどうあっても受け入れることができなかった。
「gは? gを待てばいいんじゃない? そうすれば、れる」
 荬い长螭狸子の言~に、S俊はしおしおと首をふる。
「いつ、どこでgがおこるかは、lにもわからない。いや、わかるgもあるが、人はあちらに行くことができねえ」
 そんなはずはない、と子はもう一度心の中でくりかえした。れないのならば、ケイキがそう言ったはずだ。彼はなにも言わなかった。彼のB度のどこからも、二度とれないのだとは感じられなかった。
「わたしは倭から|M雕《こちょう》に追われて逃げてきた……」
「M雕? 逃げてって、こっちへか?」
「そう。ケイキという人が」
「子が探してる奴か?」
「そう。そのケイキが、わたしをこちらへ|B《つ》れてきたんだ。正_に言うと、M雕たちがわたしを狙っているから、身を守るためにはこちらへ来る必要があるといって」
 子は言って、S俊をる。
「ということは、身を守る必要がなくなったられる、ってことなんじゃないの? わたしがどうしても家にりたいのなら、ちゃんと送るって言った」
「バカな」
「ケイキは宙をwべるをつれてた。S俊みたいにxす。まっすぐにwべば片道に一日、と言ってた。片道、ってことはりのことを考えた|台~《せりふ》だと思う。少なくとも二度とれない旅につかう言~じゃない。……ちがう?」
 子がVえるようにそう言っても、S俊はしばらく口を_かなかった。
「──S俊?」
「おいらにはよくわからねえ。……でもおおごとがおこってるのはたしかみてえだな」
「……そんなに、たいそうなこと? わたしが言ったことは」
「たいそうなことだな。M雕なんて妖魔が出たらこっちじゃ大Xぎだ。近くの里が|空《から》になることだってある。しかもそのM雕は特定のlかを狙っていたという。わざわざあちらへ、だ。そんなははじめていた。──そうしてケイキとかいう人gがおまえをこちらへBれてきたとか」
「うん」
「妖族も、たとえ神仙にしても、行き来できるのは自分の身体ひとつだと、おいらはいてる。ケイキというのが何者にしても、他人をBれて行き来した、なんてはいたことがねえ。なにがおこったのか、おいらにゃとうていわからねえが、それが|こ!钉袱螭袱绀Α筏韦长趣扦亭à韦坤堡悉铯る」
 S俊は思いむように考えこんでから、真っ\な目を子に向けた。
「それでおまえ、どうした。何より身を守りたいか、それともまずりたいか」
「……りたい」
 子が言うと、S俊はうなずく。
「そうだろうな。だが、おいらじゃその方策がわからねえ。これはどうあっても|雁国《えんこく》へいったがいい」
「うん。それから?」
「役人や|州侯《しゅうこう》の手にえることとも思えねえ。雁国へ行って、|延王《えんおう》の力を借りるしかねえと思う」
 子はぽかんとS俊がいた文字をつめた。
「延王……。王?」
 S俊はうなずいた。
「雁国の王は代々延というんだ」
「でも、王が力をJしてくれるの」
「わからねえ」
 そんな、と子は声をあげそうになったが、かろうじて耐えた。
「わからねえが、このまま巧国にいるよりはましだ。巧国の|主上《しゅじょう》に助力をおいするよりも、まだ希望がある。延王はタイカだからな」
「タイカ?」
「胎、果。あちらの生まれのお方だよ。そういうことがごくたまにある。ほんとうはこちらの人gなのに、まちがってあっちに生まれることがな」
 子は目を_いた。
「そんなことが?」
「ああ。ほんとうにたまのことだ。といっても、まちがってあちらに生まれることじたいがたまなのか、こちらにってくることがたまなのかは、はっきりしねえけどな」
「……ふうん」
「こちらには|三方《さんかた》有名な胎果がいる。雁国延王、延|宰o《さいほ》、|戴《たい》国|泰《たい》宰o」
「宰o」
「王のa佐をする相役みたいなもんだな。このうち泰宰oは亡くなったというだ。泰王は|行方《ゆくえ》知れず、国も乱れてとうてい近づけねえ。やはり雁国をLねるべきだろう」
 子はすこし|呆然《ぼうぜん》としていた。たくさんの知Rを急速にめこまれたせいでもあり、あまりに急激に先の通しがたったせいかもしれない。
 王をLねるというのは、首相や大yIをLねるに|匹场钉窑盲皮》することだろう。そんなことが可能なのか、という思いと同rに、そんなたいそうなことにきこまれているのかというとまどいがある。そう考えzんだとき、表から足音がこえた。

   6

 表に出る板酩蜷_けて姿をせたのは、中年の女だった。
「S俊」
 呼ばれてネズミはをあげる。
「母ちゃん」
 |髭《ひげ》をさわさわさとそよがせた。
「妙なお客を拾っちまったぞ」
 子はきょとんとせざるをえなかった。ってきた女はまちがいなく人gにえる。彼女もまた@いたようにS俊と子をくらべた。
「お客って、おまえ、この娘さん、どうしたんだい」
「林で拾った。こないだの|《しん》hの|g《しょく》で、あっちから流されてきたんだと」
 まあ、とつぶやいて、女はS俊のをる。|浴钉た》い表情がをかすめた。
 子は身える。この女もhで逃げだした|海客《かいきゃく》のgをいているだろうか。だとしたら、はたしてS俊のように子を|匿《かくま》ってくれるだろうか。
「……そりゃ、たいへんだったろうねえ」
 息をめて守る子に向かって女は笑った。そうしてS俊をふり返る。
「なんだい、おまえ。だったら呼びしてくれればよかったのに。娘さんの世がおまえにちゃんとできたのかい」
「ちゃんとできたさ」
「どうだかねえ」
 笑ってから、女は笑いを含んだままの目で子をやった。
「……ごめんなさいよ。あたしは用で出てたものだから。S俊はちゃんとあなたの面倒をれたのかしら」
「あ、……はい」
 子はうなずく。
「幛虺訾筏粕婴ができなかったところを、助けていただきました。ありがとうございます」
 あら、と女は目を丸くした。子のそばにlけ寄ってくる。
「もうだいじょうぶなのかい、起きて?」
「はい。ほんとうにお世になりました」
 答えながら、子は油断なく女の表情を探る。
 S俊はまだいい。だから。女は信用できない。信用するのが|怖《こわ》い。
「そんなことならなおさら、母さんを呼べばよかったのに。荬きかないねえ」
 女に言われてS俊は不氦饯Δ吮窍趣颏げた。
「ちゃんと面倒たさ。具合もすっかりよくなったし」
 女は子のをのぞきこむ。
「よかったこと。……起きていてもつらくない? まだ寝ていたほうがよくはないかい?」
「もう、だいじょうぶです」
「そう。ああ、こんな薄着で。──S俊、着物を出しておあげよ」
 あわてたようにS俊がOの部屋にlけこんだ。
「お茶もすっかりさめてるじゃないか。ちょいとお待ちね。今、いれなおしてあげようね」
 玄vの酩颏筏盲りと内趣ら蹙りして、バタバタとY口から井醵摔叵える女を子は送る。薄い上着のような着物を抱えてってきたS俊にそっと声をかけた。
「お母さん?」
「そうだ。父ちゃんはいない。うんと前に死んだからな」
 S俊の父Hというのは、人gだったんだろうか? ネズミだったんだろうか?
「ほんとうのお母さん?」
 おそるおそるいてみると、S俊は不思hそうにする。
「もちろん、ほんとうの母ちゃんだ。母ちゃんがおいらをもいだんだからな」
「もいだ?」
 S俊はうなずく。
「リボク──里の木──から、もいだんだ。おいらの入った木のgを」
 そこまで言ってS俊は、はたと荬ついたように、
「あっちじゃ子供は母Hの腹になるってほんとうか?」
「……うん。普通、そうだね」
「腹に木のgができるのか? そうしたらどうやってもぐんだ? 腹の外にぶら下がってるのか?」
「もぐ、っていうのがよくわからない」
「木になったランカを取るんだ」
「ランカ?」
「卵の果g。このくらいの」
 S俊はひとかかえほどの大きさを示した。
「黄色いgで、なかに子供が入ってる。それが|里木《りぼく》の枝になって、Hが行ってもぐんだ。あっちじゃ|卵果《らんか》はならないのか?」
 子はかるく~を押さえた。これはおそろしく常Rが`う。
「ちょっとちがうみたい……」
 S俊はいかけるように子をる。子は苦笑した。
「あっちじゃ子供は母Hのお|腹《なか》のなかにできる。母Hがbむんだ」
 S俊は目を丸くした。
「|《とり》みたいに?」
「ちょっとちがうけど、そういうカンジかな」
「どうしてできるんだ? 腹のなかに枝があるのか? 腹のなかにあるgをどうやってもぐんだ?」
「う`ん……」
 子がさらに^を抱えたところで、母Hがってきた。
「さあさ。お茶をいれようね。お腹はすいてないかい?」

