[分享]:十二国シリ`ズ 月の影 影の海 上

十二国シリ`ズ 月の影 影の海
小野不由美

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【テキスト中にFれる号について】

《》:ルビ
(例)漆\《しっこく》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する号
(例)|漆\《しっこく》の|《やみ》だった。

[#]:入力者注 主に外字のh明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のペ`ジと行数)
(例)

/\:二倍の踊り字(「く」をkにLくしたような形のRり返し号)
(例)
*岬愀钉の二倍の踊り字は「/″\」

〔〕:アクセント分解された欧文をかこむ
(例)
アクセント分解についてのは下URLを参照してください
http://aozora.gr.jp/accent_separation.html
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   月の影 影の海(上) 十二国



   一章


   1

 |漆\《しっこく》の|《やみ》だった。
 彼女はその中に立ちすくんでいる。
 どこからか高く澄んだ音色で、|滴《しずく》が水面をたたく音がしていた。ほそい音はにこだまして、まるでまっくらな|洞窟《どうくつ》の中にでもいるようだが、そうでないことを彼女は知っていた。は深く、冥ぁ¥饯翁欷猡胜地もないの中に、薄く|t《ぐれん》のあかりがともった。のかなたに炎でも燃えさかっているように、tの光は形を浃ā⒂护搿
 赤い光を背にしてo数の影がえた。|形《いぎょう》のの群れだった。
 こちらはほんとうに|踊《おど》りながら、あかりのほうからlけてくる。|猿《さる》がいて|鼠《ねずみ》がいてBがいる。さまざまなNのの姿をしていたが、どのもどこかがすこしずつ龛aでる姿とはちがっていた。しかもそのどれもが、gHの何倍も大きい。赤いと\いと青いと。
 |前肢《まえあし》をふりあげ、小走りにlける。あるいは跳Sし、宙を旋回し、まるで荬始坤涡辛肖扦饨づいてくるようだった。荬趣いà嘘荬摔线`いなく、祭といえば祭にはちがいない。
 形の者たちは咨者をめがけて走っているのだ。|生《い》け|《にえ》を血祭りにあげるZ喜に、小Sりしながらlけてくる。
 その^に⒁猡Lのように吹き付けてきていた。形の群の先^まで、もう四百メ`トルもない。どのも大きく口を_けて、声はいっさいこえなかったが、Z声を上げているのだと表情でわかる。声もなく足音もなく、ただ洞窟で水がしたたるような音だけがつづく。
 彼女はlけてくる影をただ目を_いてつめていた。
 ──あれが、来たらされる。
 そう理解できても、身婴できない。おそらくは|八《や》つ|裂《ざき》にされ、|小钉》われるのだろうと思ったが、まったく体が婴なかった。たとえ体が婴い郡摔筏皮狻⑻婴菠鏊もなく椁Ψ椒à猡胜ぁ
 体の中で血液が逆流する荬する。その音が耳にこえるような荬する。それはひどく|潮X《しおさい》に似ていた。
 つめるあいだに、距xは三百メ`トルにsまった。

 |子《ようこ》はwび起きた。
 こめかみを汗がつたう感触がして、目にい酸味を感じる。あわてて何度もまばたきをして、そうしてやっと深い息をついた。
「簟…」
 声に出したのは_Jしておきたかったからだった。ちゃんと_Jをして、自分に言いかせていないと不安になる。
「あれは、簸胜螭馈
 簸诉^ぎない。たとえそれが、このところひと月にわたってAいている簸坤恧Δ取
 子はゆっくりと首をふる。部屋のなかは厚いカ`テンのせいで暗い。枕元のrを引き寄せてみると、起きるrgにはすこし早かった。体が重い。手を婴すのにも足を婴すのにも|粘《ねば》りついたような抵抗を感じた。
 あの簸颏悉袱幛皮撙郡韦悉窑仍陇郅汕挨坤盲俊
 最初はたんなるでしかなかった。高くうつろに水滴の音がして、まっくらなのなかに自分がただ一人でたたずんでいる。不安で不安で婴たくても身婴ができない。
 の中に|t《ぐれん》のあかりがえたのは、同じ簸三日Aいた後だった。簸韦胜の子は、あかりのほうから|怖《こわ》いものが来ることを知っていた。ただのなかに光がある、それだけの簸吮Qをあげてwび起きて、それを五日もAけたころに影がえた。
 最初は赤い光のなかに浮かんだシミのようにえた。何日か同じ簸蛞るうちに、それが近づいてくるのだとわかった。それがなにかの群れだとわかるまでに数日がかかり、形のだとわかるまでにさらに数日を要した。
 そうして、と子はベッドの上のぬいぐるみを引きよせた。
 ──もうあんなに近い。
 ひと月をかけて地平からの距xをB中はlけぬける。おそらく明日か、明後日には子のそばにたどりつく。
 ──そうしたら、自分はどうなるのだろう。
 そう考えて子は^をふった。
 ──あれは簸馈
 たとえひと月Aいていても、ましてや日ごとにすすむ簸扦狻簸簸扦筏ないはずだ。
 言いかせても不安は胸を去らない。鼓婴纤伽て、耳の奥で血液がlけ巡る潮Xのような音がしている。荒い呼吸がのどを|灼《や》いた。しばらくのあいだ子は、すがるようにしてぬいぐるみを抱きしめていた。
 寝不足と疲氦侵丐ぬ澶颏啶辘似黏长筏啤⒅品に着がえて下に下りた。なにをするのもひどくおっくうで、おざなりにを洗ってダイニング・キッチンに行く。
「……おはよ」
 流しにむかって朝食の用意をしている母Hに声をかけた。
「もう起きたの? 最近早いのね」
 母Hは言って子をふりかえる。チラリと投げられたが子に止まって、すぐに|《けわ》しい色になった。
「子、また赤くなったんじゃない?」
 一瞬、なんのことを言われたのかわからずに子はきょとんとし、それからあわててを手で|束《たば》ねた。いつもならきっちりんでからダイニングにを出すのだが、|今朝《けさ》は眠る前にんだをほどいて|薄钉し》を入れただけだった。
「ちょっとだけ染めてみたら?」
 子はただ^をふった。ほどけたがふわふわと|]《ほお》をくすぐった。
 子のは赤い。もともと色が薄いうえに、日にけてもプ`ルに入ってもすぐに色がiけてしまう。背中までを伸ばしているが、伸ばすと毛先の色がぬける。おかげでほんとうに脱色したような色になってしまっていた。
「でなきゃ、もっと短く切る、とか」
 子はo言でうつむく。うつむいたまま大急ぎでをんだ。きっちり三つにすると、すこしだけ色が猡える。
「lに似たのかしら……」
 母Hはしいでためいきをついた。
「このあいだ、先生にもかれたわよ。ほんとうに生まれつきなんですか、って。だから染めてしまいなさい、って言ってるのに」
「染めるのは禁止されてるから」
「だったらうんと短く切れば? そうしたら、すこしはめだたなくなるわよ」
 子はうつむく。母Hはコ`ヒ`を入れながら、冷たい口{でつづけた。
「女の子は|清楚《せいそ》なのがいぢはんいいのよ。目立たず、おとなしくしてるのがいいの。わざわざ目立つよう、はでな格好をしているんじゃないか、なんて疑われるのはuずかしいことよ。あなたの人g性まで疑われてる、ってことなんだから」
 子はaってテ`ブルクロスをつめる。
「そのをて不良だと思うひともいると思うの。[んでる、っておもわれるのもいやでしょ。お金をあげるから、りに切ってらっしゃい」
 子はひそかにためいきをつく。
「子、いてるの?」
「……うん」
 答えながらのそとに目をやった。ゆううつな色の冬空が冥っていた。二月なかば、まだまだ寒さはしい。

  2

 子が通っているのは平凡な女子校だった。女子校であるということ以外、なんの特栅猡胜に搅⒏咝!8赣Hが断固としてxんだ学校だった。
 子の中学r代の成は比^的よいほうだったから、もっと上のレベルの学校も|狙《ねら》えたし、事g教はくほかの学校をすすめたのだが、父Hはゆずらなかった。家から近いこと、い蒿Lも、反にAやかな校Lもないことが荬巳毪盲郡椁筏ぁ
 最初は模の成表をて|惜《お》しそうにしていた母Hも、すぐに父Hにm成した。IHがうなずけば子にはxkの余地がない。すこしxれたところに制服が荬巳毪盲皮い胙校があったが、制服にこだわってダダをこねるのも荬とがめたので、だまってそれにしたがった。そのせいかどうか、入学して一年になろうとしている学校には、今も特に圩扭わかない。
「おっはよ`」
 子が教室に入ると、あかるい声がした。二、三の女の子が子にむかって手を上げている。なかのひとりがlけよってきた。
「|中搿钉胜じま》さん、数学のプリントやってる?」
「うん」
「ごめ`ん。せて」
 子はうなずく。Hにある自分の席についてからプリントを引っぱり出した。数人の女の子が机のまわりに集まって、さっそくそれを写しはじめる。
「中毪丹螭盲皮蓼袱幛胜螭坤亭А¥丹盲工、委TL」
 言われて子はあいまいに|微笑《わら》う。
「ホント、まじめ。あたし宿}なんてきらいだから、すぐ忘れちゃう」
「そう、そう。やろうと思ってもよくわかんないし。ダラダラrgかかって、それで眠くなっちゃうんだよね。^のいいひとはいいよなぁ」
「こんなの、一瞬でKわっちゃうんでしょ」
 子はあわてて首をふる。
「そ、そんなことない」
「じゃ、勉が好きなんだ」
「まさか」
 子は笑ってみせた。
「うち、母Hがしくて」
 それは事gではなかったが、こう言っておいたほうがカドがたたない。
「寝る前にいちいちチェックするから、いやになっちゃう」
 母Hはむしろ子が勉することをきらう。成などどうでもいいというわけではなかったが、塾に行くrgがあったら家事をえなさい、というのが母Hの言い分だった。それでもまじめに勉をするのは、好きだからというわけではない。ただ教に|叱《しか》られるのが怖いからだった。
「ひゃあ。教育ママなんだ」
「そうなの。勉、勉ってうるさくて」
「わかる、わかる。ウチもだよぉ。人のると、勉ってさぁ。自分はそんなに勉が好きだったのか、って`の」
「だよね」
 どこかほっとしながら子がうなずいたとき、女の子のひとりが小さな声をあげた。
「あ、|杉本《すぎもと》だ」
 教室にひとりの少女が入ってくるところだった。
 チラチラと全Tのが向けられて、そうしてすぐにxれていった。しんとそらぞらしい空荬流れる。
 その生徒をoするのが、ここ半年ほどクラスではやっている[びだった。彼女はそんなクラスの|子《ようす》を上目づかいにわたしてから深くうつむいた。おずおずと子のほうにiいてくると左Oの席に腰をおろす。
「中毪丹蟆おはよう」
 h]がちに声をかけられて子はとっさに返事をしそうになり、あわててそれをのみこんだ。いつだったか、うっかり返事をして、あとでクラスメイトに皮肉を言われたことがある。
 それでもだまったまま荬つかなかったふりをした。くすくすと周欷扦筏韦有Δいおこる。
 笑われたほうはついたようにうつむいたが、物言いたげに子にをよこすのをやめなかった。それを感じながら、子は周欷位嵩に相づちをうつ。oされる彼女を哀れに思うけれど、情けをかけて周欷四妞椁à薪穸趣献苑证被害者になる。
「あの……中毪丹蟆
 Oからおずおずとした声がこえたが、子はこれにも荬つかなかったふりをした。故意にoする莘证悉摔い。それでも子には、ほかにどうすればいいのかわからなかった。
「中毪丹蟆
 彼女は|辛抱《しんぼう》づよく何度もくりかえす。そのたびに周欷紊がとぎれ、やがてその訾思まっていた全Tが彼女のほうに冷たいを向けた。子もそれ以上oすることができなくて、上目づかいに自分をている相手に目を向ける。を向けたが、返答はしなかった。
「あの……数学の予やってる?」
 彼女のおずおずとした声に、子の周欷どっと笑いくずれた。
「……いちおう」
「いけど、せてくれない?」
 数学の教は授Iで当てる生徒を前もって指名する。そういえば彼女が今日指名されていたことを子は思い出した。
 子はを友人たちに向ける。lもなにも言わず、同じ色のでそれにこたえた。全Tが、彼女を拒~する子の言~を期待しているのだとわかる。子はにがいものをのみこんだ。
「まだ、直しをしたいところがあるから」
 |婉曲《えんきょく》な拒~はQ客の荬巳毪椁胜ったようだった。すぐさま声がかかる。
「中毪丹螭盲啤やさし`い」
 ふがいない、と暗にめている声だ。子はo意Rのうちにをすくめた。eの生徒がそれに同意する。
「中毪丹蟆ピシャッと言えばいいのに」
「そうそう。あんたなんかに、声をかけられるの、迷惑だって」
「世の中にはハッキリ言わないとわからないバカっているからさぁ」
 子は返答に困る。周欷纹诖をY切る勇荬铣证皮胜い堡欷伞⑼rにまた、Oの席でうつむいているクラスメイトにあえてひどい言~を投げつける勇荬獬证皮胜った。それで子はただ困ったように|微笑《わら》う。
「……う`ん」
「ホントにら中毪丹螭盲啤ひとがいいんだから。だからlかさんみたいなのに、アテにされるんだって」
「あたし、いちおう委TLだし……」
「当たるのがわかってるのに、やってこないほうがいんだって。そんな奴のめんどうまでみることないよぉ」
「そう。──だいいち」
 と言った生徒は|酷薄《こくはく》な笑みをうかべた。
「杉本なんかにノ`トをJしたら、ノ`トがAれるじゃない」
「あ、それは困るかも」
「でしょお?」
 どっ、と再び全Tが笑いくずれる。いっしに笑いながら子はのすみでOの席の子をうかがう。深くうつむいた少女は妞颏长埭筏悉袱幛俊
 ──杉本さんにも、任はある。
 子はそう自分に言いかせる。lもが理由もなく被害者をQめるわけではない。被害者になったからには、彼女の中にそれなりの要因があるのだ。