 S俊の母Hは息子から子の事情をきながら、手早く|蒸《む》しパンに似たお子を作ってくれた。
「それでな」
とS俊は小さな手に大きな蒸しパンの|K《かたまり》をかかえて言う。
「|雁《えん》国に行ってみるのがいいんじゃねえか、ってをしていたところなんだ」
 母Hはうなずく。
「そうだね。それがいいだろうね」
「そういうわけで、おいらは子をカンキュウまで送ってくる。着るものを持たせてやってくんな」
 S俊が言うと、母Hは目にえて|《こわ》ばったをした。
「そんな、……おまえ」
「心配するこたねえよ。ちょっとひとっぱりしりしてくらぁ。なぁに、土地にふなれな客人を送ってくるだけだ。母ちゃんはしっかり者だから、ひとりでもだいじょうぶだな?」
 母HはすこしのあいだS俊をつめて、それからうなずいた。
「あいよ。──荬颏膜堡啤
「S俊」
 子は言~をはさんだ。
「莩证沥悉りがたいけど、そこまで迷惑はかけられない。道ならいたからなんとかなると思う」
 同行者は怖いのだ、とはさすがに言えなかった。
「さっきの地恧颉なにかにいてもらえるかな。手gを取らせていけど」
「子。雁国に入るだけならともかく、王をLねるとなればおまえだけじゃむりだ。たとえ道はわかっても、カンキュウまでは三ヶ月以上はかかる道のりだ。そのあいだ、食う物はどうする。宿はどうする? Eはもっているのか?」
 子は押しaる。
「とてもひとりじゃ行かせられねえ。おまえはこちらのことを、なにもわからないんじゃねぇか」
 子は考えzむ。Lいあいだ迷って、それからうなずいた。
「……ありがとう」
 いいながら野の端での包みをとらえていた。
 たしかにS俊には同行してもらったほうがいい。この母子は一、子を助けようとしているようにえるが、それが本当だとは限らない。长味方かわからないが、行く先を知られている以上、わからないまま放置しておくことはできない。子がここを出て即座に役所にVえ出られたら、|阿岸《あがん》で待っているのは船ではなく|F《わな》なのだから。
 Bれていけばこの女にしての|人|《ひとじち》になる。万が一S俊が自分にとって危な存在になれば、にものをいわせればすむことだ。
 ──そう考え、ひどく自分が情けoい生き物になった荬した。

   7

 S俊の家を出たのはそれから五日後のことだった。
 H子は子の味方であるかのように振る舞いぬいたし、子もとりあえずゆっくり休むことができた。「このH子だってなにを考えてるかわかったもんじゃない」というのが|n猿《あおざる》の言い分ではあったし、それは子も承知していることではあったが。
 S俊の母Hは旅の浃颏胜摔らなにまで整えてくれた。|_姐《たっき》の家よりもしそうにえるのに、粗末なものとはいえ子の着がえにいたるまで浃筏皮れる。子には大きな男物だったので、S俊の死んだ父Hのものかもしれない。
 それはかえって子のなかに警戒心を呼びおこした。ただの善意でここまでしてくれるとは思えなかった。S俊はまだいい。かけだけでも人ではないから。母Hのほうを信mする勇荬子にはない。
「どうしてわたしを助けてくれるの」
 たまりかねてそういたのは、S俊の家を出てようやく建物がえなくなったころだった。S俊は小さな前肢で|髭《ひげ》の先をいじる。
「だっておまえ、子ひとりじゃとうてい|v弓《かんきゅう》まで行けねえだろう」
「道を教えれば、それでじゅうぶんだとは思わない?」
「なぁに。v弓物もくねえ。あそこはなかなか面白いところだとくからな。なんでも、あちらLなんだと。王があちらの人じゃしかたねえけど」
「|倭《わ》L? hL?」
「倭L。|延《えん》王は倭からってきたんだ」
「それだけ?」
 S俊は子を振り仰いだ。
「子はそんなにおいらが信用できねえのか」
「……H切^ぎると思わない?」
 背中に大きな布包みを背ったネズミは、カリコリと胸の毛Kみを|《か》いた。
「ごEのとおり、おいらはハンジュウだ」
「……ハンジュウ?」
「半分、。ここ|巧《こう》国の王は半がお好きでない。|海客《かいきゃく》もきらいだ。あの方は浃铯盲郡长趣おきらいなんだ」
 子はただうなずく。
「だいたい、巧国に海客は多くねえ。海客はだいたい|の国に流れつくし、それで言えば多いんだろうが、gHの数はたかが知れてらあ」
「どのくらい?」
「さてなぁ。三年にひとりいるかいないか、ってとこだな」
「そう……」
 それは思ったよりも数が多い。
「海客が流れつくのはなんといっても|c《けい》国が多い。|の端になるからな。次が|雁《えん》国、巧国はその次だ。巧国じゃ、半も多くねえ。これはどうした加pかは知らねえ」
「ほかの国は多い?」
「多いな。少なくとも巧国ほど少なくねえ。このあたりじゃ半はおいらだけだ。主上はい王じゃねえんだろうが、すこしばかり好ききらいが激しい。海客のあつかいもしいし、半のあつかいも冷たい」
 言ってからS俊は髭を|《はじ》いた。
「おいらは自慢じゃねえが、このxで一番^がいいんだ」
 子は意恧颏悉りかねて、S俊をつめる。
「利kだし目端が|利《き》くし、荬坤皮猡いぁ
 子はすこしだけ笑う。
「……なるほど」
「それでもおいらは一人前じゃねえ。いつまでたっても半人前だ。半分しか人gじゃねえからな。この姿で生まれたときにそうQまっちまった。だけどこんなの、おいらのせいじゃねえ」
 子は小さくうなずく。言わんとしていることは|漠然《ばくぜん》とわかったが、それでも警戒心がとけない。
「海客だってそうだろう。だから、海客が海客だってだけでされるのは我慢できねえんだ」
「そう」
 S俊は今度は大きな耳の下の毛Kみをいた。
「ジョウショウってわかるか? 上庠──都の学校だ。上庠の成は一番だった。|x士《せんし》ってのにxばれて|少学《しょうがく》へも|推]《すいせん》された。少学ってのは|淳《じゅん》州の学校だ。これに行けたら、ちょっとした地方官になれる」
「郡はhの上?」
「_の上だな。州には郡が驻膜ある。驻膜は州によってちがうけどな。郡は五万酢⑺泥_、_は一万二千五百酢⑽灞h」
「……ふうん」
 五万酢という数字はピンとこなかった。
「ほんとうは上庠だって行けねえんだ。それを母ちゃんが一生颐mんで入れてくれた。成がよければもっと上の学校へいけて、そしたら役人になれる。おいらは半人前だから|田圃《たんぼ》をもらえねえけど、田圃がなくてもちゃんと生活できるようになる。けどな、少学には半は入れねえんだとさ」
「……そう」
「母ちゃんはおいらを上庠に入れるために自分の田圃も家も婴Bっちまった」
「じゃ、今は?」
「今は小作だ。近所の金持ちの|自地《じち》を|雇《やと》われて耕してる。
「自地」
「お上がくれるのが|公地《こうち》。S可をもらって|_ā钉いこん》したのが自地だ。もっとも、Pいてるのは母ちゃんだけで、おいらはPいてない。PきたくてもPけねえんだ。半は雇ってもらえねえ。税金が余にかかるからな」
 子は首をかしげた。
「なぜ?」
「半には熊や牛みたいなB中もいる。そういうB中は人Kみ以上に力があるから、だと。要は主上が半をきらいだってことなんだけどな」
「ひどいだな……」
「海客ほどじゃねえけどな。なにも、つかまえろだのせだの言うわけじゃねえんだから。だけどおいらは人の^数に入らねえ。それで田圃ももらえなけりゃ、をつけることもできねえ。母ちゃんはひとりでおいらとふたりの生活を支えてる。だからウチはビンボウなんだ」
「……そう」
「おいら、がほしいよ」
 言ってS俊は首に下げた布を示した。
「これは母ちゃんがおいらを雁国の少学へ入れようってんで|A《た》めてくれた金だ。雁国じゃ、半だって一番上の大学まで行けて、国のえらい役人にだってなれる。ちゃんと一人前にJめてもらえて、田圃だってもらえるし、跫に|正丁《せいてい》って|d《の》る。子をBれていってmんだら、雁国でがもらえるんじゃねえかと、gは思った」
 ではやはり、まったくの善意ではないのだ、と子は皮肉な莘证撬激盲俊意ではないのかもしれないが、善意だと思うことはできない。
「……なるほど」
 その声が明らかに|棘《とげ》を含んでいたのだろう、S俊は立ち止まった。すこしのあいだ子をたが、それだけでなにも言わなかった。
 子もまたそれ以上はなにも言わなかった。人はlもが自分のために生きている。事前でさえ、突きめれば自分のためでしかない。だからS俊の言~はうらめしく思うようなことではないのだ。
 ああ、と子は思う。人はY局自分のために生きるものだから、Y切りがあるのだ。lであろうと他人のために生きることなどできるはずがないのだから。

   8

 その日、夕方になってたどりついたのは|郭洛《かくらく》という街だった。|河西《かさい》ほどもある大きな街だ。
 前にもこちらの人gにBれられて旅をしたが、今度の旅はあのときにくらべると格段にしい旅になった。食事は屋台ですませ、宿は最低のところを取った。一泊が五十Eで大部屋を|n立《ついたて》で仕切ってつかう。それでも路yはS俊のおごりだから、子に不氦窝预い瑜Δあろうはずがない。
 S俊は子を弟だと言いとおした。人gの女が母Hで}ないものなら、子が弟でもかまわないのかもしれない。gH、それを疑われたことはなかった。

 当初は|造作《ぞうさ》のない旅だった。S俊は道中、いろんなことをしてくれた。
「四|大《だい》、四|州《しゅう》、四|O《きょく》で十二国」
「四大?」
 子はほとほととiいてくるS俊を降り返る。
「そうだ。|c|《けいとう》国、|奏南《そうなん》国、|柳北《りゅうほく》国で四大国。eに大きいわけじゃねえが、こう呼ぶな。四州国が、|雁《えん》州国、|恭《きょう》州国、|才《さい》州国、それからここ|巧《こう》州国。四O国が、|戴《たい》、|舜《しゅん》、|芳《ほう》、|i《れん》」
「戴O国、舜O国、芳O国、iO国?」
「そうだ。それぞれに王がいて国をy治する。巧国なら|U《こう》王だな。王mは|喜《き》州|傲霜《ごうそう》にあって、|翠篁《すいこう》mっていう」
「傲霜? 街?」
 そうだ、といってS俊は左手にえる山を示した。
 こちらは土地に起伏が多い。左手の|彼方《かなた》には高い丘陵地?え、さらにその向こうに高くしい山地が薄くえた。
「あの山のさらにずっと向こうだ。天まで届く山があって、それが傲霜山。山の上に翠篁mがあって、|麓《ふもと》の一?傲霜という街だな」
「へえ……」
「王はそこから国土をy治する。州侯を任じ、天下に法律をk布して、民に国土を分配する」
「州侯はなにをするわけ?」
「州侯は各州をgHにy治するのが仕事だな。州の土地、人民、を管理する。法律を整浃贰跫を整えて税をГ贰|漠《さいい》に浃à迫氦蛘える」
「gHにということは、王はgHにy治するわけじゃないんだ」
「王はy治の指摔蚴兢工韦仕事だな」
 よくわからないが、アメリカのような制度になっているのかしら、と思う。
「王は法律を制定する。これを|地V《ちこう》というんだ。州侯も法律を作れるけど、地Vに逆らうことはできねえ。その地Vも|施予V《せよこう》を犯して定めることはできない」
「セヨ──なに?」
「天が王にして与えた、このようにして国を治めよというきまりだな。この世界を天幕にたとえるなら、世界を支える太いVだ。だから|天V《てんこう》とも|太V《たいこう》ともいう。王といえども、これこれだけは守らなきゃいけねえ。太Vにふれないかぎり、王は自分の国を好きに婴していい」
「……へぇ。その太VはlがQめたの。まさか本当に神さまでもないでしょう」
 さあ、とS俊は笑う。
「大昔、天帝は九州四夷、悚护剖三Lを绀埭贰⑽迦摔紊瘠仁二人の人とを残してすべてを卵に返したそうだ。その中央に五山を作り、西王母を|主《あるじ》に据え、五山を取りく一州を黄海と浃浮⑽迦摔紊瘠蚋o王として五海の王に封じたとか」
「神だね」
「そういうことだな。そうして、十二人の人にそれぞれ木の枝を手渡した。枝には三つのgがなり、一匹の蛇がきついていた。この蛇がほどけて空を持ち上げた。それぞれが落ちて土地と国と玉座を作った。枝は浃袱乒Pになったそうだ」
 子の知るいろんなタイプの神とはずいぶん`う。
「この蛇が太Vを、土地は跫を、国は律を、玉座は仁道──すなわち|宰o《さいほ》を、Pはs史を意味するんだとさ」
 入ってからS俊は|髭《ひげ》をはじく。
「そのころ、おいらはまだ生まれてなかったから、真韦韦郅嗓现らねえけどな」
「……なるほど」
 中国の神も子供向けの本でずっと昔にiんだはずだが、内容はほとんどにない。それでも、これとはずいぶん`った内容だったことは_かだ。
「じゃあ、天帝が一番えらい神?」
「さて、そういうことになるかなぁ」
「いごとはlにするわけ? 天帝でしょう?」
 いごと、とS俊は首をかたむける。
「──そうだな、子宝をうなら、天帝にうけど」
「ほかは? たとえば、N作とか」
「さぁて、N作をうなら|颉钉ょう》帝かなぁ。そう言って虻郅颏蓼膜脒B中もいるなぁ。そういうふうに言うなら水害をのがれるのは|禹《う》帝だとか、妖魔をのがれるのは|黄《こう》帝とか」
「いろいろいる?」
「うん。いろいろまつるB中もいるな、_かに」
「普通はしないの?」
「しねえなぁ。作物なんてのは、天荬よくてちゃんと世してりゃN作になる。天荬いいかいかは、天の荬尉吆悉韦猡螭馈Fいても笑っても降るときには降るし、ひでるときはひでる。ったところでしかたねえもん」
 子は少しきょとんとする。
「でも、|洪水《こうずい》になったらみんな困るでしょ?」
「洪水にならないように、王が|治水《ちすい》するんだろ?」
「冷害とか」
「そういうときに||~《ききん》にならないよう、王がY物を管理するんじゃねえか」
 ──よくわからない。
 わからないが、なにかひどく子の知る人gとは`うのはわかった。
「じゃあ、Yに合格するようにったり、お金が溜まるようにったりもしないんだ」
 子が言うと、今度はS俊がきょとんとした。
「そんなのは本人がどれだけ努力したかの}だろう? おいしてどうすんだ?」
「それは……そうだね」
「Yなんてのは勉すれば受かるし、金なんてのは|稼《かせ》げばたまる。いったいなにをおいするんだ?」
 さあ、と苦笑してから、子はふいに笑みを|觥钉长》らせた。
 ──そういうことか。
 ここには神だのみも\もない。だから、海客を婴盲菩〗黏蚣冥哎隶悭螗工あれば、ojにしない、というわけだ。
「……なるほど」
 つぶやいた言~には、我ながら冷たいものがひそんでいた。それに荬ついたのか、S俊が子を上げて、それからしょげたように髭を落とした。