   3


 ──天もなく地もないのなかに、高く高くうつろに水滴の音がする。
 子はそののなかに立っていた。
 が向いた方向に、薄く|t《ぐれん》のあかりがえる。その光を背にo数の影が|蠢《うごめ》いている。|形《いぎょう》のの群れが踊りながらlけてくる。
 群れと自分のあいだはもう二百メ`トルほどしかない。形のものたちが大きいだけに、それは恐ろしく短い距xにえる。|哄笑《こうしょう》の形に口をあけた大きな猿の、赤い毛Kみが光を|《はじ》いて、跳Sするたびに盛り上がってはのびる筋肉の婴がてとれる。もうそれだけの距xしかない。
 体を婴すことも声をあげることもできなかった。まなじりが裂けるほど目をって、近づいてくる群れを守っているしかない。
 走る。跳Sする。踊るようにlけてくる。吹きつけてくる⒁猡贤伙Lのように呼吸をまらせた。
 ──起きなきゃ。
 あれがたどりつく前に、簸らめなければ。
 そう念じても目める方法がわからない。意志の力で起きることができるのなら、とっくにそうしている。
 なすすべもなくつめるあいだに、距xはさらに半分にsまった。
 ──起きなきゃ。
 nぎしりするほどの|焦燥《しょうそう》にuわれる。|身内《みうち》でうずまいて肌を突き破りそうだ。荒い呼吸と速い鼓婴取Ⅰlけめぐる血潮が海Qりに似た音を立てる。
 ──どうにかして、ここから逃げなければ。
 そう思ったとき、突然^上に菖浃蚋肖袱俊⒁猡子を押しつぶす荬い锹湎陇筏皮る。子は簸韦胜で初めて身婴をした。^上をふりあおいだ。
 茶色の翼がえた。同じく茶色のたくましい脚と、おそろしくい太い爪と。
 逃げる、という意志さえ念^に浮かぶ暇がなかった。一瞬、体の中の潮Xがくなって、子はただ悲Qをあげた。

「中毪丹螅 
 子はとっさにその訾蛱婴菠俊L澶逃げることを切望していて、思わずそれに兢盲皮筏蓼盲俊L婴菠酷幛扦瑜Δ浃周欷子が目に入る。
 あきれた表情の女教と、同じくあきれた表情の生徒たち。一拍送れて、どっと笑いがわいた。
 ほっと息をついてから、子はにわかに赤くなった。
 眠っていたのだ。このところ簸韦护い乔蓼膜がく、眠りも常に浅かった。ずっと寝不足ぎみだったから授I中にトロトロしたことはよくあるが、簸蛞たのははじめてだった。
 ツカツカと女教が近づいてきた。どういうわけだが子を目のかたきにしている教だった。よりによって、と子は唇をかむ。子はおおむね教にうけがよかったが、いくら卷にふるまっても、この教とだけはうまくやっていくことができなかった。
「……まったく」
 彼女はそう言って英Zの教科で子の机を叩く。
「いねむりをする生徒ならいますけどね、寝ぼけるほどゆっくりお休みいただいたのは、はじめてですよ」
 子はうなだれて席にる。
「あなたは、なにをしに学校へ来てるんですか。眠いんだったら家で寝ていればいいでしょう。授Iがいやなら、なにもむりに来ていただかなくてもいいんですよ」
「……すみません」
 教は教科の角で机を叩く。
「それとも、そんなに夜[びでいそがしいの?」
 どっと生徒たちが笑った。てらいもなく笑った生徒のなかには、友_の姿も混じっている。こえよがしの笑い声が左Oからもこえた。
 女教はかるく、ひとつにんで背中にたらした子のを引っった。
「これ、生まれつきなんですって?」
「……はい」
「そう? わたしの高校の友_にもいたわね、こういうのひとが。なんだか彼女を思い出すわ」
 そう言ってから教は笑う。
「もっとも、その人はあなたと`って脱色してたんだけど。三年のときにaГ丹欷蒲校を|辞《や》めちゃったの。今ごろどうしてるかしら。なつかしいわ」
 教室のあちこちで、しのび笑う声がおこる。
「──それで? 授Iをうける荬あるの? ないの?」
「……あります」
「そう? じゃ、rg中立ってなさい。そうすれば起きてられるでしょう?」
 教はそう命じてふくみのある笑い方をしてから、教にった。
 立ったまま授Iを受けたそのrg中、教室の中ではしのび笑いが~えることがなかった。

 子はその日の放n後、担任の呼び出しをうけた。どうやら英Zのrgの|所I《しょぎょう》が耳に入ったらしい。
 T室に呼び出されて、どういう生活をしているのかL々といただされた。
「夜[びをしてるんだろう、と言う先生もいるしな」
 中年の担任はそう言ってをしかめる。
「どうなんだ? なにか夜ふかしをするような事情でもあるのか」
「……いえ」
 まさかあんな簸卧を他人にできない。
「夜Wくまでテレビでもてるのか」
「いえ、あの……」
 子はあわてて理由を探す。
「中gテストで成が落ちたので……」
 担任はあっさり{得したようだった。
「ああ、そういやちょっとかったな。それでか。──だがな、中搿
「はい」
「いくら家で夜Wくまで勉しても、かんじんの授Iをいてなきゃ意味がないぞ」
「すみません」
「あやまってもらうようなことじゃないが。中毪险`解されやすいんだよ。けっこうそのの毛が目立つんだよなぁ。それ、なんとかならんか?」
「今日、切ろうと思ってたんです……」
「そうか」
 そう言って担任はうなずく。
「女の子だからなぁ。いやだろうけど、そのほうがおまえのためだとおもうぞ。先生は。染めてるだの、[んでるだのと言う先生もいるしな」
「はい」
 担任は子に手をふる。
「じゃ、っていいから」
「はい。失礼します」
 子は^を下げる。そのときだった。背後から声をかけられたのは。

   4

「……つけた」
 声といっしょにかすかに海の訾いした。
 担任が不そうにEうこの背後をて、それで子もふりかえる。
 子のうしろには若い男が立っていた。まったくえのないだった。
「あなただ」
 男はまっすぐ子をて言う。年は二十代後半といったところだろう。ぽかんとするくらい奇妙な男だった。|裾《すそ》のLい着物に似た服を着ている。能面のようなにを|膝Y《ひざうら》に届くほどLく伸ばして、それだけでも|こ!钉袱螭袱绀Α筏扦胜奇妙だというのに、そのがとってつけたように薄い金色をしている。
「lだ、君は」
 担任がとがめるようにく。男はそれを荬摔筏郡栅Δ猡胜、さらにあぜんとするようなことをやってのけた。子の足元に膝をついて、深く^を下げたのだ。
「……お探し申しあげました」
「中搿おまえの知りあいか?」
 担任にかれ、ぽかんとしていた子はあわてて首をふった。
「ちがいます」
 あまりに常な事Bに、子はもちろん、担任もうまく反辘できないようだった。困惑した莘证且つめていると、男は立ち上がる。
「どうか私とおいでください」
「はぁ……?」
「中搿なんなんだ、こいつは」
「わかりません」
 きたいのは子のほうだった。救いを求めて担任をる。T室に残っていたほかの教たちがけげんそうに集まってきていた。
「なんだ、おまえは? 校内はvS者以外は立ち入り禁止だぞ」
 担任がやっとそれに思い至ったようにく言うと、男はo表情に教を返す。すこしもびれたところがなかった。
「あなたにはvSがない」
 冷たく言って周欷思まった教たちをわたす。
「あなた方もです。さがりなさい」
 あまりにも|居丈高《いたけだが》な物言いにlもがまず@いている。同じように@くばかりの子を男はすえた。
「事情なら、おいおいh明いたします。とにかく私とおいでください」
「失礼ですけど」
 lなんですか、と子がきかけたとき、ふいにg近で声がいた。
「タイホ」
 人を呼ぶZ{の声に男がをあげる。この奇妙な男の名前なのかもしれない。
「どうした」
 |眉《まゆ》をひそめて男がい返した方向にはしかし、声の主は当たらなかった。どこからともなく再び声がいた。
「追っ手が。つけられていたようです」
 能面のようなが急に|《けわ》しい表情になった。ただうなずいて子の手首をつかむ。
「失礼を。──ここは危です。こちらへ」
「……危、って」
「h明をする余裕はありません」
 ぴしゃりといわれて子は思わず身をすくめる。
「すぐに长来ます」
「……常俊
 なんとはなしに不安を感じてい返したときだった。もう一度近くで声がした。
「タイホ、来ました」
 回したけれど、やはり声の主の姿はえない。教たちが何かを言いかけるのと同rだった。
 ──Y庭趣畏ガラスが割れたのは。

 割れたのは子のg近の一枚だった。とっさに目を]じた子の耳に、ガラスのZける音に混じって悲Qじみた叫びがこえた。
「なんだ!?」
 担任の声に]じた目を_くと、教はガラスが割れたにlけ寄るようにして外を回していた。冥ごà嗣妞筏糠からは冷たいLが吹きzんで、冷荬趣い盲筏绀恕なにか|生臭《なまぐさ》い臭荬蛲猡ら\んできていた。床には破片が散乱している。比^的のそばにいたにもかかわらず子が破片をかぶらずにすんだのは、奇妙な男が|盾《たて》になってくれたからだった。
「なに……?」
 状rがつかめずにう子に、男がいくぶん冷ややかな声を出した。
「だから危だと申しあげましたのに」
 言って、あらためて子の腕をつかむ。
「こちらへ」
 い不安を感じた。つかまれた腕をふりほどこうとしたが、男はまったくxすふうがない。それどころかかえってく引っる。たたらを踏んでよろめいた子の肩に手をかけた。
 引っる男を押しとどめたのは、担任だった。
「これは、おまえのしわざか!?」
 男はをふくんだ目で担任をる。あげた声は冷ややかで|容赦《ようしゃ》がなかった。
「あなたにはvSがない。さがっていなさい」
「えらそうに、なんだ、おまえは。うちの生徒になんの用だ? 外に仲gでもいるのか!?」
 男に向かって怒Qってから子をにらむ。
「中搿どういうことなんだ!?」
「……わかりません」
 きたいのは子のほうだった。首をふる子を男は引っぱる。
「とにかく、ここは」
「いやです」
 こういう`解は恐ろしい。こんな男と仲gだなんて思われたら。身をよじって男の腕をふりほどくと同rに、再びどこか上のほうから声がした。
「タイホ」
 oした声だった。教たちが声の|主《ぬし》を探すように周欷蛞まわす。男はあきらかにをしかめた。
「まったく、|B迷《がんめい》な」
 吐き韦皮毪瑜Δ搜预盲皮ら、男はいきなり膝をついた。反辘工腴gも与えず子の足をつかまえる。
「ゴゼンヲハナレズチュウセイヲチカウトセイヤクスル」
 早口に言うやいなや、子をにらみすえた。
「Sす、と」
「なんなの!?」
「命が惜しくないのですか。──Sす、とおっしゃい」
 Z莼膜言われ、けおされて子は思わずうなずいていた。
「Sす……」
 ついで男がとった行婴稀㈥子を|呆然《ぼうぜん》とさせるのにじゅうぶんだった。
 一拍おいて、周欷らあきれたような声があがる。
「おまえら!」
「なにを考えてるんだ!」
 子はひたすらあぜんとしていた。このず知らずの男は^をたれて、つかまえた子の足の甲に~をあてたのだ。
「なにを──」
 するの、と言いかけて子は言~をとぎらせた。
 たちくらみがした。なにかが自分のなかをlけiけていって、それが一瞬、目の前をまっくらにする。
「中耄 ?嗓ΔいΔ长趣溃。俊
 をまっかにした担任が怒声をあげるのと同rだった。
 どん、と低い地きのような音がして、Y庭趣瞬肖盲骏ラスというガラスが白く|帷钉摔础筏盲俊