 自分で自慢するだけあって、S俊は博Rで^の回も早い。たしかにこれほど利kで、それでも半だというだけで一生を母Hの荷物にならなければならないのだとしたら、それはつらいことかもしれなかった。
 S俊は子のことや日本の事情についてもきたがったが、子はあえてなにもさなかった。
 そして──u膜蚴埭堡郡韦稀⒘日目のことだった。

   9

 それは夕刻近く、その夜の宿泊地である|午寮《ごりょう》の街がえたところだった。
 街道を急ぐ旅人はTの前でj踏を作る。子もまたその中に混じって、足を速めていた。Tまでの距xは五百メ`トルばかり。せかすようにTのなかから|太鼓《たいこ》の音がこえはじめた。それがQりKったら]Tのrgである。
 lもがさらに足を速める。Tへlけzもうとする人々がひとごみを作る。そのなかのlかが、あ、と声をあげたのが始まりだった。
 声につられたようにひとりふたりと背後の空をあげた。j踏のあちこちで婴がとまる。それを|怪《けげん》に思った子がふり返ったときにはすでに、w来してくる巨Bのシルエットがr明だった。
 巨B。|《わし》のような。|角《つの》がある。八羽。
「|M雕《こちょう》!」
 悲Qを皮切りに人波が午寮の街に向かって⒌饯筏悉袱幛搿j子もまたS俊といっしょに走りはじめたが、M雕のほうが速いのは明らかだった。
 ⒌饯工肴恕─蛞韦啤⒋螭なT扉が]じ始める。
 ──バカな。
 中にいる自分たちだけでもM雕から身を守ろうという|肚《はら》だろうが、空をwぶ魔物にTを]ざしてなんの意味がある。
「──待ってくれ!」
「待って!!」
 悲Qがうずまく。子はとっさにS俊を押して人波からwび出した。
 Tにhかったことが幸いした。T前では、自分だけでもとlけ出した人々が前の者をかきわけ、押し倒し、踏みにじって、|阿鼻叫尽钉びきょうかん》のありさま。
 人波から少しxれ、街へ向かってlけながら、子は薄く笑う。
 ──ここは神だのみをしない国だ。
 妖魔にuわれても、神にすがったりはしないのだ。だから、前の人gを引き倒しても先を急ぐ。旅人を韦皮皮忾Tを]める。
 妖魔にuわれるか否かは、本人の用心深さがものをいうのか? uわれて助かるか否かは、本人の力量がものをいうのか?
「……バカが」
 ──だとしたら、このB中はo力すぎる。
 赤ん坊が泣き叫ぶような声がg近でして、子はその訾颂い撙趣嗓蓼盲俊ig近をlけるS俊が子を振り返って声を上げた。
「子! むりだ!!」
「S俊は街へ」
 w来してくるM雕との距xは、すでにその胸毛にある斑yがてとれるほどの距xしかなかった。その姿をにらんだままS俊にTを示し、にいた布を腕をふってほどく。
 なれた感触が肌をつたう。すでにジョウユウの感触は子と|Z染《なじ》んで`和感がない。
 余裕の笑みが浮かんだ。
 ──むりじゃない。
 M雕などSなものだ。数はわずかに八羽、子のはどんな厚い肉でもきとおす。となれば、长紊硖澶大きいのは狙いやすくてありがたいばかりだ。しかも、Bは滑空するのでg合いが取りやすい。
 久々に长摔扦って、笑っている自分がd味深かった。
 すでには|K《い》え、体力も充分、长摔县けない~の自信がある。ただ逃げるしかない人々の声を──|海客《かいきゃく》である子を狩っているはずの人々の悲Qを背中でくのは奇妙に|F《ほこ》らしく、|愉《たの》しい。
 生臭いLをまいて急降下してくるM雕の群れにをかまえた。身内で|血潮《ちしお》が|沸v《ふっとう》して、荒れ狂う海の音がする。
 ──だ。
 ──わたしは、まちがいなく妖魔だ。
 だから、长摔扦って、これほどうれしい。

 |⒙尽钉丹膜辘》が始まった。それはM雕にとっても⒙兢坤盲郡、人にとっても⒙兢坤盲俊
 下降してきた一羽を落とし、二羽を落とし、半数をしとめたときには街道は血の河になっていた。
 落するように下降してきた五羽目の首を|刎《は》ねて六羽目を避けると、子に爪をかけそびれたBはhく背後にいた旅人を血祭りにあげて上Nしていく。
 子は着gに仕事をこなしていった。
 血の臭いも骨肉を~つ感触も、とっくの昔になじんでいたし、人の死体をて心を婴されるほどのさなど残っていない。
 _gに长虮埭堡长虻工工长取⒎丹暄をできるだけ避けること、子が荬颏膜うのはそれだけだった。

 七羽を落として子は空をあげる。八羽目が降りてこない。上空を旋回し、なにかを迷っているふうだった。
 急速に暮れはじめた空は、さびたの色。そこに\く妖Bの影がよぎる。
 たとえジョウユウの力を借りても、空までは追っていけない。
「──降りてこい」
 子はつぶやく。
 ここへ、子の爪のとどく欷亟丹辘皮长ぁ
 旋回する影をにらみながら、野のはしで周欷蛱饯搿
 日の光のあるうちに长あらわれたからには、あの女もかならずいるはず。──あの、金のの女。その金の色がどこかにえないか。
 近くにいれば捕まえる。今の子にはそれができる。捕まえたら目的をかならずく。言わないのなら片腕を落としてでも言わせてみせる。
 そう思考する自分に|@愕《きょうがく》する。
 まるでの本性があらわれたかのような、この|猛《どうもう》さはどうだろう。それとも、血にEったのか……。
 ^上の影がふいに婴の角度を浃à俊=丹辘皮る、とてとって|柄《つか》をにぎる手に力をこめる。振りあげるまもなく、Bはもう一度角度を浃à啤ふたたび宙を旋回するB荬った。
「降りてこい!」
 ──妖魔のくせに命が惜しいか。
 今日まで人をuっておいて!
 子はを振りあげる。足元に落ちたM雕の死体に突き刺した。
「来ないなら、仲gの死体を切り刻むが、いいか!!」
 まるでその声が理解されたようだった。
 旋回していたM雕がいきなり落下してくる。矢のように降ってくるい^爪を死体から引きiいたで|一W《いっせん》、花を散らしてBい落とし、そのまま足を突き通す。
 Bが奇声をあげてはばたいた。LRにあおられ、一wに浮き上がりそうになる足を踏みしめて、iいたを胴に向かって突き上げる。刺さった手辘à蚋肖袱毪浃い胜洹⒑犸wびにのいてを引くと、一瞬前までいた鏊にr血がしぶいた。
 あとは造作もなかった。翼に力を失って落したBに、二娜膜颏りだし、首を切り落としてとどめをさす。大きくをふって|血糊《ちのり》をBったとき、子の周欷婴ものはなかった。