   5

 その一瞬は、まるで大量の水が吹きこんでくるようにえた。
 |Z《くだ》け散ったガラスの破片が利な光を|《はじ》いて水平に⒌饯筏皮る。
 とっさに目を]じ、腕をあげてをそむけた。その腕に、に体に小さな痛みが吹きつけてくる。すさまじい音がしたはずだが、子の耳には届かなかった。
 小石のぶつかるような感触が~えたことを_Jして目を_けると、教室はガラスの破片で光を|撒《ま》いたようにえた。集まってきた教たちがその訾摔Δ氦まっている。子の足もとには担任が身を伏せていた。
 大丈夫ですか、といかけて、彼の体にはo数の破片が刺さっているのをkする。教たちがあげているうめき声がようやく子の耳に入った。
 子はとっさに自分の体をおろす。担任の|に立っていたにもかかわらず、子の体にはひとつなかった。
 ただ@くしかない子の足を担任がつかんだ。
「おまえ……なにをしんたんだ」
「あたしは、なにも」
 その血だらけの手を引きはがしたのは男だった。
「行きましょう」
 この男もoだった。
 子は首を横にふる。ついてけいばほんとうに仲gだと思われてしまう。それでも手を引かれるままつい足を婴してしまったのは、その訾瞬肖毪韦恐ろしかったからだった。长来る、という言~にはFg感がない。それよりも|怪我人《けがにん》だらけで血の臭いのたちこめた、この鏊にとどまっていることが怖かった。

 T室をwび出したところでlけつけてきた教に会った。
「どうした!?」
 初老の教は怒Qり、子の|にいる男に目をとめて|眉《まゆ》をひそめる。子がなにを言うよりも早く、男が手を上げてT室を示した。
「手当てを。怪我人がいる」
 それだけを言って子の手を引く。背後で教がなにかを叫んだが、なんと言ったのかはわからなかった。
「どこへ、行くんですか」
 子が声をあげたのは、男がA段を下りようとせず上がろうとしたときだった。この訾颏趣摔く逃げ出して家にりたかった。そう意恧筏齐A下を指さす子の腕を、男は上に向かって引く。
「そっちは屋上……」
「いいから、こちらへ。そちらからは人が来る」
「でも」
「我々が行くとかえって迷惑をかける」
「迷惑、って」
「ovSな物をまきこむことをお望みか」
 男は屋上へ通じるドアを_く。く子の手を引いた。
 ovSな者をまきこむということは、子はovSではないということなのだろうか。男が言った「场工趣稀いったいなんだろう。きたかったが、なんとなく|葆帷钉おく》れがした。
 手を引かれるまま、なかばよろめくようにして屋上へ出たとき、背後から奇声がとどろいた。
 |《さ》びた金具がたてたような声に、子は背後にを走らせる。今出てきたばかりのドアの上に影がえた。
 茶色の翼。毒々しい色合いの曲がった|嘴《くちばし》が大きく_かれて、d^した猫のような奇声をあげている。
 I翼の先までが五メ`トルはあろうかという巨Bだった。
 ──あれは。
からめとられたように身婴ができなかった。
 ──あれは、簸韦胜の。
 建物の屋根から、奇声といっしょに夂瘠⒁猡降ってくる。夜をむかえはじめた|姨臁钉嗓螭皮蟆筏慰栅习丹ぁ4螭な|襞《ひだ》をみせるに、どこからかもれた夕がかすかに赤い光を投げていた。
 |《わし》に似たそのBには|角《つの》があった。首をふり、大きく一度|羽《は》ばたきすると、いやな臭荬韦工腼LがR力をもって吹きつけてきた。簸韧じように、子はそれをただていた。
 巨Bの身体が舞いあがる。ごくかるく浮きあがると、宙でもう一度羽ばたきし、そうして急に翼の角度を浃à俊
 急降下してくるB荬馈と子は|呆然《ぼうぜん》と思った。太い脚が子をまっすぐに示している。茶色の羽毛におおわれた脚には、R倒されるほど太くい|^爪《かぎづめ》がえた。
 子が立ち直るひまもなく、Bの身体が落下してくる。悲Qをあげることさえできなかった。
 子の目は_かれたままだったが、なにもていなかった。それで肩にgいn膜当たったときにも、それが自分を引き裂く^爪のせいなのだとすんなり{得した。
「ヒョウキ!」
 どこからか声がいて、目の前に暗い赤い色が流れた。
 ──血だ……。
 そう思ったが、不思hにさほどの痛みは感じなかった。
 子はようやく目を]じる。想像していたよりもSそうだ、と思った。死ぬことはもっと恐ろしいことだと思っていたのだけれど。
「しっかりなさい!」
 い声の主に肩をゆすられて、子は我に返った。
 男がをのぞきこんでいた。背中にコンクリ`トの感触がして、左の肩にフェンスの预じ写イ食いこんでいる。
「自失している龊悉扦悉胜ぃ 
 子は跳ね起きた。立っていたはずの鏊から、かなりhい鏊に子はがっている。
 奇声がいて、ドアの前で巨Bが翼をふっているのがえた。
 羽ばたくたびにR力のあるLが吹く。^爪は屋上のコンクリ`トをえぐっていた。爪が深く床に食いこんでBは身婴がとれないようだった。
 いらだったように大きく首をふる。その首に赤いが肖椁い膜い皮い毪韦えた。暗い赤の毛Kみにおおわれた|豹《ひょう》のようなだった。
「……なに」
 子は悲Qをあげた。
「なんなの、あれは!」
「だから危だと申しあげたのに」
 男は子を引き起こす。子は一瞬だけ男とBをくらべた。
 Bとはもつれ合うようにして|《せ》り合いをAけている。
「カイコ」
 男の声に呼ばれたように、コンクリ`トの床から一人の女がFれた。まるで水面に浮かびあがってくるように羽毛におおわれた女の上半身がFれる。
 女はBの翼のようなその腕に一本のを抱いていた。宝、といっていいような美な|鞘《さや》のだった。|柄《つか》は金、鞘にも金の装がある。宝石らしい石を散らし、|玉《たまかざ》りをつけたそのはとうていg用に耐えるようにはえない。
 男は女の腕からを取りあげる。手にとったそれをまっすぐ子に突きつけた。
「……なに」
「あなたのものです。これをお使いなさい」
 子はとっさに男とをくらべた。
「……あたしが? あなたじゃなくて?」
 男は不快げなをしてを子の手に押しこんだ。
「私にはをふるう趣味はない」
「こういう龊稀あなたがそれで助けてくれるんじゃないの!?」
「あいにく技を知らない」
「そんな!」
 手のなかのはかけよりも重い。とうていふりまわせるとは思えなかった。
「あたしだって知らない」
「おとなしくされてさしあげるおつもりか」
「いや」
「ではそれをお使いなさい」
 子の^のなかは混乱のO致にあった。されたくない、という思念だけがい。
 だからといってをふりかざして椁τ荬悉胜ぁ¥饯螭柿Δ浼剂郡あるはずがない。を使えという声と、使えるはずがないという声と、IOの声が子に第三の行婴颏趣椁护俊
 つまり、を投げつけたのだ。
「なにを──おろかな!」
 男の声には|@愕《きょうがく》と怒りとが混じっている。
 Bをめがけて子が投げたは、目摔私欷もしなかった。打ちふるう翼の先をわずかにかすめて巨Bの足元に落ちる。
「まったく。──ヒョウキ!」
 舌打ちするのがこえそうな声だった。
 男の声にBの翼に爪をたてていた暗赤色のがxれる。xれざま身をかがめて落ちたをくわえると、矢のように子のほうへとlけってくる。
 をうけとりながら男はにう。
「持ちこたえられるか」
「なんとか」
 @いたことに返答したのは、まぎれもなくヒョウキと呼ばれた暗赤色のだった。
 mむ、と短く言って男はだまってひかえていたBのような女に声をかける。
「カイコ」
 女がうなずいたとき、かな石がwんできた。
 巨Bが爪をiいてコンクリ`トの|w沫《ひまつ》があがったところだった。
 舞いあがろうとする巨Bに赤いが跳びつく。いつのgにか全身をFして宙に舞い上がっていた女がそれに加わった。女の脚は人そのもの、ただし羽毛におおわれて、さらにLい尾がある。
「ハンキョ。ジュウサク」
 男に呼ばれて女がFれたのと同じように、二^の大きながFれた。一方は大型犬に、一方は|狒狒《ひひ》に似ている。
「ハンキョ、ここは任せる。ジュウサク、この方を」
「|御意《ぎょい》」
 二^のは^を下げた。
 うなずき返し、男は背を向ける。ためらいのない婴でフェンスにiみ寄ると、するりと姿をかき消した。
「……そんな! 待って!」
 叫んだときだった。狒狒に似たが腕を伸ばした。
 子の身体に手をかけ、有oを言わさず抱えzむ。子はとっさに悲Qをあげた。それをoして狒狒は子を小|に抱える。その訾蝓恧盲匹榨Д螗工瓮猡颂Sした。