 道に倒れたのはM雕ばかりではなかった。|累々《るいるい》と道に人が横たわっている。|呻《うめ》き声がこえるのでぜんぶが死んだわけではなさそうだった。
 o感婴扦饯欷蛞ながら手近にがったM雕の首でをぬぐい、それでようやく子は思い出した。
 ──自分にはBれがいなかったか。
「……S俊!?」
 午寮の街までをわたすと、城Tが_くのがえた。く_いた城Tのあいだから|l士《えじ》がwび出してくるのが小さくえる。
 自分の足元から城Tまでのあいだを再度わたし、子はxれたところに倒れたをつけた。灰茶の毛Kみは血を吸って赤\く渖している。
「S俊……」
 lけよりそうになってあらためて城Tをた。外にwび出したl士や人々が口々になにかを叫んでいるが意味はき取れない。
 S俊とTとを比べる。
 S俊の|怪我《けが》がどの程度かてとれる距xではないが、毛KみをAした血糊は近くにがったM雕のものばかりではないだろう。
 子は首から下げた|珠《たま》をにぎりこんだ。これがlにでも磕埭あるのか、それとものように子にしか反辘筏胜い韦、それはわからない。しかしもしも、相手をxばないものならこれはS俊を助けるだろう。
 そう思いながら、珠をにぎったまま婴堡胜った。
 lけ寄って怪我の具合をたしかめ、ひどいようなら珠の力が及ぶか、してみる。──そうすることがS俊にとってはいちばんいいのにちがいない。
 だが、珠を当てているうちにl士たちがやってくる。それだけの距xしかない。
 倒れた人々のあいだで、たったひとり立っている子はめだっているはずだ。hくから守っていれば、M雕が子を狙っていたことも、それを倒したのが子であることもわかるはずだ。不に思われないはずがない。
 |鞘《さや》のないがある。少し{べればを染めていることはgにわかる。海客であることはすぐにばれるだろう。
 しかし、ここで逃げたら。
 倒れたまま婴ない毛Kみをた。
 S俊は自分を韦皮铺婴菠筷子のことをVえはしないだろうか。
 を包んだい荷物、染めたの色、男物の服、|雁《えん》国へ行こうと|阿岸《あがん》をめざしていること。そんなものがばれれば、子をとらえようとしたWは一荬艘きgられてしまう。だからといって倒れたS俊を抱えて逃げる腕力などありはしない。
 S俊の安全を考えるならるべきだ。
 そして、子の安全を考えるなら。
 鼓婴大きく打った。
 ──lけもどってS俊に|止《とど》めを刺す──
 そんな、と身内で声がした。それをlかが|叱咤《しった》する。
 迷っているrgはない。S俊が余なことをしゃべれば、子に生き延びる道はない。
 ることはできない。それはみすみす命を韦皮毪长趣馈S俊をこのまま韦浦盲こともできない。それもまた、同じくらい危だ。だったら。
 って最善の行椁蛐肖ぁ⒖赡埭胜S俊の布を持ってくる。そうすれば子は完全にこのF地から逃れることができる。そのrgはある。それだけのrgならば。
 大きく_いた城Tからどっと人が流れ出してきた。lけよってくる人波をて反射的に子はその訾颏丹っていた。
 いったん婴出すと、止まらなかった。
 子は身をひるがえす。背後には街道からlけつけた旅人が迫っていた。その人混みに|《まぎ》れ、子はその訾蝰lけ出した。

   10

 ──きっとだいじょうぶだ。……きっと。
 言いかせ、言いかせして日の暮れた街道を小走りにiいた。
 完全に暗くなって人通りが~えてからは、なりふりかまわずに走った。|午寮《ごりょう》からxれ、分岐路で曲がり、今朝旅立った街も午寮の街も引きxしていく。
 じゅうぶんにxれても子の足は止まらない。急いでいないと、なにかが背後から追いかけてくる荬した。
 だいじょうぶだ、と自分に言いかせる。
 たとえS俊が子のことをVえ出ても、写真すらないこの国で、自分を捕まえられるとは思えない。ましてや、S俊は自分を|匿《かくま》ったのだから、Pをおそれて彼を韦皮铺婴菠浚海客《かいきゃく》のことをしゃべったりはしないはずだ。
 自分にく言いかせて、子は足を止めた。
 胸のなかに深い穴があいた荬した。

 今考えるべきことは、そんなことではないのではないか。
 S俊はぶじなのだろうか。子の目には深いにはえなかったが、本当に深手ではなかったのだろうか。るべきだ、と身内で声がする。
 って、せめてS俊の安否をたしかめてから逃げるべきだ。
 危だ、とlかが言う。たとえっても、子になにができるわけでもない。
 |珠《たま》がある、とlかが叫ぶ。
 珠があっても、それがS俊の怪我に役立つとはかぎらない。ましてや、S俊はすでに死んでいるかもしれない。れば捕まる。捕まるだけojだ。捕まれば命がない。
 ──そこまで命が|惜《お》しいのか。
 ──惜しくないはずがない。
 ──命の恩人を韦皮啤
 ──ほんとうに恩人だったとは限らない。
 ──助けてくれた事gは浃铯椁胜ぁS俊は匿ってくれた。
 ──下心があってのことだ。善意ではない。そんな人gはいつでもY切る。
 ──善意でない人gなら韦皮皮猡いい韦。ほんとうにそんなことをしてもいいのか。
 あそこにあれだけの怪我人がいて、ましてやそのなかに知り合いがいて、それを韦皮皮筏蓼盲皮いい韦。せめて救助に手をJすのがほんとうなのではないのか。そうすれば死なずにすんだ命が、あそこにはあったのではないのか。
 ──そんなきれいごとをこの国で言ってもはじまらない。乏|`《くじ》を引くのが落ちだ。
 ──きれいごとではない。
 人として当然のことだろう。そんなことさえ忘れたのか。
 ──いまさらおまえが人の道を言うのか。
 いまさら、おまえが。
 いまさら!
「って|止《とど》めを刺す」
 |耳障《みみざわ》りな声がこえて子はwびあがった。道のすぐ|の草むらに|n猿《あおざる》の首がえた。
「──そう思ったんじゃなかったのかい」
「……あ……」
 子はn猿を|凝《ぎょうし》する。全身が震えた。
「止めを刺すつもりだったんだろう、えェ? そのおまえが、いまさら人の道を言うのかい。おまえが! いまさらよォ」
 猿は狂ったように|哄笑《こうしょう》した。
「……ちがう」
「ちがわねえなァ。おまえはたしかにそう思ったのサァ」
「そんなこと、するつもりはなかった」
「つもりだったさ」
「gH、しなかった。わたしには、できない!」
 きゃらきゃらと猿は|嗤《わら》う。
「そりゃあ、人しが怖かったからだろうが。したかったが、す勇荬なかっただけじゃねえのかヨォ」
 高笑いして猿は子をSしげにた。
「mもしくなったじゃねえか。だいじょうぶだ。次はせる」
「ちがう!」
 叫びをoして青い猿は笑う。かんだかい音が|容赦《ようしゃ》なく耳に刺さった。
「──わたし、る」
「どうせってもとっくに死んでるサァ」
「そんなの、わからない」
「死んでるさ。って捕まってされるだけojだヨォ」
「それでも、る」
「ヘエェ、ったらおまえの罪が消えるのかい」
 返しかけたきびすが止まった。
「るがいいサァ。って死体をて泣いてくりゃぁいい。そうしたらおまえがそうと思ったこともはしになるだろうヨォ」
 きゃらきゃらと笑うを|呆然《ぼうぜん》とすえる。
 これは自分だ。浅ましい自分の声だ。これはまったく、自分の|本音《ほんね》にほかならない。
「──きっとY切られたにQまっている。その前でよかったじゃないか」
「……うるさい」
「今ごろ|l士《えじ》がこっちに向かってるかもしれねえぜ? あのネズミにVえられてヨォ」
「aれ!」
 |柄《つか》をにぎってをふるった。草むらを荬盲迫~先だけが散る。
「死んでりゃいいなァ。|止《とど》めを刺しておけば|完璧《かんぺき》だったのによォ。まだまだ甘いよ、おまえはサァ」
「やかましい!」
「今度はやるんだ。つぎにあんなことがあったらよ、まちがいなく止めを刺すんだぜ」
「ふざけるなぁっ!」
 音をたてて~先が散った。
 ──止めをさしてどうする。韦皮郡坤堡扦猡长螭胜诵膜酥丐い韦恕してそれでどうやって生きていくのだ。命がありさえすればいいのか。どんなに|h《みにくい》い生き物に成り下がっても、ただ生きていられればいいのか。
「……さなくてよかった……」
 早まらずに、魔がささずに、それをg行に移さないでよかった。
 猿は高らかに|嘲笑《ちょうしょう》する。
「生かしておいて、Vえられていいのかい。えェ?」
「S俊は、Vえていいんだ!」
 ようやく胸につまったものが妞摔胜盲聘?んだ。
「S俊にはその乩がある。もちろん、わたしをVえ出ていいんだ!」
「甘い、甘い」
 なぜ人を信じることができなかったのだろう。
 |Y《う》のみにしろといっているわけではない。それでもあのネズミを信じることが、子にはできていいはずだった。
「そんな甘いことを言ってるからサァ、Y切られていいカモにされるのサァ」
「Y切られてもいいんだ」
「甘いなァ」
 きゃらきゃらと夜を|裂《さ》いて猿は笑う。
「ほんとうかい? ほんとうにそれでいいのかい。カモにされるほどバカでいいのかヨォ」
「Y切られてもいいんだ。Y切った相手が|卑怯《ひきょう》になるだけで、わたしのなにがつくわけでもない。Y切って卑怯者になるよりずっといい」
「卑怯になったが伽隶单 ¥长长瞎恧喂だからなァ。おまえにlもH切にしたりしないんだぜ。H切な人gなんか、いないんだからヨォ」
「そんなの、わたしにvSない!」
 追いつめられてlもH切にしてくれないから、だから人を拒~していいのか。善意を示してくれた相手を韦皮毪长趣卫碛嗓摔胜毪韦。~の善意でなければ、信じることができないのか。人からこれ以上ないほどしくされるのでなければ、人にしくすることができないのか。
「……そうじゃないだろう」
 子自身が人を信じることと、人が子をY切ることはなんのvSもないはずだ。子自身がやさしいことと他者が子にしいことは、なんのvSもないはずなのに。
 ひとりでひとりで、この世界にたったひとりで、助けてくれる人も|慰《なぐさ》めてくれる人も、lひとりとしていなくても。それでも子が他者を信じず卑怯にふる舞い、韦皮铺婴病ましてや他者を害することの理由になどなるはずがないのに。
 猿がヒステリックに笑った。ただ突き刺さる声で笑いつづける。
「……くなりたい……」
 世界も他人もvSがない。胸をって生きることができるように、くなりたい。
「おまえは死ぬんだ。家にもれず、lにもふり向かれず、だまされてY切られ、おまえは死ぬんだ」
「死なない」
 ここで死んだらおろかで卑怯なままだ。死ぬことを受け入れることは、そんな自分をS容することだ。生きるもない命だと|烙印《らくいん》を|押《お》すことはたやすいが、そんな逃避はSさない。
「死ぬんだ。||《う》えて疲れて首を|刎《は》ねられて死ぬんだ」
 |身《こんしん》の力をこめてをBった。草むらを丐炅绚い壳肖孟趣峡荬蓼扦丐盲啤い手ごたえを返した。散った~先のあいだに猿の首が跳ぶ。地に落ち、|血糊《ちのり》を|撒《ま》いて々ところがった。
「ぜったいに、けない……」
 妞止まらなかった。

 预ば浃穷をぬぐって、iき出した子の足元には金の光が落ちていた。子はしばらくその意味を取りかねて、呆然とそれをつめる。
 土の色を浃à垦溜まりの中、n猿の首があるはずの鏊にそれはあった。
 もうずいぶんと昔になくしたはずの。
 ──|鞘《さや》、だった。


   六章


   1

「あの、これくらいの」
 子は旅人をつかまえて、子供ほどの背丈を示す。
「ネズミの姿をした人を知りませんか」
 老婆は子をうさんくさそうにた。
「なんだえ? 半かい」
「はい。昨日、このT前でけがをしたといたんですが」
「ああ──。|M雕《こちょう》の」
 言って老婆は背後を振り返る。hく《午寮》の街がえた。
「さてね。昨日|怪我《けが》をしたB中なら、役所にいるはずだがね。役所で手当てをうけてるよ」
 朝から何度もいた返答だった。
 夜明けを待って午寮の街にったが、恐ろしいほど城Tの警戒は重で街の中に入ることはとうていできない。役所に行ってみればいい、とそう思っても、かんじんの役所に近づくことができないのだ。
「役所に行ってみたのかえ」
「はい……。いないようだったので」
「だったら、Yだろうよ」
 老婆は言って、iみ去る。午寮の街のY手には死体がKべてある。それをh目にはたがそこもやはり警戒が重で、そこにS俊がいるかどうか_Jできるほどの距xには近づくことができなかった。
 大きな荷物を背って去っていく老婆を送り、子は午寮からやってくる次の旅人をつかまえる。
「あの──」
 声をかけた旅人は男と女のふたりぐみで、男は足に布をいて|杖《つえ》をついていた。
「すみませんが」
 老婆にいたのと同じことをくりかえす子を、ふたりはうさんくさげにる。
「昨日、怪我をしたといて──」
「おまえ」
 男が唐突に子をゆびさした。
「おまえ、まさか昨日の──」
 全部をかず、子は身をひるがえす。
「おい。ちょっと、待て!」
 声をあげる男にはかまわず、足早に旅人のgをぬってその訾蛄ち去る。
 男のあの怪我は、おそらく昨日のものだろう。そして、男は子をえていた──。
 今朝からこうやって逃げるのは何度目か。そのたびにT前に|l士《えじ》の姿がえて、ますますま街に近づけなくなる。

 午寮をxれ、山に入ってほとぼりがさめるのを待った。こんなことをしていては、いずれつかまる。わかっていても午寮の街をxれられない。
 ──消息をいてどうする。
 S俊のぶじを_かめたからといって、子が昨日彼を韦皮铺婴菠郡长趣韦膜挨胜い摔胜毪铯堡扦悉胜ぁ¥饯欷悉工扦朔袱筏孔铯恰もうとりかえしはつかない。
 ましてや、ぶじだといたからといって、|《わ》びるために街の中に入っていけるわけでもない。街へ入ればl士につかまる。そうして、それは|竟《ひっきょう》子の死を意味するのだ。
 ──どうしていいのか、わからない。
 いたずらにAい命を|惜《お》しんでいるような荬する。その半面、あっさり投げ出すのはなにかが`う荬してならない。
 Q心がつかないから、午寮をxれてしまうことができない。