   6

 狒狒は屋根から屋上へ、屋上から柱へ、@的な跳SをRり返してLのようにlけた。
 子がその乱暴な\送から_放されたのは街はずれの海岸、港に面した突堤の上だった。
 狒狒は抱えた子を地面におろし、子が息をついているあいだに一言もなく消えうえせた。どこへ消えたのかと周欷蛞渡していると、eみあげられた巨大なテトラポッドのあいだからすべり出るようにして宝をさげた男の姿がFれた。
「ごぶじか」
 かれて子はうなずく。|眩《めまい》がするが、これは狒狒の跳SにEったせい、そうして次々におこる常Rはずれのできごとのせいだと自していた。
 足腰がなえてその訾俗りこむ。意味もなく妞こぼれた。
「お泣きになっている龊悉扦悉胜ぁ
 子はいつのgにか|傍ら《かたわ》に膝をついた男をた。いったいなにがおこったのか。うように男をあげたが、男にはh明する荬ないようだった。
 子は目を伏せる。男のB度はあまりにもそっけなくて、あえて|をする勇荬出ない。それで震える手で膝を抱いた。
「……怖かった」
 つぶやいた子に、男はい口{で吐き韦皮毪瑜Δ搜预Α
「なにを悠Lなことを言っておられる。じきに追ってくる。ゆっくり息を整えている|q予《ゆうよ》はないのですよ」
「追って……くる?」
 @いてあげると、男はうなずく。
「あなたがお|亍钉》りにならなかったのだから、しかたない。ヒョウキたちが足止めをしているが、おそらくそんなにはもたないでしょう」
「あのBのこと? あのBはなんだったの?」
「コチョウ」
「コチョウって?」
 男は|X蔑《けいべつ》したような目つきをした。
「あれのことです」
 子は身をすくめる。そんなh明ではわからない、という抗hは声にならなかった。
「あなたは、lなんですか? どうして助けてくれたんですか?」
 短く言ったきり、それ以上のh明はない。子はかるくためいきをついた。タイホというのが名前ではないの、ときたかったが、とうていけるようなム`ドではなかった。
 こんな|得体《えたい》の知れない男の前から逃げ出して家にりたかったが、教室に|《かばん》とコ`トをおいたままだった。とうていひとりで取りにる荬摔悉胜欷胜い、かといってこのまま家にるわけにもいかない。
「──もうよろしいか?」
 とほうにくれた思いでうずくまっていると、唐突にそうかれた。
「よろしい、って」
「もう出kしてもよろしいか、とおきした」
「出kってどこへ?」
「あちらへ」
 あちら、というのがどこなのか、子にはまったくわからなかった。ただほぼんやりしている子の手を男がつかんだ。腕を引かれて、これで何度目だろう、と思った。
 どうしてこの男は鹤悚收h明もなしに、子になにかを制しようとするのだろう。
「……ちょっと待ってください」
「そんなひまはない」
 男はいらだった口{で言う。
「じゅうぶんお待ち申しあげた。これ以上の余裕はない」
「それは、どこなんですか? どれくらいのrgがかかるの」
「まっすぐに行けば、片道に一日」
「そんな、困ります」
「なにを」
 とがめるように言われて、子をうつむく。とりあえずいってみようと思うには、男はあまりにも得体がしれない。
 片道に一日というのも子にとっては外の数字だった。IHになんと言って家を|空《あ》ければよいのか。^の固いIHが、子のひとり旅などSすはずがない。
「……困ります」
 なんだか泣きたかった。なにひとつ子にはわからない。男はなにもh明してはくれない。それなのに、こんなむりな要求を怖いでつきつけるのだ。
 泣けばまた叱られるだろうから、必死で妞颏长椁à俊
 ひたすら膝を抱いてだまりこんでいると、突然またあの声がいた。
「タイホ」
 男は空をあげる。
「コチョウか」
「はい」
 ぞっ、と子の背筋を|寒《おかん》が走った。あのBが追ってきたのだ。
「……助けてください」
 男の腕をつかむと、男は子をふりかえる。手にさげたを突きつけた。
「命がおしければ、これを」
「でもあたし、こんなの使えません」
「これはあなたにしか使えない」
「あたしには、むりです!」
「ではヒンマンをおJしする。──ジョウユウ」
 呼ばれて地面から男のが半分だけFれた。
 岩でできたような、色のい男で、くぼんだ目が血のように赤い。
 するりと地中からiけ出したその首の下には身体がなかった。半透明のゼリ`状のものがくらげのようにまといついているだけだ。
「……なに!?」
 小さく悲Qをあげた子をよそに、それは地中からすべり出る。まっすぐ子に向かってwんできた。
「いや!」
 逃げようとした子の腕をケイキがつかむ。
 逃げ出すに逃げ出せない子の首のうしろに、ごとんと重いものが\った。あの首が\ったのだとわかった。冷たいぶよぶよとしたものが制服の|衿《えり》の中へもぐりこんでくるのを感じて、子は悲Qをあげた。
「いや! とって!」
 つかまれていない片腕をめちゃくちゃにふって、背中のものをBい落とそうとするとケイキがその腕までもつかむ。
「やめて! いや!!」
「き分けのない。おちつかれよ」
「いや! いやだってば!!」
 冷えた|糊《のり》のようなものが背中から腕を|@《は》う。同rに首のうしろにくなにかが押しつけられるのを感じて、子はひたすら悲Qをあげた。
 膝が崩れて座りこみ、がむしゃらに男の腕をふりほどこうと身をよじって、腕が自由になるや、荬いまってその訾塑ぶ。なかばパニックをおこしながらI手で首のうしろをBったときには、もうなんの手ごたえもなかった。
「なに? なんなの!?」
「ジョウユウが|{依《ひょうい》しただけです」
「{依って」
 子は身体中をI手でこする。身体のどこにも、あのいやな感触はない。
「の使い方はジョウユウが知っている。これをお使いなさい」
 そう冷淡に言って男はをさしだす。
「コチョウは速い。あれだけでも丐盲皮い郡坤ねば、追いつかれる」
「あれ……だけ?」
 だけ、ということはほかにも追ってくるものがあるということだろうか。あの簸韦胜の光景のように。
「あたし……できない。それより、さっきのジョウユウとかヒンマンとかいうばけものは、どこへ行ったの」
 男は答えずに空をあげる。
「来た」

   7

 子がふりかえるより先に、背後から奇声がこえた。
 声のほうをあげる子の手のなかに、が押しこまれる。それにはかまわず子はふりかえる。背後の上空に翼を冥菠烤搌Bの姿が降下してくるのがえた。
 悲Qをあげた。逃げられない、ととっさに思った。
 逃げるよりも落下してくるBのほうが速い。なんて使えない。あんな、ばけものに|峙《たいじ》する勇荬胜螭皮胜ぁI恧蚴丐敕椒àない。
 太い脚の|^爪《かぎづめ》が野いっぱいに冥った。目を]じたかったが、できなかった。
 目の前を白い光が走って、预ぜい筏ひ簸した。岩と岩とを打ちつけたような音をたてて、|斧《おの》のように重量感のある^爪がのすぐ前で止まった。
 とめたのは、を|鞘《さや》からなかばまで引きiいて目の前にかかげたのは、ほかでもない自分のI腕だった。
 なに? と自するひまもなかった。
 子の腕が残りの刀身を引きiいて、iきざまコチョウの脚をBう。
 赤い血が散って、生暖かな温度をともなって子のにきつけた。
 子は|呆然《ぼうぜん》としているしかなかった。
 断じてを使っているのは子ではない。手足が偈证婴い啤|狼N《ろうばい》したように浮上するコチョウの片脚を|亍钉》って落とす。
 またr血が|w沫《しぶ》いてをAした。ぬるいものが|《あご》から首をつたって、衿のなかに入ってくる。その感触に子は震えた。
 子の足は|血w沫《ちしぶき》をかわすようにその訾颏丹った。
 宙へ逃げ出した巨Bは、すぐさまB荬蛄て直して突っzんできた。
 その翼に丐辘膜堡胜ら、子は自分の体が婴たび、婴にしたがって冷えたぞろぞろとする感触が身体をつたうのを感じる。
 ──あれだ。あの、ジョウユウとかいうばけもの。
 翼をつけられた巨Bが、奇声をあげながら地に突っzむ。
 それを野にとらえながら、子は|悟《さと》る。
 あのジョウユウとかいうばけものが自分の手足を婴しているのだ。
 |身《みもだ》えするように羽ばたいた巨Bは、地を巨大なI翼で叩くようにして子に向かってきた。
 子の身体はよどみなく婴い啤⑸恧颏わしざま、その胴を深く丐盲韦皮搿
 生暖かい|血糊《ちのり》を^からかぶって、手には肉と骨を断つおぞけのするような感触が残った。
「いや」
 口は子の意思によってつぶやいたが、身体は婴をやめなかった。
 血糊が身体をつたうのもかまわず、地面に落ちてあがくコチョウの翼に深くを突き立てる。刺しいたをそのまま引いて大きな翼を丐炅绚い俊
 そのまま子の身体はきびすを返して、奇声をあげ血泡をいてのたうつ首に向かった。
「いや。……やめて」
 巨Bはがるようにしてついた翼を大きく打ちふるっていたが、翼はもはやその体重を浮上させることができなかった。
 子の腕は、音をたてて宙を|扇《あお》ぐ翼を避けて胴を刺しいた。とっさに目をそむけたが、ぶよぶよとした抵抗を丐炅绚感触が手に残る。
 そのをiきざま振り上げ、|P躇《ちゅうちょ》なくその首にふりおろした。首の骨に当たってが止まる。
 あらためて|粘《ねば》る血肉から引きiいてふりあげ、赤く染まった首を今度は完全に|亍钉》り落とし、そのまだ|d《けいれん》している翼でをぬぐったところで手足の偈证婴が止まった。
 子は悲Qをあげて、やっとを投げ韦皮俊

 突堤の端から身を\り出して子は吐いた。
 泣きじゃくりながら海中投げこまれたテトラポッドをつたって水のなかにwびこむ。今は二月もなかばで、海の水は身を切るほど冷たいことは、まったく念^に浮かばなかった。とにかく、^からかぶった血糊を洗い落としてしまいたかった。
 o我糁肖撬をかぶって、それでようやく落ちつくと、水のなかから|@《は》いのぼることさえできないほど震えた。
 のろのろと@いのぼって突堤にり、そこであらためて声をあげて泣いた。恐怖と|嫌《けんお》で泣かずにはおれなかった。
 声が|嗄《か》れるほど泣いて、泣く萘Δ丹à膜たころにようやくケイキが声をかけてきた。
「もう、よろしいか」
「……なに……」
 ぼんやりとをあげると、ケイキの表情にはなんの色もない。
「これが追っ手のすべてではありません。じきに次の追っ手が来る」
「……それで?」
 神Uのどこかが|麻w《まひ》したようだった。追っ手という言~に恐怖を感じず、男をまっこうからにらむことにも|葆帷钉おく》れを感じなかった。
「追っ手は手ごわい。お守り申しあげるには、私ときていただくほかはありません」
 子はそっけなく返した。
「いや」
「分eのないことをおっしゃる」
「もうたくさん。あたし、家にる」
「家にったからといって、Qして安全ではない」
「もういいの、どうだって。寒いから家にる。……ばけものを取ってよ」
 男は子をすえた。その目を子も淡々と返す。
「あたしの身体にりついてるんでしょ。ジョウユウとかいうばけものを取って」
「それは当面、あなたに必要なものだ」
「必要ない。あたし、家にるから」
「どこまでおろかな方か!」
 怒Qられて、子は目を_く。
「死んでいただいては困る。否とおっしゃるなら、むりにでもおいでいただきます」
「偈证胜长趣肖り言わないで!」
 子は叫んだ。他人を怒Qりつけたのはにある限り、生まれてはじめてのことだったが、いったん叫んでしまうと、身内には奇妙な|高P感《こうようかん》があった。
「あたしがなにをしたっていうのよ! あたしは、家にるの。こんなことにきzまれるのはもういや。どこへも行かない。家にる」
 突きつけられたを、子は乱暴に手でBいのけた。
「あたしは、家にりたいの! あなたに指恧胜螭させない!」
「危だと申しあげているのがおわかりにならないか!」
 子は薄く笑ってみせる。
「危でもいい。あなたにはvSないでしょ」
「vSなくはない」
 男は低く吐き韦皮啤㈥子の背後に目でうなずく。まえぶれもなく背後から二本の白い腕が伸びて、子の腕をつかんだ。
「なにをするのよ!?」
 ふりかえると、最初にを持ってFれたBのような女だった。女は子の腕をつかんでo理やりを抱かせる。そのまま|羽交《はがい》いじめにするようにして抱きかかえた。
「放して!」
「あなたは私の|主《あるじ》です」
 言われて子はケイキをあげる。
「主?」
「主命とあれば、どのようなことでもおきするが、あなたの命がかかっている。今はおSしいただきます。まずはお身の安全を|怼钉悉》り、事情をおきいただいて、その上でおりになりたいとおっしゃるのなら必ずお送り申しあげます」
「あたしがいつあなたの主人になったの? 偈证摔浃盲皮て、なんのh明もなしに偈证胜长趣肖り。ふざけないでよ!」
「h明申しあげるq予はありません」
 言ってケイキは、底冷えのするを子に向ける。
「私としてもこんな主人はい下げだが、こればかりは私の意のままにならない。主人を韦皮毪长趣显Sされない。ましてやovSな人々をまきこむことは~に避けねば。否というなら力ずくでもおいでいただく。──カイコ。そのままおBれせよ」
「いや! 放して!」
 ケイキは子をふりかえらない。
「ハンキョ」
 呼ばれて赤い毛Kみのが物からFれる。
「xれてwべ。血の臭いが移る」
 次いでヒョウキ、と呼ばれて巨大な|豹《ひょう》に似たが姿をFした。女は子を羽交いじめにしたままその背を|跨《また》ぎ越す。
 ふうわりと、同じようにハンキョに|跨《またが》った男に子はVえた。
「冗じゃないわよ! 家にして! せめてあの、ばけものを取って!!」
「eに邪魔になるわけではないでしょう。ジョウユウが|{《つ》いていたからといって、なにかを感じるわけではないはずだ」
「それでも菸钉いの! 取りなさいよ!」
 ジョウユウ、と子のほうをふり向いて男は命じる。
「Qして姿をFさず、ないものとしてふるまえ」
 これにして返答はなかった。
 ケイキがうなずくと、子を\せたが立ちあがった。とっさに自分を抱えた女の腕にしがみつくと同rに、は音もなく跳Sする。
「……いやだってば!」
 子の叫びをoしては抵抗なく宙へ向かってlけあがった。
 まるでゆるやかに宙を泳ぐようにして高度をす。地面が眼下をhざかっていかなければ、婴い皮い胜い韦とeするほどの婴はgやかだった。
 は宙をlける。簸韦瑜Δ说厣悉线hざかって、日暮れた街の姿をあらわにした。

   8

 天には|觥钉长础筏à禾欷涡恰5丐摔隙际肖屋郭を作る一面の星。
 は海上に踊り出た。
 宙を泳ぐように|翔《かけ》て、それでいながらあきれるほど速い。どういうわけかLを切る感触はしないので、さほどでもない荬するが、背後の夜景がhざかるスピ`ドをればこ¥扦胜に俣趣胜韦わかる。
 なにを叫んでVえても、こたえてくれる者はいなかった。ついには哀さえしたが、返答はない。
 暗い海上のこと、高さを暗示するものはえないので高度にする恐怖は薄いが、行方にする恐怖がある。
 はまっすぐに_へ向かった。ケイキを\せたもう一^のの姿は近くにはえない。ケイキの言~どおりxれているのだろう。
 そろそろと背筋を投げやりな莘证@いあがってきて、子はようやく叫ぶことをやめた。あきらめてしまえば、思い出したように四肢を婴して宙をlけるの背は心地よかった。背後から回された女の腕が冷えた身体に温かい。
 子はためらい、そうしてようやく背後の女にいてみる。
「あの……追ってきてる?」
 半身をひねるようにしてくと、女はうなずいた。
「はい。追っ手の妖魔が多数」
 女の声は耳にまろくしかった。それに子は|安堵《あんど》する。
「あなたたちは……何者?」
「我々はタイホの|W《しもべ》です。──どうぞ、前を。お落としすると叱られます」
「……うん」
 子はしぶしぶ前を向く。
 界に映るのは暗い海と暗い空、薄く光る星と波、天高く訾à吭隆それでぜんぶだった。
「しっかりをお持ちになって。Qしてお身体からおxしになりませんよう」
 その声に子は|怯《おび》えた。またさっきのような吐き荬韦工椁い颏筏胜堡欷肖胜椁胜い韦坤恧Δ。
「……长来そう?」
「居ってきてはおりますが、ヒョウキのほうが速い。心配はございません」
「……じゃあ?」
「万が一にもや|鞘《さや》をなくされませんよう」
「と、鞘?」
「そのは鞘とxしてはなりません。鞘についております|珠《たま》は、あなたさまのお身を守ります」
 子は腕のなかのをた。鞘にはり|~《ひも》のようなものがついていて、その先にピンポン玉大の青い石がついている。
「これ?」
「はい。お寒いのでしたら、珠を握ってごらんなさいませ」
 言われるままに手のなかに握りこんでみると、|掌《てのひら》からじんわりと暖荬しみてくる。
「……暖かい」
「怪我や病荨⑵氦摔庖郅肆ちます。も珠も秘iの|宝重《ほうちょう》。Qしてなくされませんよう」
 うなずいて、次の|を考えようとしたとき、急にの高度が下がった。
 まっくらな海に白く月が影を映している。波の上にpいとめられたその影が、荬いして近づいていた。海上がその荬い搜氦丹欷郡瑜Δ伺萘つ。
 さらに下降すれば、海面は|沸v《ふっとう》したように水柱をあげて荒れているのがわかった。
 はその荒れる海の上にxく、光の窑沃肖仫wびzもうとしている。それを感じて子は悲Qをあげた。
「あたし、泳げない!」
 白い腕にしがみつくと、女はやんわりと腕に力をこめる。
「大事ございません」
「でも!」
 それ以上を言うひまはなかった。海面が前に|塞《ふさ》がって、子は悲Qをあげた。

 光の中にwびzんだ瞬g、叩きつけられるn膜蛞悟したが、そんなものはまったくなかった。
 逆いた波の|w沫《しぶき》も、水の冷たさも感じない。ただ光の中にとけこむように、]じた|《まぶた》の下に白yの光がさしこんできただけだった。
 ごく薄い布でをなでる感触がして目を_けると、そこは光のトンネルだった。少なくとも子には、そのようにえた。音もなくLもない。たださえざえとした光だけが氦沥皮い搿
 ^からwびzんできた足元では、月の形に白い光がを切りとっていた。その表面が大きく波立っているのがて取れる。
「なに……これ」
 もぐるようにMむ^上には、足元と同じように丸い光がえる。
 ^上にある光の冶Pが、足元に白く光を投げかけているのか、それとも逆に、足元にある冶Pが^上に光を投げているのだろうか。いずれにしてもそれが出口だとしたら、このトンネルはひどく短い。
 |煌煌《こうこう》とした光の中をあっというgにlけiけて、子を\せたは丸い光の中にwびzんだ。再び薄い布で体をなでたような感触があって、そうして踊り出たそこは、海の上だった。
 突然に耳に音がる。gい光を|《はじ》く海面、目をあげるとそれがわたす限りAいている。入ったときと同じように、まっくらな海上の月の影から子たちは|滑《すべ》り出ていたのだ。
 海面の、はるか向こうはわからない。ただ暗い海ばかりが、月の光を浴びてどこまでも冥っているようにえた。
 月の影から出ると同rにを中心に大きな波が同心窑蛎瑜い冥りはじめる。海面はみるみるうちに泡立って、工韦瑜Δ嘶膜炜瘠Σà虼颏沥げはじめた。
 波^のw沫がちぎれていく子をれば、恐ろしいほどのLが吹いているのがわかる。ずっとoLに近かったのまわりでも、ゆるやかなLが逆きはじめ、^上にはが流れはじめた。
 は高度をして宙をlける。荒れた海の上にpいとめられた月の影が、月の影そのものにしかえなくなるほどhざかってから、ふいに女が声をあげた。
「ヒョウキ」
 |浴钉た》い声に子は女をふりかえり、そうして彼女のを追って背後をた。夜の海の上、白い月の影からo数の\い影が踊り出てくるのがえた。
 光を宿したのは天の月とその影だけ、それもかき消すようににおおわれ、やがて完全ながLれた。──まさしく、漆\の。
 天も地もないのなかに薄く|t《ぐれん》のあかりがえる。月の影が落ちていた方角だった。その薄いあかりは、炎でも燃えさかっているように形を浃ā⒂护搿
 その光を背にo数の影がえた。形のの群れだった。
 こちらはほんとうにSりながら、あかりのほうからこちらへむけとlけてくる。猿がいて|鼠《ねずみ》がいてBがいる。赤いと\いと赤いと。
 子は呆然とした。
「あれは……」
 あれは。このL景は──。
 子は悲Qをあげた。
「やだ! 逃げて`っ」
 女の手があやすように子をゆすった。
「そうしております。どうぞご安じくださいまし」
「いや!」
 女は子の身体を伏せさせる。
「しっかりヒョウキにつかまって」
「あなたは?」
「すこしでもB中の足を止めにまいります。しっかりヒョウキにしがみついて、なによりもQしてをお放しになりませんよう」
 子がうなずくのをて、女は腕を放した。
 そのまま漆\の宙を蹴って背後に向かってlけてゆく。金茶の|c《しま》がある背が、あっという|g《ま》にのまれていった。

 子の周欷摔悉工扦碎よりほかになにひとつえない。Lがいて、子をeさぶり始めた。
「ヒ……ヒョウキ、さん」
 子はしっかり背に伏せたまま声をかけた。
「なにか」
「逃げられそう?」
「さて。どうですか」
 ごくo感のない声が答えてから、
「上! ご注意を!」
「え?」
 ふり|仰《あか》いだ子の目に、赤いほのかな光が映った。
「ゴユウが」
 しがみついた腕の下のが、言うやいなや体をかわして宙を横に跳んだ。その|を恐ろしい荬い扦胜摔が落していく。
「なに? どうしたの!?」
 ヒョウキは宙を左右に跳びながら急激に高度を下げていく。
「を。──伏兵が。はさまれました」
「そんな!」
 叫んだ子の目の前のに、うっすらと赤い光がともった。その光を背に\いなにかの影がえる。踊るようにして近づいてくる、なにかの群れ。
「いや! 逃げて`っ!!」
 をつかうのはいやだ、そう思った瞬g、そろりと足を冷たいものがなでた感触がした。
 に|跨《またが》った子のI膝が音がするほどくヒョウキの体を挟む。背筋を冷たいものが|@《は》って、子の上体をむりにもヒョウキの背から引きはがして起こさせる。
 腕が偈证殛Lの浃蚴激幛搿I手をヒョウキから放し、を|鞘《さや》からiき放つと鞘だけを背中へ、スカ`トのベルトにはさみこんだ。
「……いや。やめて!」
 右手はをえる。左手がヒョウキの毛Kみを|浮钉啶贰筏毪瑜Δ摔筏皮膜む。
「おい、やめて!!」
 近づいてくる群れと、近づいていくヒョウキと、双方が疾Lのように突Mして交わった。
 ヒョウキは形の群れのなかにSりこむ。当然のように⒌饯工刖薮螭湿を、子の手が|亍钉》り韦皮俊
「いや!」
 子は目を]じた。叫ぶことと目を]じることだけが子の意のままになる。
 生き物をしたことなどない。理科の解剖でさえ直することができなかった。そんな自分に|⑸《せっしょう》を要求しないで欲しい。
 の婴が止まった。ヒョウキの声がく。
「目を]じるな! それではジョウユウが婴堡胜ぃ。 
「いやっ!!」
 がく、と首がのけぞるほどの荬い仟が横に跳Sする。
 前後に左右に去りまわされながら、子は预目を]じていた。し合いなどみたくない。目をつむることでが止まるなら、断じて目など_けるものか。
 ヒョウキがく左に跳ぶ。
 突然に、壁にでも突き当たったようなn膜蚋肖袱俊¥沥绀Δ扇があげる悲Qのような短い声をいて、子はとっさに目を_ける。瞳が深い漆\だけをとらえた。
 なにがおこったのか考えるgもなく、ヒョウキの体が大きくAき、I膝のgから毛Kみの感触が消えうせた。
 悲Qをあげる余裕もなかった。子は宙に投げ出されていた。
 @いて_いた目に、突Mしてくる|猪《いのしし》に似たがえて、右手に肉を|亍钉》った重いn膜蚋肖袱俊j子の耳に刺さったのはの|咆哮《ほうこう》と、自分の悲Q。
 それを最後に五感までもがのなかに落していった。


   二章


   1

 荒れた波が打ち寄せる砂浜だった。
 ふと荬つくと、子は波打ちHに倒れていた。
 子が倒れた鏊から波が砂を濡らしいている鏊まではすこしだけ距xがあったが、水の打ち寄せる荬い激しい。しぶきが子のにかかって、それで目をましたのだと分かった。
 子はをあげる。ひときわ大きな波が押し寄せてきて、砂の上を|@《は》った水が倒れた子の爪先を濡らした。不思hに冷たい荬悉筏胜ったので、子はそのままそこに横たわっている。爪先を波が洗うにまかせた。
 猡潮の訾いする。潮の臭いは、血の臭いに似ている、と子はぼんやりそう思った。ひとのむ体の中には海水が流れている。だから、耳を澄ますと身内から|潮X《しおさい》の音がする。そんな、荬する。
 また大きな波が打ち寄せてきて、子の膝のあたりまで水が押し寄せてきた。波にさらわれた砂が膝をくすぐる。夂瘠食堡訾いした。
 ぼんやりと足元をながめていた子は、引いていく水に赤い色が混じっているのに荬扭い俊¥栅饶烤を_へ向ける。そこには灰色の海と灰色の空が冥るばかり、赤い色はどこにもない。
 また波が打ち寄せてきた。引いてく水がやはり赤い。色の出どころを探して、子は目を_いた。
「……あ」
 赤い色の出どころは自分の足だった。波が洗う爪先から、すねから、赤い色が溶け出している。
 あわててI手をついて体を起こした。よくよくてみると手も足も真っ赤で、制服までが赤\い色に渖してしまっている。
 子は小さく悲Qをあげた。
 ──血だ。
 全身が、浴びた返り血で真っ赤に染まっている。I手はほとんど\くえるほど赤くて、かるく手をにぎってみると恐ろしく粘った。そっと触れると、もも同じように粘つくものでおおわれている。
 子の悲Qに合わせたように、またひときわ高い波が打ち寄せてきた。
 今度は身を起こした子の周りを波が洗っていく。打ち寄せる水は|帷钉摔础筏盲炕疑で、引いていく水は赤い色を溶かしこんでいた。
 その水をすくって、子はI手を洗う。指のgからしたたる水は、血液そのものの色をしていた。
 波が打ち寄せるたびに水をすくって手を洗った。洗っても洗っても、I手白い色をとりもどさなかった。いつの|g《ま》にか水は、座りzんだ子の腰のあたりに_している。腰の周りから赤い色がにじみ出て、周欷嗡面は赤く染まっていた。しかもその赤は徐々に大きく冥っている。灰色ばかりのL景の中で、赤い色が|r《あざ》やかだった。 ふと子は、自分の手に浠が起こったのをみつけた。赤い手を目の前にかざす。爪が伸びていた。
 とがった利な爪が、指の第一vほどもLく伸びている。
「……どうして」
 しみじみとつめて、さらに浠を|悟《さと》る。手の甲にo数のひび割れができていた。
「なに……?」
 ぱら、とちいさな赤い破片が落ちた。Lに流されて_へwんでいく。
 小さな破片がはがれた、その下からFれたのは、ひとつまみの赤い毛だった。ごく短い毛が小さな面eにびっしりと|生《は》えている。
「まさか……」
 かるく手をこする。ぱらぱらと破片が落ちて、さらに赤い毛KみがFれる。身婴するたびに足からもからも破片が落ちて、かわりに赤い毛KみがFれてゆく。
 荒い波にFれて、制服が|朽《く》ちたようにちぎれていった。その下からFれたのも、やはり赤い毛Kみだった。水がさらにその毛Kみを洗う。赤い色を溶かし出して、すでに周欷弦わたすかぎり赤い色に染まっている。
 凶器のような爪。赤い毛Kみ。──まるでに浠していこうとしているように。
「──うそ!」
 叫んだ声はひび割れた。
 ──ばかな。どうして、こんな。
 制服がちぎれ落ちたあとにFれた腕は、奇妙な形にねじれている。それは犬か猫の|前肢《まえあし》のようにえた。
 ──返り血。
 ──きっと、返り血のせいだ。
 ばけものの返り血が、身体を浃à皮い长Δ趣筏皮い搿
 ──ばけものに、なる。
 (そんな、ばかな)
 ──いやだ。
「いや──っ!!」
 叫んだ言~はこえなかった。
 子の耳は荒れる海の波の音と、一匹のの|咆哮《ほうこう》だけをいた。