 迷って迷って、何度目かに午寮のT前にもどった。兹摔の旅人をつかまえて同じ|をくりかえし、同じような返答を得た。
 いよいよとほうにくれたときだった。
「──あんた」
 背後からかけられた声に、子はとっさ逃げようとする。身をひるがえしながら振り返って、自分のほうを}jなでている母子をつけた。
「──あんた、バクロウの近くで会った……」
 子は足をとめ、しばらく|呆然《ぼうぜん》とする。いつか山道で会ったH子だった。|水《みずあめ》の行商らしく、大きな荷物は今もH子の背中にある。
「よかったこと。ぶじだったんだね」
 母Hはそう言って|微笑《わら》った。ひどく}jそうな表情だった。女の子は母Hよりももっと}jそうな表情で子を上げている。
「怪我はもういいのかい?」
 子は迷い、それからうなずいた。うなずいて深く^を下げる。
「──あのときは、ありがとうございました」
 助けてくれようとする手を振りほどいて山に入った。言~だけの礼は言ったが、心底感xをしなかった相手。
「ほんとうに、よかった。あれからどうしたろうと、荬摔胜盲皮い郡螭馈
 母Hは笑った。こんどは屈のない笑だった。
「ギョクヨウ、ほらね、ぶじだったでしょう」
 自分にすりよるようにする女の子をおろす。女の子はまだ}jそうなで子を上目づかいに上げていた。子はちょっと|微笑《わら》ってみる。そうして、自分がLいこと笑わなかったのに思いいたった。の筋肉はこわばって、すこしも笑えた荬しなかった。
 ギョクヨウはちょっとまばたきをして、それからすねたような表情で母Hの背後にLれようとする。子はかがみこんだ。
 ──このH子があのとき水と水を与えてくれなかったら、その夜をのりきれたかどうかわからない。
 こんどはもうすこし、ましに微笑えた。
「いつかは、お水と水をどうもありがとう」
 女の子は子と母Hを比べるようにして、それからちょっと笑った。笑った自分がおかしかったのか、すぐに}jなにったものの、やがてくすくすと笑いだした。子供特有の笑が、ひどく|邸钉い取筏筏て泣きたかった。
「ほんとうに、ありがとう。ちゃんとお礼を言えなくてごめんね」
 ギョクヨウは好妞诵Δ撙蚋?べてから、
「……痛かったの?」
 そういてきた。
「え?」
「お兄ちゃんは、けがが痛いからきげんがかったの?」
「──うん。そう。ごめん」
「もう、痛くない?」
「うん。治った」
 ひきつれた|痕《あと》を残して治ったをせる。そのの治りが早すぎることに、はたしてH子が荬扭い郡どうか。
 ギョクヨウは母Hを上げて、なおったって、と言う。母Hは目をめて娘をおろした。
「よかったこと。バクロウに着いてから探しにもどろうとしたんだけどね、里についたらもう]Tの刻限でね。近のl士は腰iけだから、夜には出てくれやしない。──たずね人かい?」
 子はうなずく。
「あたしたちも午寮へ行くところさ。一wに行くかい?」
 これには首を横にふるしかなかった。母Hは、そう、とだけ言った。
「──さ、ギョクヨウ。宿oに行こうね」
 言って娘の手をとって、それから彼女は子をる。
「なんて人だい? 半なんだね?」
 子は彼女を返した。
「役所かYにいるんだろう? なんて人だい?」
「──S俊、といいます」
「このあたりにいておくれね。ちょいとてこよう」
 ごくXく言って、母Hは荷物を背いなおす。子は深く^を下げた。
「……ありがとうございます」

 女は夕刻近くに、ひとりでもどってきた。S俊らしい者は、怪我人の中にも死人の中にもいなかった、とだけ言って午寮にかけもどっていった。彼女が子の身の上を理解していたのかどうか、それはわからない。

   2

 _Jしてもらってあきらめがついた。
 子の知らないgに、|午寮《ごりょう》の街を出たのか。それとも、女が落としたのか。
 それを_かめる方法はない。
 街道から午寮の街に向かって^を下げた。これはなにかの|P《ばつ》だろうと、そう{得するしかなかった。ここで全部をなげだしてしまうことだけは、どうしてもできなかった。

 夜にiいて昼には眠る。再びその生活が始まった。こうして旅をすることが多いから、子はこの国の夜ばかりをえている。
 布はS俊が持っていたので子には所持金がない。妖魔と椁盲七^ごす夜も、||《う》えて草むらで眠る朝もあまりにおなじみのことだから、不氦蚋肖袱郡辘悉筏胜ぁD康膜韦る旅だからいい。|阿岸《あがん》へ行って、|雁《えん》国へ渡る。船に\るには料金が必要だろうから、それだけはなにか方法を考えなくてはならなかった。
 |拓丘《たっきゅう》で|海客《かいきゃく》の老人に荷物を盗られてから、逆算してみると子はひと月以上、街道をさまよっていたらしい。まず肖铯氦牵珠《たま》の力を借りて、それが限界。それがわかっているから、これまでのどの旅よりもましだろう。
 |n猿《あおざる》はもうあらわれない。|鞘《さや》がもどって、の幻もなりをひそめた。わずかに水音がして鞘と|柄《つか》のすきまから光がもれることがあったが、あえて鞘からiいて幻をようとは思わなかった。そのかわりにa々とiく。ひたすら先を急いだ。
 ──あさましいこったな。そんなに命が惜しいかよォ。
 iきながら、胸の内にn猿の声をく。
 あれはそもそも子自身の不安だから、n猿の姿はなくても声は明tだった。
 ──|惜《お》しいな。
『恩人を韦皮毪瑜Δ拭でもか』
「少なくとも今は、自分の命を惜しむことにする。そうQめた」
『いっそ役所に自首し出て、すっぱり全部つぐなっちゃどうだい?』
「雁国についたら考える」
 きゃらきゃらと、その笑い声までがこえる荬した。
『ようはてめえの命が惜しいだけかよォ』
「そう。狩られているから、今はなにより命が惜しい。狩られる心配がなくなって、自分の命がまるごと自分のものになってから、どういう生き方をするのか考える。反省もつぐないも、そこで考えようと思ってる」
 ──ただ、生きのびることだけ。今は。
『妖魔をして、人をで|{《おど》しながらか』
「今はしかたないと思うことにする。今は迷わずに、とにかく早く雁国につくことを考える。雁国につけば少なくとも、追っ手に向かってを向けずにすむから」
『雁国につけば、それで全部丸くГ蓼毪韦い?』
「そうはいかないだろうけど。ケイキも探さなくちゃならないし、る方法も探さなくちゃならない。考えることもたくさんある」
『ケイキが味方だとまだ信じてるのか? エェ?』
「会えばどちらか、分かる。会うまでは考えない」
『ケイキに会ったところで、れねえぜ』
「れないことがはっきりするまで、あきらめない」
『そんなにりたいか? lも待っちゃいねえのにヨォ』
「それでも、る……」
 子は故国で人の色を|Q《うかが》って生きてた。lからも嫌われずにすむよう、lにも荬摔い椁欷毪瑜Α#叱《しか》られることが恐ろしかった。今から思えば、なにをそんなに|怯《おび》えていたのだろうと、そう思う。
 ひょっとしたら|臆病《おくびょう》だったのではなく、たんに|怠惰《たいだ》だったのかもしれない。子にとっては、自分の意を考えるより他人のいうままになっているほうがSだった。他と立してまでなにかを守るより、とりあえず周欷摔わせて波Lを立てないほうがSだった。他人の都合にうまくあわせて「いい子」を演じているほうが、自己を探して他とのしのぎを|削《けず》りながら生きていくよりもSだったのだ。
 |卑怯《ひきょう》で怠惰な生き方をした。だからもう一度れればいいと思う。ったら、子はもっと`った生き方ができる。努力するチャンスを与えられたい。
 ──そんなことを静かに考えながらiいた。

 雨がえた。そういう季なのかもしれなかった。雨の日に野宿は苦しいから、|]《ろ》に立ち寄って宿を|乞《こ》うことをえた。
 {屋の隅をJしてくれる者もいたし、代金を求する者もいた。l士を呼ばれたことも、]のB中が集まってきて叩き出されそうになったこともある。反につましいながらも食事を与えてくれた人もいた。
 そうするうちに、P力を提供して宿を借りることを学んだ。
 泊めてもらうかわりに、翌日その家でPく。仕事の内容は々だった。|田圃《たんぼ》の手护ぁ⒓窑叱、j用、家畜の世、家畜小屋の叱、墓掘り、などという仕事もあった。
 仕事によっては何日か|留《とど》まって小金を|稼《かせ》いだ。
 仕事をしながら々と]を渡りiき、トラブルになればを柄って逃げるl士を呼ばれればしばらくはどこの]でも警戒が重だったので、ほとぼりが冷めるまでは野婴悄亭à俊
 妖魔のu膜悉郡婴郡婴ったし、徐々にその数もえつつあったが长椁Δ长趣咸丐荬摔胜椁胜った。

 iく街道の背後に、子を追ってくるとおぼしきl士たちの姿がえたのは、そんな旅をひと月もAけたころだった。
 ]に立ち寄って人と接触すれば子がiいた痕Eを残すことになる。足Eを残すようなものなので、自分が追われているならばきっと追いつかれるだろうという自はあったから特にうろたえはしない。
 山に逃げzみ、追っ手をふり切ったが、そののちには街道でたびたびl士をかけるようになった。
 阿岸を封iされるのだけは怖かったので、阿岸に近づいてからは宿をがまんした。街道からもはずれて人の目に触れないよう心の注意をBって山の中をひたすらiく。
 S俊は阿岸まではひと月かかるといっていたが、gHに港がえたときにはふた月がU^していた。