 ──子が目を_けると、|青白《あおじろ》いのなかにいた。
 息をしたとたん、全身が痛んだ。特に胸の痛みがひどい。
 とっさにI手をの前にかざして、子はかるく息をついた。そこには爪も、赤い毛Kみもえなかった。
「………………」
 声にならない|安堵《あんど》のため息をつく。なにが自分におこったのか原因を思い出そうとして、はたとがよみがえった。あわてて体を起こそうとしたが、身体が硬直したように|《こわ》ばって婴ない。
 ゆっくりと何度か息をして、それからそろそろと身を起こした。深い息をくりかえすあいだに、痛みはゆるやかに引いていく。半身をおこした子の身体からパラパラと松の~がこぼれ落ちた。
 ──松。
 _かに松~のようだった。周欷蛞わたすと松林、^上をあげると折れた枝の断面が白い。そこから落してきたのだろうとわかった。
 右手はしっかり今もなお、の|柄《つか》をにぎりしめていた。よくも放さなかったものだと思い、ついで自分の身体をあらためて、よくも|怪我《けが》をせずにすんだものだと思う。かいかすりはo数にあったが、怪我と呼べるほどのは当たらなかった。ついでに、なんの浠もない。
 子はそろそろと背中を探る。スカ`トのベルトにはさまれて失いもせずにすんだ|鞘《さや》を引き出すと、それにをГ幛俊
 白い|\《もや》が薄く流れている。夜明け前の空荬漂っていた。波の音がいている。
「それであんな簸颏撙郡螭馈…」
 菸钉い返り血の感触と、バケモノと椁铯丹欷拷UY、そうして、波の音。
「……最低」
 つぶやいて、子は周欷蛞わたした。
 あたりは浜xによくある松林にえる。海の近く、夜明け前。そして自分は死にもせず身婴できぬほどの怪我も受けていない。──それが子の得た情螭韦工伽皮坤盲俊
 林にはなんの菖浃猡胜った。おそらく长饨くにはいない。そうして──味方も近くにはいない。
 海面に映った月の影からすべり出たとき、月は高いところにあった。今は夜明け。それほどのrg、自分がひとりで放っておかれたからには、ケイキたちとはぐれたのにちがいない。
 ──|迷子《まいご》になったときは婴ないこと。
 子は小さく口の中でひとりごちた。
 きっとケイキたちが探してくれるだろう。あんなにえらそうに守ると言っていたのだから。Xはずみに婴堡小かえってすれちがってしまうおそれがある。
 そう考えて身体を近くの|帧钉撙》にもたせかけると、さやにむすびつけられた|珠《たま》をにぎってみる。あちこちの痛みがそれでゆっくりと引いていった。
 不思hだと、そう思う。
 あらためて珠をても、ただの石にしかえない。ガラスっぽい光gの、とろりとした青をしていた。青い|翡翠《ひすい》があるとすれば、こんなものかもしれない。
 そんなことを考えてから、|浴钉た》く珠をにぎりなおす。じっとそこに座ったまま目を]じていた。
 目を]じているあいだにほんのすこしだけ眠ったのだろう、次に子が目を_けると、あたりには薄い光が氦沥啤L景は早朝の色をしていた。
「Wい……」
 彼らはなにをしているのだろう。どうして自分をこんなにLrg放っておくのだろう。ケイキは、カイコは、ヒョウキは。
 子は迷ったすえに口に出してみる。
「……ジョウユウ、さん」
 まだ自分の身体にとり|{《つ》いているはずだ。そう思って声をかけたが、返答はなかった。自分の体をあらためてみても、そこにジョウユウのいる感触はない。もともとをふるうときでなければ、いるのかいないのかわからない相手だから、はぐれたのかどうかわからなかった。
「いるの? ケイキさんたちはどうしたの?」
 何度いてみても、なんの甏黏菖浃猡胜ぁ
 不安が^をもたげた。ひょっとしたらケイキたちは、子を探したくても探せないのではないだろうか。落する直前にいた悲Qがよみがえった。长稳氦欷韦胜に残してしまったヒョウキはぶじなのだろうか。
 不安に押されて立ちあがった。ギシギシ悲Qをあげる身体をなだめて立ちあがり、あたりをわたす。周欷纤嗓瘟帧すぐに右手に林の切れ目がえる。とりあえずそこまで行くのは危なことではないだろう。
 林の外はボコボコとした荒地だった。白茶けた土に低い|木《かんぼく》がしがみついている。
 その先は|断崖《だんがい》だった。断崖の向こうは\い海がえる。昨夜た海も\かったが、夜のせいだと思っていた。夜が_けた今になってもあんなに暗いのは、海の色じたいが相当に深いからなのだろう。
 子は引きよせられるように崖へ向かってiいた。
 デパ`トの屋上からおろしたほども崖の高さはある。そこから海をて、しばらく子は|呆然《ぼうぜん》としていた。
 高さのせいではない。足元に冥る海のさに打たれて。
 海は限りなく\に近い|C《こん》にえた。水面に下っていく崖のをたどってみると、水に色がついてるわけではない。むしろ恐ろしく澄んでいる。
 それは想像を~するほどふかい海の、深海にわだかまるが透明な水のせいであらわになったような印象を与えた。光が届かないほど深い底をおろしている、という感。
 そのふかい海の、深いところに小さな光がともっている。それがなんなのかわからないが、砂粒ほどにえる光が点々とともり、あるいは集まって薄い光の集猡蜃鳏盲皮い搿
 ──星のように。
 |目《めまい》がして子は崖に座りzんだ。
 それはまさしく宇宙の景Qだった。写真でた星や星猡湫请や、そういったものが自分の足元に冥っている。
 ──ここは知らない鏊だ。
 突然にわきあがってきた思考。直しないようにしてきたものがき出してきて止められない。
 ここは子の知る世界ではない。こんな海を子は知らない。まさしく子はe世界にれこんでしまったのだ。
 ──いやだ。
 「うそでしょう……」
 ここはどこで、どういうところなのか。危なのか安全なのか。これからいったいどうすればいいのか。
 どうしてこんなことになってしまったのか。
「……ジョウユウ、さん」
 子は目を]じて声をあげる。
「ジョウユウ! おい、返事をして!」
 身体の中には潮Xのような音だけ。|{依《ひょうい》したはずの者からは返答がない。
「いないの!? lか、助けてよ!!」
 一がすでにたった。家では母Hがさぞ心配しているだろう。父Hは今ごろひどく怒っているにちがいない。
「……る」
 つぶやくと妞こぼれた。
「あたし、家にる……っ」
 いったん、あふれ始めると止まらなかった。子は|膝《ひざ》を抱いてを伏せる。声をあげて泣き始めた。

 ~が幛虺证膜郅善いてから、ようやく子はをあげた。泣きたいだけ泣いて、すこしだけ落ちついた。
 ゆっくりと目を_けてみる。目の前には宇宙のようにえる海が冥っている。
「……不思h」
 星空をおろしている莘证した。禾欷涡强铡Kの中で星はゆるやかに回している。
「不思hできれい……」
 ようやく落ちついた自分を自した。
 子はぼんやりと水の中の星をつめていた。

   2

 太が天を越えるまで、子はそこで海をていた。
 ここはいったいどういう世界で、どんな鏊なのだろう。
 こちらに来るのには月の影を通ってきたが、あれじたいがそもそもおかしい。月の影をつかまえるなど、夕をつかまえるのと同にできるはずのないことだ。
 ケイキと、その周りにいた不可解なたち。子の世界にあんなはいない。まちがいなく、あれはこちらの生き物だろう。──そこまでは理解できるのだけど。
 ケイキはいったい、なにを思って子をここへBれてきたのか。危だといい、守ると言ったが、子はこうして放置されている。
 ケイキたちはどうしたのか。あの长悉い盲郡ず握撙恰なにを目的に子をuったのだろう。それがぜんぶ簸摔饯盲りだったのはどういうわけなのだろう。──そもそも子はなぜひと月もあんな簸蛞つづけたのか。
 考えはじめるとわからないことばかりで、思考が迷子になりそうだった。ケイキに出会ってからというもの、なにもかもが疑符でできていて、子に理解できることのほうが少ない。
 ケイキがうらめしくてならなかった。
 突然Fれて子の事情にはかまわず、得体の知れない世界にo理やり引きずりzんだ。ケイキにさえ会わなければ、こんなところに来ることもなかったし、バケモノとはいえ生き物をすような事Bにだってならなかったはずだ。
 だからなつかしいとは思えないが、ケイキ以外にmるものがない。なのにケイキたちは子を迎えに来ない。あの殛Lでなにかがおこって迎えに来たくても来れないのか、それともなにか事情があるのか。
 それでいっそう自分のおかれた状rが困yなものに思えた。
 ──どうして自分がこんな思いをしなければならないのだろう。
 子はなにをしたわけでもない。ぜんぶケイキのせいだ。そう考えると、バケモノにuわれたのまでケイキのせいのような荬する。
 T室でいた声は「つけられていた」と言わなかったか。ケイキは「场工妊预盲皮い郡、それは子の长趣いσ馕钉扦悉胜い悉氦馈j子にはバケモノに长蜃鳏胄牡堡郡辘胜嗓胜ぁ
 子はケイキの|主《あるじ》だという。それがそもそもの原因だという荬した。子がケイキの主だから、ケイキの长耍狙《ねら》われた。その长ら身を守るためにを使わなければならなかったし、こんなところに来なければならなかった。
 しかし、主になったえなど、子にはないのだ。
 主と呼ばれるいわれがあるとは思えなかった。だとしたら、ケイキの`解か、偈证仕激い长撙坤恧Α
 ケイキは「探した」と言っていた。きっと彼は主を探していて、なにか重大なg`いを犯してしまったのだ。
「なにが、守る、よ」
 子は小声で毒づく。
「ぜんぶ、あんたのせいじゃない」

 短かった影が伸び始めて、ようやく子は腰をあげた。ここにずっと座ってケイキに毒づいていても、どうにもならないことだけは_gだった。
 子は左右をわたす。崖はどちらの方向へ行っても、切れ目がなさそうにえた。しかたなくきびすを返し、もといた松林のほうへる。コ`トはなかったがさほど寒いとは感じなかった。ここは、子が住んでいた街よりも莺颏良いようだった。
 さして深くもない林は、台Lのあとのように折れた枝が散乱している。そこをiけると、沼地が冥っていた。
「……・・・?」
 よくれば、そこは沼地ではなく泥が流れzんだ|田圃《たんぼ》だった。
 ところどころ水面に、まっすぐに整浃丹欷浚畦《あぜ》がを出していた。丈の低いvの植物が^だけを泥の上に出して、吹き倒されてしまっている。
 わたす限り泥の海で、xれたところに人家が小さな集落を作っているのがえる。その向こうは|《けわ》しい山だった。
 柱や柱のようなものはえない。hくにある集落にものようなものはいっさいえないし、建物の屋根にアンテナのようなものもなかった。
 屋根は\い瓦、壁は黄ばんだ土壁にえた。集落の周りを取り欷啶瑜Δ摔筏票长蔚亭つ兢植えられていたが、ほとんどが倒れてしまっている。
 悟していたような常なL景があるわけでもなく、建物があるわけでもなく、子はひそかに胸をなでおろした。すこしばかり荬线`うが、それはiけするくらい日本のあちこちでかける田@L景に似ていた。
 |安堵《あんど》してよくよくあたりをわたすと、松林からはかなりhいところに数人の人影がえる。背格好は定かではないが、べつにバケモノじみたシルエットにはえない。田圃で作Iをしているようだった。
「よかった……」
 思わず声がもれた。最初にあの海をてすっかり|狼N《ろうばい》してしまったがこのL景はそれほど常にはえない。荬来ていないようだ、という点をoすれば日本のどこかにありそうな村だ。
 子はふかく息をつき、それからhくにえる人々に声をかけてみることにQめた。ず知らずの人にし欷堡毪韦希葆帷钉おく》れするが、子ひとりではどうにもならない。言~が通じるかどうか、ふと疑に思ったが、とにかくlかに助けを求めなければならなかった。
 |怖《お》じけづく莘证颍励《はげ》ますようにして、子は口の中で唱える。
「事情をh明して、ケイキたちをなかったかいてみる」
 とにかくそれしか子にできることはなかった。

 なんとかiける|畦《あぜ》を探して、子はr作IをAける人影のほうへiいていった。近づくにつれ、彼らが少なくとも日本人でないことはわかった。
 茶色いの女がいて、赤いの男がいる。ひどくケイキに似た荬あった。
 立ちや体つきはすこしも白人のようでないのに、とってつけたようにの色だけが`うせいだろう。その点を除けばごく普通の男女のようだった。
 着ているものは着物に似たすこし浃铯盲糠で、男の全Tがを伸ばしてくくってはいたが、それ以外に特に常は当たらない。彼らはシャベルのようなものを突き立てて、畦を菠饯Δ趣筏皮い毪瑜Δ坤盲俊
 作Iをしていた男のひとりがをあげた。子をて周欷稳碎gをつつく。なにか声をかけていたが、特に耳なれない音にはこえなかった。その訾摔い堪巳摔郅嗓文信が子のほうをて、子はかるく^を下げた。ほかにどうすればいいか思いつかなかった。
 すぐに三十前後の\の男がひとり、畦にあがってきた。
「……あんた、どこから来たんだね」
 日本Zをいて、子は心底ほっとした。自然に笑みが浮かぶ。思ったほどひどい状rではないようだ。
「崖のほうからです」
 ほかの男女は手を止めて、子と男を守っている。
「崖のほう? ……|_里《くに》は」
 |京です、と言いかけて子は口をつぐんだ。事情をす、とgに考えていたが、果たして正直に事情をして信じてもらえるのだろうか。
 子が迷っているうちに、男が重ねていてきた。
「妙な格好をしているが、まさか海から来たのかい」
 それは事gではなかったが、かなり事gに近かったので子はうなずいた。男が目を丸くする。
「なるほど、そういうことかい。こいつは@いた」
 男は皮肉な笑みを浮かべて、子には理解できない{得のしかたをした。不gな目つきでにらむようにしてから、子の右手にをとめた。
「たいそうなもんを持ってるな。それはどうしたんだ?」
 さげたままののことを言っているのだとわかった。
「これは……もらったんです」
「lに」
「ケイキというひとです」
 男は子のすぐそばまでiみ寄ってくる。子はなんとなく一iさがった。
「あんたには重そうだな。──よこしな。俺がAかってやろう」
 子は男の目つきにすこし|怯《おび》える。H切だけで言っているとは思えなかった。それでを胸に抱いて首を横にふる。
「……だいじょうぶです。それより、ここはどこなんですか?」
「ここはハイロウだ。人にものをくのに、そんな物Xなものをちらつかせるもんじゃない。それをよこしな」
 子はあとじさった。
「放してはいけないといわれているんです」
「よこせ」
 く言われて子はおじけた。いやです、と言い通す|荨钉悉》を持てなくて、しぶしぶを男に向かってさしだす。男はひったくるようにうけとって、をしみじみ眺めた。
「たいした造作だ。これをくれた男は金持ちだったろう」
 守っていた男女が集まってきた。
「どうした。カイキャクか」
「そのようだ。みろや、たいそうなしろものだ」
 男は笑ってをiこうとする。しかし、どうしたわけか刀身は|鞘《さや》を婴なかった。
「りもんか。──まぁ、いい」
 男は笑ってを腰の?瞬瞍埂¥饯欷らいきなり腕を伸ばして子の腕をつかんだ。子が悲Qをあげるのもかまわず、男は乱暴に子の腕をねじりあげる。
「……痛い! 放して!」
「そうはいかないなぁ。カイキャクはh知事に届けるのがQまりだ」
 笑いながら言って、男は子を押し出す。
「さ、iきな。なぁに、いようにはしないからよ」
 男は子をむりやりiかせて、周欷韦猡韦松をかける。
「lか手护盲皮れ。つれて行こう」
 ──腕が痛い。この男は正体が知れない。どこへBれて行かれるのか不安を感じる。
 心底放してほしいと思った。思ったとたん、手足に冷たい感触がつたって、子は男の手をふりほどいていた。腕が偈证松欷婴颇肖窝のを|鞘《さや》ごと引きiく。大きく跳んであとじさった。
「……てめえ」
 すごむ男に周欷稳碎gが声をかける。
「荬颏膜堡怼を──」
「なぁに。あれはりもんさ。おい、娘。おとなしくこっちへ来い」
 子は首をふった。
「……いや」
「引きずっていかれたいのか? いきがったまねをせずにこっちへ来い」
「……いやです」
 hくからも人が集まりはじめていた。
 男が踏み出す。子の手はを鞘からiいていた。
「なにぃ!?」
「近づかないで……ください」
 棒をんだように婴堡胜と恕─蛞わたして、子はあとじさる。身をひるがえして逃げ出すと、背後から追ってくる足音がした。
「来ないで!」
 ふりかえって追ってくる男たちをJめるやいなや、身体が婴い皮饯訾颂い撙趣嗓蓼盲俊が身えるようにあがる。音を立てて血の荬引いた。
「やめて……!」
 突っこんでくる男に向かってが婴。
「ジョウユウ、やめて!」
 ──だめだ。それだけは、できない。
 切っ先が|r《あざ》やかな|弧《こ》を描いた。
「人しはいやぁっ!!」
 叫んで预目を]じた。ぴた、と腕の婴がとまった。
 同rにい力で引き倒される。lかがR\りになってをむしり取った。痛みよりも|安堵《あんど》で妞にじんだ。
「ふざけた娘だ」
 乱暴にこづかれたが、痛みを感じる余裕はなかった。引きずるように立たされて、二人の男にI腕をうしろ手にねじりあげられる。
 抵抗する荬摔悉胜欷胜った。ひたすら心の中で、婴ないで、とジョウユウにう。
「村につれていけ。その妙なもだ。それごとh知事に届けるんだ」
 どんな男が言ったのか、目を]じた子にはわからなかった。

   3

 子は引き立てられ、|田圃《たんぼ》のあいだをうねってAくい道をiかされた。
 十五分ほどiいてたどりついたのは、高い|B《へい》に欷蓼欷啃?丹式证坤盲俊
 さっきた集落は何かの家が集まっただけだったが、ここは高さが四メ`トル近くもありそうなBが町の周欷蛉?辘蓼い皮い啤⑺慕扦い饯瓮庵埭我环饯舜螭なTがある。いかにもB丈そうな|T扉《もんぴ》は内趣讼颏って_かれていて、そのむこうに赤くTられ、何かの}を描いた壁がえる。壁の手前には、どうしたわけかlも座っていない木uの椅子がひとつ置き去りにされていた。
 背後から押されて子は街のなかに踏みこむ。赤い壁を|迂回《うかい》するとT前の通りが一望できた。
 その街のL景は、どこかでたようで、同rにひどく|な感じがした。
 どこかでたことがあるような荬するのは、建物の荬|洋的だからだろう。白い|漆小钉筏盲い》の壁、\い|瓦《かわら》屋根、枝を差しかけたひねくれた形の淠尽¥摔猡かわらずすこしもH近感を感じないのは、まったく人の菖浃ないからにちがいない。
 T前からは正面に冥さ坤、左右にい道が伸びていたが、そこには人の姿まったくなかった。建物は一A建て、道に面しては|《のき》の高さの白いBがAいている。そのBが一定のg隔で切れて、そこから小さな庭をへだてて建物がえた。
 どの家も大きさに大差はなく、建物の外Qも部は`ってるもののよく似ている。それでひどくoC的な感じがした。
 家によってはが_いていて、そとへ向かって押しあげる板酩蛑瘠伟簸侵Гà皮ったが、が_いているのがかえって白々しいほど街はみごとに人の菖浃ない。道にも家にも犬一匹あたらなかったし、なんの物音もしなかった。
 正面の冥ねà辘祥Lさが百メ`トルほどしかなくて、突き当りには訾ある。白い石にrやかな彩色をほどこした建物がえたが、rやかな色がひどくそらぞらしい感じがした。左右のい道は三十メ`トルほどで直角に曲がって、突き当たりは街の外壁。その曲がり角の向こうからも人の菖浃护铯盲皮长胜ぁ
 わたしてみてもiきん出て高い屋根はなかった。\い瓦の屋根の上に、街の外壁がのぞいている。をめぐらせれば、外壁の形がて取れる。それは奥行きの深いLい四角形をしていた。
 |窒息《ちっそく》しそうなほど狭い街だった。冥丹悉そらく、子が通っていた高校の半分もないだろう。街の冥丹して外壁があまりに高い。
 まるで|水槽《すいそう》のなかのようだ、と子は思った。大きな水槽の、水の底で眠りについた|墟《はいきょ》のような街だった。

 子は、正面にえた訾欷啶瑜Δ私à盲拷ㄎ铯韦胜につれて行かれた。
 この建物は中A街の建物を思わせる。赤くTられた柱、rやかな色の装、なのにどこかそらぞらしい感じがするのは街の荬浃铯椁胜ぁ=ㄎ铯韦胜にはLい廊下が真一文字に通っていたが、これも暗く、やはり人の菖浃悉胜った。
 子をつれてきた男たちは、なにごとかを相してからこづくようにして子をiかせ、小さな部屋の中に押しこめた。
 子が]じzめられた部屋の印象は、一言で言うなら|牢z《ろうごく》だった。
 床には|瓦《かわら》のようなタイルを敷きつめてあったが、割れたり欠けたりしたものが多い。壁はすすけてひびの入った土壁で、高いところに小さながひとつ、そこには|格子《こうし》がはまっている。ドアがひとつ。このドアにも格子のついたがあって、そこからドアの前に建った男たちがえた。
 木uの椅子がひとつと小さな机がひとつ、一枚分の大きさの台があって、それで家具はぜんぶだった。台の上には厚い布がNってある。どうやらそれが寝台のようだった。
 ここはどこで、どういう鏊なのか、自分はこれからどうなるのか、きたいことは山ほどあったが、O者にそれをく荬摔悉胜欷胜ぁD肖郡沥韦郅Δ怅子にしかけるつもりはないようだった。それで寝台に座り、だまってうつむいている。それよりほかにできることがなかった。