   3

「あの」
 |阿岸《あがん》のT前で子は旅人をつかまえた。
 阿岸の街はなだらかな丘陵地?蛳陇盲郡趣长恧摔った。丘を下る街道からは阿岸の港が一望できる。
 |青海《せいかい》と呼ばれる海は本当に青かった。岸に向かって打ち寄せる波が白い。青い透明な海と、阿岸の海岸を抱きzむように延びた半uと、その内海に浮かんだ白い帆と。半uの向こうには真一文字に水平がえる。地面が平らなら不思hなだ。
 阿岸のT前ではいくつもの街道が交eしている。街は大きく、出入りする人もまた多かった。j踏にまぎれこみ、荬韦瑜丹饯Δ嗜宋铯松をかける。
「すいませんが、|雁《えん》国に出る船の\り方を教えてください」
 初老の男は丁にその方法を教えてくれる。船の\り方とその料金をいた。雁国までの船Uは道中に|A《た》めた小金でかろうじてたりた。
「船はいつ出ているんですか?」
「五日に一便だね。いまだと三日待たなきゃならないよ」
 出港のrgまでを正_にく。ここで失?犯郅蚍怄iされたらぜんぶがojになる。必要なことをできるだけいて、子は^を下げた。
「そうですか。ありがとうございました」
 いったん阿岸を去って、二日を山の中で^ごした。船は朝に出る。前日にもう一度阿岸のT前に立った。
 城Tの警戒はしい。街で一を^ごさなければならないから、どうあっても疑われるわけにはいかない。子は布でいたをた。今はきちんと|鞘《さや》がある。それでも〉钉筏柯萌摔隙啶なかったから、めだつことは避けられない。
 これさえなければ、そのぶん危がpる。ずいぶんと考えて|巧《こう》国に韦皮皮い长Δとも思ったが、できたらそれはしたくなかった。子が妖魔に追われているのなら、これは~に必要なものだ。城Tのl士にしても、なにもの有oだけで警戒をしているわけではないだろうから、韦皮毪长趣摔饯欷郅嗓我馕钉あるとは思えない。
 山で草を刈ってにきつけ。荷物と一wに布でいて一してとは分からない包みを作る。それを抱き、夕刻の街道にうずくまってチャンスを待った。
 道に座りこんですぐ、男が声をかけてきた。
「坊主、どうした」
 中年の男がひとりだった。
「なんでもない。ちょっと足が痛んだだけ」
 男は|胡散《うさん》臭げなをして阿岸のTへ急いで行った。
 それを送り、なおもしゃがみこんで待つ。三度目に声をかけられて、目的の相手をとらえた。
「どうしたね?」
 子供ふたりBれた夫D者だった。
「なんだか……莘证くなって……」
 子がを伏せて言うと、女が体に手をかける。
「だいじょうぶかい?」
 子はただ首をふった。ここでこの夫Dの同情を引くことができなかったら、をここに韦皮菩肖、なおかつ危を|冒《おか》さなくてはならない。oで自然に冷や汗が浮かぶ。
「だいじょうぶかい? 阿岸は目の前だ。あそこまでiけるかい?」
 かれて子は小さくうなずく。男のほうが子に肩をさしだした。
「そら、|掴《つか》まれ。もうちょっとだからな。Bれよ」
 はい、とうなずいて片手を男の肩にかける。立ち上がるときに故意に荷物を取り落とした。拾おうとする子の手を女が制す。子のかわりに拾ってくれてから、子供をふり返った。
「おまえたち、もっておあげ。Xいからね」
 言われて荷物を渡された兄弟は大まじめにうなずいた。
「iけるかね? l士に来てもらおうか」
 言われて子は首をふる。
「すみません。だいじょうぶです。Bれが先に中に入って宿を取っていますから」
「そうか」
 男は笑った。
「Bれがいるんだな。それはよかった」
 子はうなずき、ごくかるく男の肩にすがってiく。肩をJした男にはh]しているようにえるよう、周欷稳碎gにはかるく甘えているようにえるよう。
 Tが近づいた。城Tの|に立った数人のl士が急ぎ足で流れzむ人々を史证筏皮い搿G挨蛲à赀^ぎた。は感じたが呼び止められなかった。Tを^ぎ、少しのあいだiいてからようやく子は息を吐いた。そっとふり返ると、城Tはl士のが分けられないほどxれている。
 ──よかった。
 胸の中で|安堵《あんど》の息をついてから、子は男にすがった手をxす。
「ありがとうございました。Sになりました」
「だいじょうぶかい? 宿まで行こうか?」
「いえ。もう、だいじょうぶです。ほんとうに、ありがとうございました」
 深く^を下げた。嘘をついてすみません、という言~は胸のなかにしまっておく。
 夫Dはを合わせてから、荬颏膜堡啤と言ってくれた。

 この街にもy民がひしめいていた。宿のITに怪しまれるのが怖くて、城壁の下の空いたところに|座《すわ》って夜を^ごした。
 ようやく迎えた朝、子は街の通りをiいて港へ向かう。街の奥が海にむかって_かれていてそこに粗末なC颏あり、一bの、子の目には小さな、港に停泊したほかの船に比べれば大きな帆船が|《つな》がれていた。
「あれだ……」
 なんだか胸に迫る思いでC颏私づきかけ、子は足を止めた。船に\りこむ旅人の列を史证筏皮い胄l士の姿があった。
 一瞬、目の前が暗くなる。l士たちは\客の荷物を_けて中をのぞきこんでいた。
 できることならは韦皮郡ない。ものかげまで近づいて、それ以上近づくことができない。子はじっと\客とl士の姿をつめた。
 ──を韦皮毪。
 身を守る手段を失うが、このまま巧国に残るよりいい。思って、ほどhくないところの水面をたが、どうしてもそのQ心がつかない。これはケイキにつながるものだ。これを失うことはケイキとのつながりを半分断つことを──ひいては故国とのつながりを断つことを意味するような荬する。
 ──迷って迷って、それでもQ心がつかない。
 子は港をわたした。を韦皮氦耍雁《えん》国へ渡る方法はないか。|姿摇钉いそう》かの小さな帆船が停泊している。それをZっていけないか。
 ──帆船の操り方なんて知らない。
 青海は内海だといた。だとしたら、どれだけの日数がかかるか想像もつかないが、海岸沿いにiいて雁国へいけないか。
 |目眩《めまい》がするほど迷っているときに、突然高い|太鼓《たいこ》の音がいた。
 はっとをあげてわたすと、音の出所は船の甲板で、それが出港の合恧坤趣铯った。\船する旅人の列もすでに切れている。l士が所在なげに立っていた。
 ──まにあわない。
 今から走ってもl士に捕まる。荷物をほどいてを取り出すrgはない。荷物ごとを韦皮皮狻てぶらで船に\りzんでは怪しまれはしないか。|狼N《ろうばい》するからいっそう婴堡胜ぁ
 棒をのんだように立ち尽くして、子は船が帆をあげるのをていた。
 船にかかっていた渡り板が外さ