 建物のなかで人の菖浃したのは、ずいぶんとrgがたってからだった。ドアの前にlかがやってきて、りが代わった。新しいりはふたりの男で、どちらも道の防具のような青い|革《かわ》の|z《よろい》をつけているから、警Tか警察官のようなものなのかもしれない。これからなにがおこるのかと息をつめたが、zの男たちはしいを子に向けただけで、放しかけてくるわけでもなかった。
 それが多少ひどいことでも、なにかがおこっているあいだはいい。放置されていると不安で不安でたまらなかった。何度か外の兵士たちに放しかけてみようとしたが、どうしても声にならない。
 叫びたくなるほどLいrgがたって、|《ひ》も落ち、牢zの中がまっくらになってから三人の女がやってきた。先^に立ってあかりを持った白の老婆は、いつか映画でた古い中国ふうの着物を着ている。
 やっと人に会えたこと、それがいかつい男ではなく女であることに子は|安堵《あんど》した。
「おまえたちは、おさがり」
 老婆は、いろいろなものをたずさえていっしょに入ってきた女たちに言う。ふたりの女は荷物を床におろすと、深く^を下げて牢zを出ていった。老婆はそれを送ってから机を寝台のそばに引きよせ、ランプに似た|T台《しょくだい》を机の上におく。さらに水の入った桶をおいた。
「とにかく、を洗いなさい」
 子はただうなずいた。のろのろとを洗って手足を洗う。手は赤\くAれていたが、洗うとすぐにもとの色をとりもどした。
 子は今になって、手足が重く|《こわ》ばっているのに荬ついた。おそらくはジョウユウのせいだろう。子の能力を超えた婴を何度もしたせいで、あちこちの筋肉が硬直してしまっている。
 できるだけゆっくりと手足を洗うと、かいに水がしみた。を|梳《す》こうとして、うしろでひとつにまとめて三つみにしていたのをほどいた。浃荬扭い郡韦悉饯韦趣だった。
「……なに、これ」
 子はまじまじと自分のをる。
 子のは赤い。特に毛先は脱色したような色になってしまっていた。──しかし。
 三つみをほどいたむはかすかに波打っている。そのの色。
 この常な色はどうだろう。
 それは、赤だった。|血糊《ちのり》を染めつけたように、深い深いtに渖している。赤毛という言~があるが、この色がとうてい赤毛と呼べるとは思えなかった。ありえない色だ。こんな常な。
 それは子を震えさせた。自分がになる簸沃肖扦撙俊⒊啶っKみの色にあまりにもよく似ていた。
「どうしたんだね?」
 老婆がいてくるのに、の色が浃馈とVえた。老婆は子の言~にをかたむける。
「どうしたんだい? べつになにも浃袱悚胜い琛U浃筏い堡欷嗓れいな赤だよ」
 老婆が言うのに首をふって、子は制服のポケットの中を探った。手Rを引っり出す。そうして、g`いなく真tに渖した自分のを_Jし、ついでそこにいる他人をつけた。
 子には一瞬、それがどういう意味なのかわからなかった。手をあげておそるおそるをなで、その婴につれてRのなかの人物の手も婴い啤それが自分なのだとわかって|愕然《がくぜん》とした。
 ──これはあたしのじゃない。
 の色が浃铯盲齐荬浃铯盲皮い毪长趣虿瞍芬いても、これは他人のだった。そのの|美h《びしゅう》はこのHたいした}ではない。}は明らかに他人のになっている自分、日にけたような肌と、深いv色に渖した瞳だった。
「これ、あたしじゃない」
 |狼N《ろうばい》して叫んだ子に、老婆はけげんそうなをした。
「なんだって?」
「こんなの、あたしじゃない!」

 とりみだした子の手から、老婆は手Rを取りあげた。ごく落ちついた幼鳏晴Rをのぞきこみ、それから子に手Rを返す。
「Rがゆがんてるわけじゃないようだね」
「でも、あたしはこんなじゃないんです」
 そういえば、声もなんだかちがう荬する。まるでe人になってしまったようだ。でもバケモノでもない。だが、しかし──。
「それじゃあ、あんたの姿がゆがんでるんだろうね」
 |微笑《わら》いまじりの声に子は老婆をふりあおいだ。
「……どうして?」
 言って子はもう一度Rを直す。自分がいるべき鏊に他人がいるのは妙な荬した。
「さてねえ。それはあたしなんかにはわからないね」
 老婆はそう言って、子の手をとる。腕についた小さなに、なにかを|浸《ひた》した布を当てた。
 Rのなかの自分は、よくてみるとかすかになれた面影を残していた。ほんとうに、ごくかすかにではあったけれど。
 子はRをおいた。もう二度とないとQめた。Rをのぞいてみるのでなければ、自分がどんなをしているかvSのないことだ。はRを使わなくてもえるが、それは染めたと思えば我慢できるだろう。べつに自分の容姿を荬巳毪盲皮い郡铯堡扦悉胜い、この浠を二度と直する勇荬子にはなかった。
「あたにはわからないが、そういうこともあるんだろうさ。そのうち莘证落ち着いたら、なれるだろうよ」
 老婆はそう言って机から桶をおろすと、かわりに大きなどんぶりをおく。|《もち》のようなものが沈んだス`プが入っていた。
「おあがり。たりなければ、もっとあるからね」
 子は首を横にふった。とうてい食事をする莘证扦悉胜ぁ
「……食べないのかね?」
「ほしくありません」
「口をつけてみると、意外におなかがすいていたりするものだよ」
 子はだまって首をふった。老婆はかるく息をついて、背の高い水差しのような|土瓶《どびん》からお茶を注いでくれた。
「あっちから来たんだね?」
 きながら老婆は椅子を引きよせて腰をおろす。子は目をあげた。
「あっち?」
「海の向こうさ。キョカイを渡ってきたんだろう?」
「……キョカイって、なんですか?」
「崖の下の海だよ。なんにもない、まっくらな海」
 あれはキョカイというのか、と子はその音を^のなかにしまった。
 老婆は机の上にを冥菠俊#《すずり》の入った箱をおく。Pを取って子にさしだした。
「あんた、名前は?」
 子はとまどいつつも、おとなしくPをうけとって名前をきつけた。
「中搿㈥子です」
「日本の名前だね」
「……ここは中国なんですか」
 子がくと老婆は首をかたむける。
「ここは|巧国《こうこく》だ。正_には|巧州国《こうしゅうこく》だね」
 言いながら老婆はeのPをとって文字を欠きつけてゆく。
「ここは|淳《じゅん》州|符睢钉栅瑜Α房ぁ|]江《ろこう》_|《しん》h|配浪《はいろう》。あたしは配浪のL老だ」
 きつけられた文字は、すこしだけ部がちがっている。それでもh字にちがいなかった。
「ここではh字をつかうんですか?」
「文字ならつかうともさ。あんたはいくつだね」
「十六です。じゃ、キョカイというのもh字が?」
「虚oの海とくね。──仕事は?」
「学生です」
 子が答えると、老婆はかるく息をつく。
「言~はしゃべれるようだね。文字もiめるようだし。あの妙なのほかに、なにを持ってる?」
 われるまま、子はポケットの中をあらためた。ハンカチと|薄钉し》、手Rと生徒手ぁ菠欷客r、それでぜんぶだった。
 ならべてみせると、老婆はどういう意味なのか、^をふる。ため息をつくようにして机の上の品物を着物の|《ふところ》におさめた。
「あたし、これからどうなるんですか」
「さてね。そんなのは上の人がQめることだ」
「あたし、なにかいことをしたんですか?」
 まるで罪人のようにあつかわれている、と子は思う。
「べつにいことをしたわけじゃない。ただ、カイキャクはh知事へ届けるのがQまりでね。く思わないでおくれ」
「カイキャク?」
「海から来る来L人のことさ。海の客、とく。虚海のずっと|のほうから来ると、そう言われている。虚海の|の果てには日本という国があるそうだ。べつにたしかめた者がいるわけじゃないけど、gHに海客が流れてくるんだからそうなんだろうね」
 老婆は言って子をた。
「日本の人gがときおりショクにきこまれて|の海岸に流れつく。あんたのようにね。それを海客というんだよ」
「ショク?」
「食べる、に虫とくんだ。そうだね、工撙郡い胜猡韦ね。工趣悉沥って、突然はじまって、突然Kわる。そのあとで海客が流れつくんだ」
 言って老婆は困ったような|微笑《わら》いを浮かべる。
「たいがいは姿Bだけどね。海客は生きていても死んでいても上へ届けることになってる。上のほうのえらい人があんたをどうするかQめるんだ」
「どうするか?」
「どういうことになるのか、ほんとうのことは知らないよ。ここに生きている海客が流れついたのは、あたしのお|祖母《ばあ》さんのとき以来のことだからね。その海客はh丐怂亭椁欷肭挨怂坤螭坤饯Δ馈¥んたは|溺《おぼ》れずにたどりついた。\がよかったね」
「あの……」
「なんだえ」
「ここはいったい、どこなんですか?」
「淳州だよ。さっき、ここに」
 地名をきつけた鏊を示す老婆を制した。
「そうじゃありません!」
 キョトンとする老婆に向かって子はVえる。
「あたし、虚海なんて知りません。巧国なんて国、知りません。こんな世界、知らない。ここはどこなんですか!?」
 困ったように息をついただけで、老婆はそれに答えなかった。
「……る方法を教えてください」
 あっさり言われて、子はI手をにぎりしめる。
「ない、って」
「人は虚海を越えられないのさ。来ることはできても、行くことはできない。こちらから向こうへ行った人gも、った海客もいない」
 言~が胸の底に落ちつくまでにすこしかかった。
「……れない? そんなバカな」
「むりだね」
「だって、あたし」
 妞こぼれた。
「IHだって、いるんです。学校にだっていかなきゃならないし。ゆうべだって外泊だし、今日だってo断欠席だし、きっとみんな心配して」
 老婆は荬蓼氦饯Δ艘をそらす。立ちあがって、あたりのものをかたづけはじめた。
「……あきらめるしかないね」
「だってあたし、こんなところに来るつもりなんて、ぜんぜんなかった!」
「海客はみんなそうだよ」
「ぜんぶむこうにあるんです。なにひとつ持ってこなかった。なのにっちゃいけないの!? あたし……」
 それ以上は言~にならなかった。声をあげて泣きはじめた子にはかまわず、老婆は部屋を出ていく。\びzまれたものが\び出されて、ひとすじの光さえなかった。
「あたし、家にりたい……!」
 体をおこしていることが困yで、寝台に身体を丸めた。そのまま声をあげて泣いて、やがて泣き疲れて荬蚴ГΔ瑜Δ嗣撙辘摔膜い俊
 簸稀⒁なかった。

   5

「起きろ」
 そう言って子は叩き起こされた。
 泣き疲れた|《まぶた》が重い。ひどく光が目にしみた。疲氦龋|《う》えで深い脱力を感じたが、なにかを食べたいとは思わなかった。
 牢に入ってきて子を起こした男たちは、子の身体にかるく|I《なわ》をかけた。そのままそとに押し出される。建物から出たところにある訾摔像Rが待っていた。
 二^のRに荷をつないだRの上に\せられ、そこから周欷蛞わたすと訾韦ちこちや道のかどに大荬稳碎gが集まって子のほうをていた。
 これだけの人gが、昨日た墟のような街のどこにひそんでいたのだろう。
 lもが|洋人のようだが、の色がちがう。大菁まると、それがひどく奇な感じがした。lもが好奇心や嫌をないまぜにした表情をしている。ほんとうにo送される犯人のようだと子は思う。
 目を_けてから、ほんとうに目めるまでの一瞬のあいだに、ぜんぶが簸坤盲郡椁嗓螭胜摔いい坤恧Δ、と心から念じた。それはすぐに子を乱暴に引きずりおこす男の手によって破られたのだけれど。
 身づくろいするひまも、を洗うひまもC会も与えられなかった。海にwびzんでそのままの制服は、|淀《よどんだ》んだ海の臭荬蚱わせている。
 男がひとり、子のOに\りこんで、御者がRに|手V《たづな》をRり出す。それをながら、おL韦巳毪辘郡い省と子はボンヤリ思った。たっぷりのおのなかに身体を沈めて、いい訾い韦工毳僵`プで身体を洗って。新しい下着とパジャマに着替えて、自分のベッドで眠りたい。
 目がめたらお母さんの作ったごを食べて、学校へ行く。友_とあいさつをして、たあいのないおしゃべりをして。そういえば化学の宿}が半分残っていた。^から借りた本ももう返さなくてはならない。ゆうべ、ずっとていたドラマがあったのに逃してしまった。母Hが思い出してh画しておいてくれるといいのだけれど。
 考えていると|虚《むな》しくて、どっと妞あふれた。子はあわててうつむく。をおおいたかったが、うしろ手に`られていてそれもできなかった。
 ──あきらめるしかないね。
 そんな言~は信じない。ケイキだってれないとは言わなかった。
 ずっとこのままでなんてあるはずがない。着がえることもを洗うこともできなくて、罪人のようにIをかけられてAいRに\せられて。たしかに子は}人のように善良ではなかったが、こんな仕打ちをうけるほどの人でもなかったはずだ。
 ^上を後ろへさがっていくTをながら、子は`られたままの肩口に|]《ほほ》を寄せて妞颏踏挨盲俊kOに座った三十がらみの男は胸に布袋を抱いて淡々とL景をている。
「あの……どこへ行くんですか」
 おそるおそる子が声をかけると、疑うような目つきで返してきた。
「しゃべれるのか